こういうことを考える人には友達ができないねという蛇足
男は自嘲して話を終えたが、私は別のことを考える。
「桃太郎の話はご存じですよね?」
「あ?あぁ」なに言い始めるんだこいつは?という目を向けてくる。
「桃太郎が生まれた桃って、中国の神話に出てくる、天界にある桃園の桃が落ちてきたんじゃないかっていう人がいるんですよ。孫悟空が門番を任されたのに食べ散らかしてしまった桃園の桃です」
「あぁ?」孫悟空が桃園の門番を任されたことは知らないかもしれない。
「なので桃太郎の桃は、桃太郎が生まれた桃一つだけでなく、この世界が始まって何回か落ちてきた桃のうちの一つじゃないかってその人は言うんですけどね」
「あぁ」
「かぐや姫も実は何回かあったことの一つなのかも知れませんね」
「え?あぁ…あ?」
言われたことに思考が追いつかないようだ。
「かぐや姫は月で罪を犯して地球に追放されてきたんですけど、竹の中に収まったから竹細工を仕事にするおじいさんに見つけられて、美しく聡明に育って竹取物語の話になりましたが、地べたに落ちて危ないところを鳥たちが守ったのかもしれません」
「あ?あー、あ?…いやいや、俺の言い方が悪かったんだろうけど、あの鳥たちの恐ろしさは、とても美しいかぐや姫を守るような感じじゃなかったぞ?」
「ええ、解りますよ。とても恐ろしい鳥の声を聞かされて育つ何かが、順調に育つとどんなモノになるか、考えるだに恐ろしいでしょうね。形を成して物心がついたとき、どんな生き物になるか。私たちには想像もつかないでしょうね」




