五話
次の日からなぜか如月達のいじめはパタリとやんだ。
自分でも信じられないが本当に何もしてこなくなった。まだ俺に話しかけてくるやつはいなかったが、まぁいづれ話せるようになると思う。
ついに飽きたのかと思い気にすることはやめたが、平穏はそう長く続かなかった。
虐めが終わってから数日たった頃から少しずつ大崎さんの様子がおかしくなっていた。
話し始めたころはすごく元気でいつもニコニコしていたのに今では少し元気がなく笑っていても引きつった笑いになっていた。
さすがにおかしいと思い
「大崎さんなにかあったの?まさか如月達に何かされてる?」
「ううん、何にもないよ」
自然な笑みで答える大崎さんにこれ以上聞くことはできなかった。
だが、数日後久々に如月達に呼び出された俺は、急に溝を殴られ倒れてしまう。
その前には下着姿で泣いている大崎さんの姿があった。
その姿を見て言葉を失う
「お前に関わったせいでこうなったんだわかるか?お前なんて無視していればこんなことにならなくて済んだのにな」
そういうと笑いながら彼女の数日分の下着姿などいろんな姿の写真をばらまく。
そして彼女に目を移すと、彼女の体は青紫色のあざが何か所もあった。
それを見た瞬間怒りが爆発して叫ぶが
「うるせぇ殺すぞ?」
「叫ぶんじゃねーようるせぇな」
如月達も怒りを顕わにして俺を蹴りまくった。
だが今は痛みも感じないほどに動転し怒りや申し訳ない気持ちで溢れていた。
「これに懲りたらお前ら分かってるよな?」
大崎さんは如月達がいなくなると体操服に着替え
「ごめんなさい」と言って走って帰って行った。
むしろ謝りたいのは俺のほうだ。
残された俺はしばらく立ち上がることができなかったがずっと残ってるわけにもいかないのでゆっくりと家に帰った。
そして、次の日学校を休み家を出て街を歩いた。
放心状態で歩き今自分がどこにいるか分からなくなった時目の前に踏切があった。
ゆっくりと下がっていく遮断棒を眺めながら思う。
あぁ生きていても意味があるのか、と自分に価値などあるのだろうか。
遮断機のほうへとゆっくりと足が進む。
だが、次の瞬間驚愕する。
反対方向に遮断機をまたいでいる彼女、大崎 美紅がいたからだ。
もうすぐそこまで電車が来ていた
なぜ?どうして?
と疑問が浮かぶがその間にも電車は迫っていく。
「っっっちっ」
考えて行動をとる暇など残されていなかった。
踏切を電車が通過する刹那
大崎さんの顔が見える。
彼女も驚いていた。
そして、電車の前まで来ていた彼女を押し飛ばす
この瞬間俺、日暮 秀は楽しいと思うことなど殆どなかった16年の人生の幕を下ろした。
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