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第1話

 



 ああ、あれからあの子オムライスが好きになったのか……今度作ってあげないと、にしても身体が痛いなぁ…………


「オカン!ママさん!何でも良いから起きろー!!」


 耳元で叫ばれて飛び起きる。

 が、どうやら作業用のテーブルに突っ伏していた私にとっては過剰な運動だったようで…………


「いっっっった、たたた」


 関節が悲鳴をあげた、おかしいなまだ26なんだが……

「どしたよ、水面」


「どーしたもこーしたも、私、今日から作業訓練&見習い工程なんですが?」

「…………弁当?」


 思わず尋ねれば重々しく頷いて来る娘。

 大きくなったよなー、最初は育つか心配だったのに、大きくなったその身体は、スラリと高く出るとこは出て引っ込むところは引っ込んでる。

 今日の服装は、工業地区の人達が好んで着るカーキ色のシャツに黒い丈夫なロングパンツ。

 背中からお腹をカバーするコルセットに腰周りには工具をぶら下げる器具が幾つも付いている。

 足元は編み上げブーツの安全靴。

 頭を覆うヘルメットは工房の物を使うから必要ない、が、胸の部分がら空き、てソコにもカバー付けてください。

 お母さんからのお願い。


「今日行った時にでも親方と話すか」

「何を話す気だ」

「これからの事、あ、お弁当だよね?!」


 慌てて台所に向かおうとしたら呆れた声が帰ってきた。


「ふりかけ混ぜてお握り作った、明日から期待してる」

「すまん、昨夜は本気で作業してたわ」


 そう告げると水面の視線が作業台の上に浮いて(・・・・・・・・・)()()()()()()()()()()()


「昨夜は早く寝る言うてなかったか?ママさん」

「こう、ね?水面がお世話になる工房のだと思うと中々手が抜けなくて、ついつい」


 思わず力入ったわ。子供がお世話になる工房に納める商品を手を抜くとか有り得ないし、何より私が嫌だわそんなの。


「親方泣くぞコレ」

「あのオッサンは泣かないって」

「オカンの作る動力路兼心臓部、細工が細すぎて負けそうって言ってたし」

「親方なら大丈夫」

「なら、同じ事をシュトゥルトゥール氏にも言えるかい?」

「何故に此処でその名が出てくる?」


 ウチのお得意さん、でも、細工の客ではなくて鉱石の方のお得意様だ。

 クズ石集めて濾過して純度の高い鉱石にするのも私の得意な分野だ。


「あの人に売る細工が最近はマンネリに見えます」

「ぐっ、今、スランプなんだよ〜、デザインが浮かばないの!って、今夜は善哉(ぜんざい)で良いよね?餅買ってくるから」

「決定かい!好きだから良いけど」

「小豆が食べたい」


 言い切ってやるとため息が帰ってきた。

 まぁ、普通にいきなり善哉食べたい言われても困るだろうがな。

 この街の食事事情はどっちかと言えば“洋食“に分類される物が多い。だから、本当はオムライスとか、エビフライとかの方が材料が簡単に手に入るのだ。

 私が元々大和国出身なのもあって和食好きだから、和食が食卓に出やすいだけで。

 もう、既にこの街(いや、この国か?)に移住しているから色々違うのだけども、それでも食事は昔から食べている物を食べたくなるのだ。

 水面は、この街に物心ついた時から住んでいるから洋食が“おふくろの味“になっているのだろうけども。


「やべ、マジで時間無い。行ってくる!」


 バタバタと安全靴の音が響きながら出掛ける背中を見送って取り敢えず起きることにする、と言うか、今日を始めることにする。

 最初に洗面所で顔を洗い歯を磨く。

 髪を梳きヘアオイルを付ける。今日は金木犀の香りのを付ける。もう一度髪を整えて作業用から普通に出歩く時用の大きな丸眼鏡に掛けかえると、何時もの自分が鏡に映る。

 灰色がかった瞳が、家族から嫌われる原因だったのかなぁ、純日本人だったんだけど(そのはずだけど)遺伝子の異常か瞳が灰色がかった黒だと言うだけで母親は浮気を疑われたらしい。

 DNA鑑定までしたって話だから相当だよな。オマケに鉱石を自在に操れるとなれば、もう結果は()()()()

 18になる前にバイトして金貯めて“職人の都市“と呼ばれるこの街に逃げてきたのだ。入り口で子供を拾った事だけが予定外だったのだけど、その子を飢えさせるものか、と頑張ったから今がある。

 あの子も、私が本当の母親じゃない事を知っても“ママさん““オカン“って呼んでくれる。呆れながら呼ばれる事が多い気がするが、仕方ない事だよね。

 立派な親じゃ無いからね、支え合って生きてるのも、自覚してる。


「さて、小豆はあったかね?」


 台所で豆の在庫を確認すると、2袋残っていたので、そのうち1つを鍋に入れて、水を注ぐと軽く洗って水を変える。

 コンロの1つに乗せてアク抜きの為に火にかける。

 アクが出るまでの間に、何だかんだ言いながらも私の分の朝食が置いてあるのを見つけて頭を搔く。

 軽く焼いたトースト1枚にバターが塗ってあって、ジャムの瓶が横に置いてある。

 冷めたコーヒーも隣に置いてあって、ベーコンエッグも冷えているがキチンと用意されている………これは、真面目にやってしまったなぁ。

 明日こそはキチンと起きないと、また口聞いてくれなくなるよ……それは寂しい。

 冷たくなった朝食を食べながら鍋を気にする。

 ジャムはレモンマーマレード、これ好きなんだよね。あまり売ってないけど(だから時々自分でつくるけども)おかげで水面からの視線が時々痛い(何やってんだコイツって視線)売ってないから作るしか無いじゃないか。

 さて、朝ごはん食べ終わったし、鍋も沸騰してきたか様子見して、少し長めに沸騰させて最初のお湯をザルに濾しながらシンクに捨てる(エグ味凄いからね)

 後は帰ってきてからでも出来るから、今日は搬入に行かなければならない。

 せっかく作った飛空挺の動力炉に入れる鉱石で作ったミニチュア、作業室で浮いてたアレを搬入する日なのだ。

 ミニチュア件動力炉を箱に入れる。自動で浮かんでくれるので梱包材は要らないのがありがたい。その上にダミー用に鉱石を入れた箱を用意すると、それらを台車に載せて家の鍵を確認して回る。

 確認し終わったら家を出て鍵を掛け、駅に向かうだけだ。

 1人頷くと台車を押して駅に向かう事にした。


透子は知りませんが、色々な種族が住んで居ます。

その内理解します。

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