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第0f話:育ての親と殻のない玉子  作者: 吉野貴博
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上下の上

 そうかい、あんた、日本中巡って音を録っているのかい。大変だろう。

 俺はねぇ、むかし気味が悪いことがあったよ。音っつぅか、声だな。鳥の声。聞いたのは俺だけじゃねぇんだよ。

 うん、ガキの頃なぁ、親は普通のサラリーマンだったんだけど、じいちゃんが猟師でな、山に住んでて、春休みに遊びに行ったんだよ。

 じいちゃん家は楽しかったよ。じいちゃん、猟師の腕がよくてな、町じゃ見られないいろんなもんが置いてあったからな、剥製とか大きなナイフとか。そりゃ猟銃は触らせてくれなかったけど、撃った後の薬莢なんて、もってけって言われたよ。

 鹿とか猪を捌くのも凄くてな、内蔵なんて傷む前にさっさと調理して、食べさせてくれるんだよ、あれは美味かったなぁ。

 ある日、寺の和尚さんが男の人を連れてきてな

「この人は最近引っ越してきてな、句会で知り合ったんだが、鳥を育てていてな、ウグイスの雛を、綺麗な声のウグイスに学ばせることをやっているんだっていうんだ(鶯の付子、押親)、お前さん、この人を山に案内してやってくれないか」

 田舎での生活だから隣近所との付き合いは大切だし、和尚さんの頼みだから断るものでもないし、この人もいい人っぽいんで、引き受けたんだよ。

 すぐに二人で日にちを決めてな。

 その人は鳥かごに雛を三羽入れてやってきて、じいちゃんは一応銃を持って、俺も付いていったんだよ。

 三人で山に入って。

 入ってしばらくは自己紹介と世間話してたんで気がつかなかったんだけど、三十分、一時間経って、じいちゃんが変だおかしい言い出してな。空を見上げて

「鳥が全然いないな」。

 その人も初めての山なんで黙っていたんだけど、さすがに鳥を扱う仕事をしているんで、妙だなとは思っていたらしいんだ。

 二人で首をかしげながら道を進んでいったんだけど、やっぱり鳥がいない。それでもじいちゃんは、いつも猟の最中に聞いていたウグイスの縄張りにその人を案内していく。ガキの俺一人が事のおかしさが今ひとつ解らず、その人との話がしづらくなったことに、どうしたもんか困っていたんだよ。

 ざくざく歩いていくんだが、一向にウグイスの鳴き声が聞こえてこない。じいちゃんが「このあたりのはずなんだが…」と呟いて「まだ先なのかな」と独り言をいっていたら、いきなりその光景に行き当たったんだよ。


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