1/30
プロローグ 「唐突に始まる世界と死」
――彼の胸にそれは突き立っていた。
元は銀色の円錐形をした鋭利なものだろう。
今は赤黒い液体で染まっている。
周りに響く声が、音が遠ざかる。
薄らぐ視界に、羽の生えた騎士たちが声を荒げている姿が映る。
そんなこと……あるわけない。
けたたましい雄たけびがあがると、得物である爪が引き抜かれた。
濃淡入り混じった血が、勢いよく空に舞い上がる。
…………ああ。
そんな……そんな。
いきなり飛ばされた『異世界』で……俺はこんなあっけなく終わるのか……。
少年の意識は、赤い空に溶けるように消えて行った……。