大陸を渡る?
そして、ボスを倒してたジオラルドは、尻尾を振って私を見上げてくるのよ。
うん。可愛いわね。
抱っこして、可愛がってやるんだからね!!
「ジオラルド~。よく頑張ったわね。よしよし、もふ~で、ちゅ~」
『や、やめなさい!! いや……止めなくていい。うん。責任取って、チヤのことは僕が嫁にするから、好きなだけ僕を弄びなさい』
「えっ?」
『さあさあ!』
そう言って、ジオラルドは尻尾をぶんぶんって振っていた。
可愛いから、不穏な言葉が聞こえた気がしたけど聞こえなかったことにした。
私とジオラルドがイチャイチャをしている間に、ボスの死体ががす~って地面に吸い込まれていったのよ。
不思議な場面に驚く私に、ジオラルドが説明してくれた。
『基本的に、ダンジョンのボス含めて、出現する魔物はそのままにしていると、ダンジョンに吸収されるんだ。そして、さらに強くなって復活する……。と言う訳で、出口が見えるから、そこから外に出よう』
「うん」
ジオラルドに促された私は、抱っこしたまま奥に見える出口に向かっていた。
出口から外に出た私の目の前には、賑わった街が広がっていた。
まさかこんな場所に出るとは思っていなかった私はあんぐりと馬鹿みたいに口を開けていたと思う。
そんな私に、くすりと笑ったジオラルドが教えてくれた。
『僕たちの居たダンジョンは、ダンジョン都市にあったんだよ。ちなみに、この街はどの国にも属してないから』
「へぇ~」
『それと、早めにここから離れた方がいいかもしれないぞ』
「えっ? なんで?」
『ここにいるってことは、ダンジョンのボスを倒したってことだ。だから、ダンジョンを管理している管理組合の人間に見つかると面倒なことになる』
「なるほど。うん。私も面倒は嫌だから、さっさと行こう」
もう、面倒ごとに巻き込まれるのは十分お腹いっぱいなので、私は速足でその場を立ち去ることにした。
幸いにして、ジオラルドの言う、管理組合って人には出会わずに済んだ。
十分に離れた場所に移動した後に、ジオラルドにこれからのことを相談することにした。
「これから、どうしよう? ジオラルドは、どこか行きたいところはある?」
私がそう言うと、ジオラルドは、首を振っていた。
『ないな……。僕は、家族から捨てられた身だから……』
悲しそうにそういうジオラルドがかわいそうで、私は小さな体をぎゅっと抱きしめていた。
「そっか……。うん。それじゃ、捨てられた者同士で、仲良くやって行こう」
『ああ、よろしくな。僕のチヤ』
「あはは~。よろしくね、ジオラルド」
『それじゃ、まずは……。大陸を渡ろう』
「ふえ?」
これからの目的地についてジオラルドが提案してくれたのはいいんだけど、大陸を渡る? え? なんで?




