神様からの贈り物
「ミ、ミコトよ……BLはよせ……そっちの趣味はない」
「あら、ごめんあそばせ」
どうやら、こっちの思考を読む神様に反撃する方法としては有効らしい。これで神様、私の思考を不用意に読むことはないだろう。
(もし読んだのなら、トラウマ級映像を思い浮かべてあげますわ!)
「じゃあ、神様、初級レベルで使える漢……魔字を教えてください」
「今、お前、漢字と言っただろう?」
「いやだ、神様、魔字ですよ。マジで怒らないでください」
私は神様を軽くいなす。
「全くお前という奴は……ゴホン。お前が使える魔字は、魔筆と魔墨の問題もあって、まだ使える魔法は少ない。今、使える魔法を教えておこう」
神はそう言って3つの魔字を教えてくれた。
1つは『魅』。これは魅了の魔法。一人の人間を魅了していうことをきかせる。持続効果は1時間ほど。魔法力が強ければ強いほど、効果は高い。ちなみに『魅了』と書けば、集団を魅了することができるが、道具のキャパを超えるらしい。
2つ目は『強』。これは強化魔法。1人の人間の体の筋肉を強化することができる。
これを自分に使えば、筋力を倍にして力持ちにするし、足の筋力強化なら早く走ることもできる。重ねてかければ、超怪力になれる。ものに使えばその強度も高められる。
3つ目は『眠』。これは眠り(スリープ)の魔法。効果は先ほど使った。1人の人間を眠らせる。これが2文字の『快眠』なら、対象エリア内の生物を眠らせる。効果は1時間から数時間。魔法の眠りであるから、抵抗できなければ途中では起きない。
これは戦闘では強力であるが、神様からもらったチープな魔筆では発動しない。1人だけだとあまり使えないような気がする。
「神様、もっと強力な攻撃魔法とかないの?」
私は神様に聞いた。魔力無限なのにこんなしょぼい魔法じゃ、この先の展開に期待がもてない。
「今は使えない」
「でも、私は漢……じゃなかった。魔字を知っていますから、もし、『死』とか書いたら、敵の一人を瞬殺できるとか、性能のよい魔筆を使って『大虐殺』とか書いたら、敵全部を始末できるとかするんじゃないですか?」
「お、お、お前はなんと恐ろしいことを……」
「え、じゃあ、大虐殺という魔法もあるんだ」
「い、いや……ない」
「神様が嘘ついていいんでしょうか?」
神様、明らかに動揺している。その証拠に声がうわずっている。
「お前の頭の中の文字では発動しない。3つの魔字は我がお前に与えたから魔法が発動するが、後の文字は魔導書などで取得しないと魔法は発動しないのじゃ」
神様はそう言った。私の頭の中の『死』という字は漢字で、魔導書にある『死』は魔字。目でそれを見ないと魔字として認識されないというのだ。
(まったく、面倒な設定だわ!)
「魔字は魔術院で学んだり、魔道書を手に入れたりして取得するがよい」
「はあ~」
「ため息をつくな」
「だって、こんなしょぼい魔法しか使えなくて、この体じゃ、死んでしまいますよ。課題に挑戦する前に生き残れません」
「そこはお前の知恵と腹黒さ……うおおおおおおっ……」
頭の中でもう一度、BL漫画の場面を思い浮かべる。今度は美少年同士ではなく、でぶなおっさん同士の絡みだ。
神様が乗り移ったジータ、青顔で目を回している。私のことを腹黒いなどと言う輩には、お仕置きである。
「確かに強力な魔法は、8歳の子供じゃ宝の持ち腐れだけどね。でも、このままじゃ命の危険だってあるじゃないですか。ここはおまけ、おまけですよ神様」
子供だといろんな危険がある。現代日本だって子供は危険。特に可愛い女子なんて用心しないと誘拐されて殺される危険が大きい。そしてここは異世界。先ほどの神様によるレクチャーで、この世界の一般常識とやらを知った私には理解できる。
この異世界。人権意識はすこぶる低い。力の強いものが弱いものを支配するという動物のような倫理観なのだ。すなわち、女、子供はこの世界では弱者なのだ。今の私は幼女。もっとも弱い存在なのだ。
「わ、分かった、ミコト。では、これをやろう、手を出せ」
そういうと白い小さな牙のようなものをジャラジャラと私にくれた。
「何ですか、この気味の悪いものは?」
「ドラゴンの牙じゃ」
「いきなり、ファンタジーアイテムですね」
「これを地面に撒けば、竜牙兵となる。全部で7つ、7体の竜牙兵が召喚される。竜牙兵はベテラン戦士と同等の剣技を誇る」
「これ、使い捨てじゃないですよね」
「敵が全滅したらまた牙に戻る。それを拾えば、また使える」
「ふうん……まあ、護衛が7体もいるのだったら、助かるわね。で、どうやって召喚するの?」
私は神様に使用方法を聞く。よく聞いておかないといざという時に使えない。
「その牙を地面にばら撒き、手のひらで地面を撫でるようなジェスチャーと共に、こう唱えるのだ。『混沌の先兵、龍の申し子、竜牙兵、我の召喚に応えよ!』」
「は……恥ずかしい~。そんな恥ずかしいことやらないといけないのですか?」
「恥ずかしくはない。これが普通だ」
「……」
生まれ変わる前は、普通のJKだった私にはこの呪文はハードルが高い。




