第五話 「そして始まりへ」
ポワールはそう言うと、目視もせずに殺した魔物から武器を引き抜き、空へ舞う。
そこでようやく、勇人は周りの状況を確認できた。
血なまぐさい戦場。
自分を中心に、囲まれているのだ。
前を進むポワール以外、他には誰もいない。
いや、近づけないのだ。
きっと、勇人が勇者の生まれ変わりだと気づき、一点に攻めてきたのだろう。
(どうする、どうする、どうする、どうする!?)
焦る。
心臓の鼓動がうるさいぐらい聞こえる。
他の音が、どんどん遠ざかっていくように思える。
震えて足が進まない。
手に持っていた剣は、回避の際に階段の下の方へ落ちてしまっていた。
(俺……俺、どうしたら……)
――――ドスッッ!!
「え……?」
うるさく鳴っていた歯のぶつかる振動が止まる。
堪え切れない物が口から溢れた。
血だ。
同じようなものが、自分の胸部からも流れている。
何故なのか。
答えは簡単である。
勇人の胸は、背後から貫かれたのだ。
爪を鋭く研いだ、狼と人間の合いの子のような魔獣。
彼の得物が、勇人に致死量のダメージを与えている。
「ぐぷっ……そ……だ……ろ……」
吐血しながら倒れる。
既に胸元に爪は無く、ぽっかり空いた穴からは、ありえないと思うほどの血液が流れ飛んでいた。
――息が出来ない。
「…………たのか!?」
――――声があげられない。
「ちくしょう! そ……あれを……しかない!」
――――――――視界が暗くなる。
「禁忌…………。状況…………だ。仕…………」
――――――――――意識が遠のく
「みんな、集…………時間………せ………転送…………う!」
―――――――――――――――嫌だ……こんな……
―――――
―――
―。