顛末
翌朝、ようやく解放されたクリスティーナは、起き上がることが出来ずにベッドの中で侯爵令嬢の処罰を聞いた。
何と貴族牢に入れられたあと、女性騎士達に全身を調べられたところ、袖口とイヤリングから毒が出てきたそうだ。
最初は知らぬ存ぜぬだったらしいが(いや、袖口から出てきて知らないはさすがにねぇ……)最後にはお茶に自白剤を少々混ぜられたらしく、クリスティーナを殺し、チャンスがあればレオンも殺す予定だったと話したそうだ。
そして自分が王太子妃になって次期国王である子供を産む予定だったと……
クリスティーナだけならまだしも、さすがに次期王太子であり、未来の国王であるレオンの暗殺未遂は見逃すことが出来なかった。
しかも侯爵に指示されたのだと自白した為、すぐに侯爵が捕らえられた。
侯爵も自白剤を飲まされて、罪を認めた。証拠の保管場所なども丁寧に自白してくれたおかげで、昨日のうちに全て片がついたのだとか……
給仕の中にも侯爵の手の者が紛れており、料理に毒を盛ったのもワインに毒を入れたのも彼だったらしい。
もちろん、侯爵令嬢に渡されそうになったドリンクにも初めから毒が入っていたのだとか……クリスティーナのドレスについたお酒の染みからも、自白通り毒の成分が検出されたそうだ。
侯爵家は取り潰しになり、侯爵と侯爵令嬢はレオンに盛る予定だった毒を自ら飲むこととなったと……
(これで暫くの間はクリスティーナを排除しようとしていた輩も大人しくなるだろうと言われても……何だか全然安心出来ないんですけど!
他にも私を排除しようとしている連中がいるってこと?この先もまだまだレオンも狙われる可能性もあるとか……恐ろしい世界だわ。
そう言えばあの襲ってきた騎士達は侯爵の手の者じゃなかったって言ってたよね……
とりあえず元気になったら魔法の訓練も追加して、いつでもレオンを守れるように鍛えなきゃ!)
そう決意したクリスティーナだったが、しばらくの間は王太子に毎晩抱き潰されて訓練どころでは無くなってしまうのだった……
それから10年後、レオンはすくすく育ち、あの後すぐに懐妊した双子の弟と、さらに年子で妹が生まれた。
そしてクリスティーナは今、出産の真っ最中である。もうこれ以上続けて生んだら死んでしまうと暫くは避妊をしていたが、王太子がもう一人クリスティーナに似た女の子が欲しいと言って久しぶりの出産となった。
残念ながら、王太子の希望は叶えられず、今回もまた王太子そっくりの元気な男の子が生まれた。
子供達は何故かみんな王太子やレオンと同じ王の瞳をしており、国中を驚かせた。
王の瞳を持つ子供は、その世代に1人だけではなかったのかと……確かに歴史をどんなに遡っても同じ例はどこにも無かった。
周囲の困惑をよそに、クリスティーナはホッとしていた。これなら誰が継いでも問題無いので、ある程度は自由に生きさせてあげられると……
子供達は分け隔てなく教育され、勉強を教えてあげたり一緒に考えたりと兄弟仲もとても良かった。
今のところ誰が王位を継ぐかは分からないが、少なくとも兄弟間では争いが起こることは無いだろう。
レオンの次に王の瞳を持つ双子が生まれたことで、手を出したらいけない存在なんじゃないか!?とか、さすがにクリスティーナと子供3人を殺すのはリスクが高すぎる等と言う理由で命を狙われることもほとんど無くなった。
権力欲の強いクリスティーナの父が引退して、温厚な兄が公爵家を継いだことも大きかったようだ。
あの事件の後、クリスティーナは女性達に乞われて護身術を教えることになった。本当は華麗に大男を投げた背負い投げを習いたかったらしいが、さすがにか弱い女性が身を守るには向かないと言うことでクリスティーナが却下したのだ。
クリスティーナが城勤めの侍女やメイド、下働きの女性達に教え、その中で数名が城下町で教え、またさらに隣の町で教え……と言う具合に国中の女性に護身術が広まった。
おかげで女性を狙った犯罪が減り、かつて無いほど治安の良い国となった。
クリスティーナは前世の記憶のように、貧富の差が少なく、誰もが初等教育を受けることができ、医療機関も充実させて、子供達の代になる頃には国中みんなが笑顔で過ごせる社会になるようにと尽力した。
クリスティーナは生まれたばかりの4男を抱きながら、ずいぶん平和で良い国になったな~等と幸せに浸っていた。
そんなクリスティーナの横で、次こそはティナにそっくりな女の子を……早く一月経たぬかな……お、授乳か?マッサージは必要か?いよいよ俺の出番か?等と5人の父親になっても相変わらず王太子のむっつりは健在であった……
これにて本編は完結になります。ありがとうございました。




