うんうん。責任取ってね。好きスキィ
ジオラルドが脳内に直接語りかけてきてから、ダンジョンでの過ごし方が少し変わっていた。
子狼だけど、ジオラルドはとても賢くて、いろいろなことを教えてくれた。
ここが、オウラル王国とジルニトラ王国の間に存在するダンジョンだということ。
今いる場所が、そのダンジョンの最下層だということ。
ここを出るには、上層に向かうか、ダンジョンボスを攻略するかのどちらかだということ。
ジオラルドからダンジョンを抜ける方法を聞いた私は即座に上層行きを提案していた。
「ボス攻略なんて、命がいくつあっても足りないからパスで。地道に上層に向かった方がいいと思う」
『ああ。僕もそう思う。僕たち二人ともまともに戦えないしね』
「異議あり!!」
『はいどうぞ』
「ジオラルドは、美味しいお肉を狩ってくれるでしょ? 実は、めっちゃ強い! ってことは?」
『ないない。それだったら、こんなとこに居ないよ。まぁ……。チヤが応援してくれればどうにかなるかもだけど』
「え? ないない」
『それがあり得るかもよ?』
やっぱり……。ジオラルドのこと天才犬……じゃなくて天才狼だと思っていたけど、やっぱり獣ね。ふっ。私には何の力もないのよ?
私が応援したからって、どうこうなる訳がないのよ。
だから、私はやれやれって感じで、ジオラルドに言ってやったわ。
「そんな訳ないでしょ? 応援一つでどうにかなってるのなら、私はここにいないわ」
私がそう言うと、ムッとしたような声でジオラルドは言うのよ。
『それはどうかな? 今までチヤのお陰でここまで生き残れたんだ。僕がご飯を狩れるのも、言葉を話せるのも、偶然安全エリアに行き当たるのも。全部、チヤのお陰なんだよ?』
「まさかぁ~。そんなに私のこと持ち上げても、ちゅーしかしてあげないわよ」
『ちょっ! キスは駄目だって言ってるだろうが!! 僕は、こう見えて……いや、見られてるけど、男なんだぞ! 簡単に唇を許すだなんてはしたないぞ! まぁ、チヤがそんなに僕にキスしたいなら、責任取らないでもない……』
「もぉ~。ジオラルドは可愛いなぁ。キスくらいで動揺しちゃってぇ~。それに責任って~。大げさねぇ。まぁ、ジオラルドが意外と初心なところが可愛いんだけど」
そう言って、懲りない私はジオラルドの鼻先にキスをしまくる。
ついでとばかりに、鼻先をかぷって噛んでみる。
すると、子狼のくせにジオラルドは一端のことを言うのよね。
うん。そこがかわゆい!!
『チヤ! 絶対に責任取ってやるからな!! だから、君は俺に惚れろ!!』
「きゃ~~、ジオラルド、かわいいぃ~。うんうん。責任取ってね。好きスキィ」
『くっ……全然本気にされていない。だが、チヤがそう言っていられるのも今のうちだ。僕が…………』
「ん? 僕がどうしたの?」
『何でもない。それよりも、ボスについてだけど、攻略する当てはある。だから、僕を信じて、チヤの力を貸してほしい』
結構真剣そうな声でそう言ったジオラルドに私も掛けてみることにした。
だって、今までジオラルドが起こしてきた奇跡を考えれば、ボス攻略も出来そうな気がするもんね。