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お披露目式

「いくら前世で習っていたからとは言え、よくとっさに体が動いたな。」


「はい、目が覚めてからリハビリがわりにストレッチと筋トレと共に訓練していましたから。

でも、火かき棒を使って素振りをしたり空手の型は練習していたのですが、柔道はしていなかったのでとっさに出たのが背負い投げで自分でも驚きました。

前世では途中から柔道一本にしぼったので、とっさに出たんでしょうね……ふふ、実はインターハイで優勝したんですよ。」


王太子はインターハイとやらが何かは分からなかったが、何かの大会で優勝したと言うことだろう。

それにしても……いつの間に体を鍛えていたのだ?夜から朝は一緒に過ごし、昼はだいたい乳母と共に過ごしているようだったが……

ふむ、鍛えられるくらい元気になったと言うことは、そろそろ次の子を作っても良さそうだな。そろそろ我慢の限界だったしな。早速今夜から子作りに励もうではないか。


クリスティーナは何故か全身の鳥肌が立った。まさかまだ敵が!?とっさに辺りを見回したが、どうやら鳥肌の原因は目の前で怪しく目を光らせる王太子のようだった……

まったく、こんな時に何を考えているんだ!はぁ……いよいよ今夜襲われるのだろうか……

今夜の事を考えてぐったりしていると、下腹部がズキリと痛んだ。しくしくしたこの痛みには覚えがある。まさかと思いトイレに駆け込むと、やはり産後初の生理が来たようだ。

産後初だからなのかクリスティーナの体質なのか、それはとても重く、ベッドの中で数日過ごすことになってしまった。


何とか式典の前日には起き上がることが出来る様になり、クリスティーナは胸を撫で下ろした。

とは言え明日はレオンのお披露目の式典だ……ハイヒールに慣れたり、ダンスの練習をしたりしたかったのだが、無駄に数日過ごしてしまった事が悔やまれてならない。

王太子は元々今日から3日間休みを取っていたらしく、さっそく朝食後ダンスを教えてくれることになった。

王太子妃として、必ず1度は王太子と踊る必要があるが、他はまだ体調が万全では無いと言って王太子が断ってくれるそうだ。守ってやるから安心しろと……

そうは言っても、王太子が他の御令嬢達と踊る間はどうしても1人になってしまうじゃないか……等と考えているのが伝わったのか、急にダンスの足を止め抱き締められた。


「明日は絶対側を離れないから、そう不安そうな顔をするな。

お前以外とは絶対に踊らない。そう約束するから信じてくれ。」


強い眼差しで王太子は妻に誓った。その強い眼差しに、弱気になっていたクリスティーナは不覚にもドキリとしてしまった。

そしてまたダンスの練習を再開した。ダンスは密着が激しいから、きっとむっつりな手の動きをしてくると思っていたのだが、予想に反して王太子は教師役に徹底してくれた。

不埒なオーラを出すこと無く、分かりやすくリードしてくれる姿は、まさに王子様そのものだった。

先程の眼差しと相まって、クリスティーナの胸はドキドキしっぱなしだった。

その夜のお休みのキスの時は、いつもと違ってクリスティーナの胸は激しくドキドキしてしまい、王太子に心臓の音が聞こえてしまうんじゃないかとひやひやした。

王太子に抱き締められて落ち着かないのか、明日の事が不安なのか、クリスティーナはその夜中々眠れなかった。


翌朝は澄み渡るような青空だった。寝不足のクリスティーナには朝日が眩しく、立ち眩みがした。

王太子に抱き止められ、ベッドに座る王太子の膝に座らせられ、今日の注意点を聞かされる事になった。

侍女も入ってきて恥ずかしいのだが、真剣に話しているので動くに動けない。


「今日出される飲み物や食べ物は、必ず俺が先に毒味をして直接ティナに渡したものだけを口にするように。

いついかなる時も俺の側を離れてはならない。トイレにも付いていくからな。

話し掛けられてもにこにこ微笑んでいるだけでいい、対応は全て俺がする。ティナはしゃべる必要は無い。

見慣れぬ侍女や護衛にも気を付けろ。この前みたいに紛れ込んでいるかもしれないからな。特に貴族共についてきた侍女や護衛は危険だと思え。

お前の実家の敵はその都度俺が教えるから特に注意するように。絶対に一人にはなるな!これだけは絶対だからな!」


「わ、わかりました……そんなに危険な所なんですか?」


「まぁいつの時代にも政敵はいるもんだ。レオンはともかく、お前の座を狙っている者は多いと思え。

城の中は魔法が使えないように結界が張ってある。武器も持ち込めないので用心するのは毒と直接的な攻撃だと覚えておけ。

いいか、絶対に俺以外の者から受け取った酒は口をつけるなよ!たとえ給仕の者であってもだ。」


「はい!わかりました!」


(よく分からないけど怖い世界らしい……

俺以外は敵と思えと言うことのようだ。この前殺されかかったばかりだし、気を付けるに越したことは無いか。レオンの事は乳母と護衛騎士達が部屋で守っていてくれるし、大丈夫だろう……王太子の居住区域に入ること自体難しいしね……

一応レオンの部屋には隠し通路があって、そこから隠れ部屋や庭園、騎士団の詰所まで繋がっている。

光石もあるし、乳母にだけは道順も伝えてあるので大丈夫だろう……)


お披露目はバルコニーから広場に集まった大勢の国民に向けて行われた。前方の方の者からレオンの虹色の瞳が伝わり、大きなさざ波が生まれたかと思うと、それは大きな歓声へと変わった。

次世代の王の誕生に、国民達は歓喜した様だ。レオンも愛想良く笑顔で皆を見ていた。

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