表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/30

第八話 「同行同期で見れる数字」

(……なんだこれ)


有益な情報が無さすぎる。

パーティとやらは、そもそも組めてないし。

エーテル? いったい、なんだそれは。


一番理解できるのは、やはり不死身体(アンチデス)ぐらい。

とはいえ、何度も死ねるというのは利点に思えるが、個人的には欠点でしかない。

せめて、絶対に死ぬことのない強靭な体……とかにして欲しかった。


あんな体験を、いつまでもさせられるのだ。恐ろしすぎる。


太陽の紋章に至っては、一番肝心な部分だろうに説明文が雑だ。

せめて発動条件や効果内容ぐらい載せてもらいたい。


(コスモス様は、随分と不親切なんだな……)


膨れていると、怪訝な顔をする二人がウィンドウ越しに見えた。


「?」


「ユート様は、一体何を?」


「さあ? 頭パンクしちゃったんじゃね?」


(ああ、他の人には見えないのか)


と、目くばせした時だった。


ウィンドウの【なかま】の欄が選択可能になっていた。

カーソルが飛ばずに、項目の横で止まっている。


(さっきは何も反応なかったのに……)


右に左に動かしてみた。


一定の場所では選択可能になり、一定の場所では選択不可になる。


その境界線にあるものは……。


「?」


「なんだ?」


シロナとネロの二人だ。


(まあ【なかま】って言うぐらいだし、そうだよな)


せっかくだし試してみよう。


選択可能な状態でカーソルをさらに右へ。


すると、青白い輪っかのようなものが勇人の指先に宿った。


「ほいっ」


飛ばして、シロナに命中させる。

輪は彼女の身体よりかなり巨大化し、くぐった後に腰のあたりで止まる。


そして小さく縮小すると、キィンという音と共に消えた。


「こ、これは?」


突然のことに驚くシロナ。

もちろんだが、勇人自身も何が起こっているのかさっぱりわからない。

大体の目星はついているが、結果がどうなのかまだ理解できていない。


「な、なにしてんだよお前!?」


声を荒げるネロに対しても、同じように輪っかを投げつける。

果たしてそれは、同じような起動と音を鳴り響かせてくれた。


「……おお、出てる出てる」


勇人はメニュー欄の、【なかま】を横にスクロールした。

シロナとネロの選択肢があがっている。


(なるほど。こうやって仲間を増やすわけか……)


「あれ、なんですかそれ? ユート様、魔法使えるんですか?」


「いや待て、シロナ。こんな魔法見たことないぞ。何だ? 間接魔法か補助魔法の類だろうが……」


警戒する二人をよそに、勇人は一つの知識を得る。


この状態が、同行同期(パーティリンク)とやらなのだ。

そして、それが完遂すると仲間にもステータスウィンドウが見えるようになるらしい。


また、眼を閉じても二人の気配が強く感じられる。

連携行動を円滑にするためのサポート機能だろうか。


「あっ」


考察をしている時だった。

指が滑り、シロナの項目をスライドしてしまった。


俗にいう『決定ボタン』の動作だ。


すると、ウィンドウが更に拡大されて、そこには彼女の情報がずらりと並べられた。



・シロナ エルフ族 6歳 155cm 42kg 85・54・82


 レベル 9

 HP 56

 MP 48

 力 22

 素早さ 33

 知能 55

 攻撃魔力 21

 回復魔力 55

 

 攻撃力 30

 防御力 20

 装備 E:樫の杖

    E:布のローブ


 修練値 杖:SLv.3

     短剣:SLv.1


 取得魔法

 ・回復(ヒール) SLv.7

 ・毒治癒(ベレス) SLv.2


・エルフ族の少女。6歳だが、人間年齢に換算すると18歳に相当する。

 おっとりとした性格で、年上のネロを妹のように扱っている。

 趣味は読書をすることで、魔術書が専らだが、恋愛小説の方が

 実は好んで読むことが多い。勇者の伝説に強い『ああああああああああ!!!』



勇人が内容文を読んでいる最中に大きな声が突然あげられて、視線を動かされてしまった。


「な、なになに!? なにこれ!? ダメでしょ、こんなの!! こんなぁーーー!!!」


慌てふためきながら、触れもしないウィンドウに精一杯の手を振っているのはシロナだった。


「単なるプロフィール欄じゃん。何がそんな……」


「そんな!? 今、ユート様、そんなって言いました!? これ私のことですよね!? そうですよね!?」


「な、なんて(おぞ)ましい魔法だそれは……。頼むからアタシのは触るなよ。いいな?」


ドン引きしながら、シロナを押さえつけるネロが念を押す。


たかだがステータスで、どうしてここまで狼狽するのか……勇人だけが理解していなかった。


「……あれ。でも項目としては、これ『ギルド』で見れるのと似てるな」


「ギルド?」


「ホント! 知らなくていいことは知ってしまうのに! 知ってて欲しいことは何も知らないんですね!! ユート様は!!!」


恐ろしい剣幕で詰め寄られるので、勇人は思わず手を上げながら嗜める。


「ま、まあまあ。ちゃんと読めてなかったから。大事なのは、つよさの所だし。ね」


「ホントですか? ホントに読んでないんですね?」


「ホントほんと。覚えてる魔法とかしか読んでないから」


「……体重」


「42」


「ッッ!!!」


ネロの言葉につい反応した勇人は、瞬時の判断を持って逃亡したことが最善策だった。

もし、そのまま呆けていたら樫の杖(いつの間にか手にしていた)で、再びHPをゼロに削られていたことだろう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ