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勇者キラーラビット参上

「お前がウィザードか……ハーフフットのウィザードとは珍しい」

「よろしくお願いします。私の名前はキラーラビット……」


 私はそう名前を偽った。キラーラビットというのは、先日の山賊退治をした勇者の名前だったが、それを借りることにした。

 桃苔入手のクエストを請け負った冒険者パーティとの対面。私は顔を隠して自己紹介した。前はガインのおっちゃんの股引きをかぶっていたが、今は豆蔵に作らせたマスクである。ウサギのような長い耳を垂らしたマスクである。


 ちなみにこのマスク。豆蔵が夜なべして作ったものだ。この元王国のスパイ、裁縫もうまい。但し、可愛いウサギのマスクをこの不気味なおっさんが作ったというのは、ギャップがあり過ぎる。豆蔵には悪いが、これを作ってる彼の様子を想像すると少しキモいと思ってしまう。


「キラーラビットね……どこかで聞いたような名前だな。俺はバーナード、ごらんのとおり、戦士を職業にしている」

 パーティのリーダーの男、バーナード。年齢は29歳だという。ちょっと自信をつけた中堅冒険者という風体である。装備は徹の胸あてにブロードソードにラウンドシールドとオーソドックスな装備。奇をてらわない姿が安心ができる。


「わたしはレイン。バーナードと同じく戦士をしているわ」

 もう一人の戦士は女性。この人の装備は革鎧。その下には軽い鎖帷子を身に付けている。女性であるので、パワーよりもスピードを重視した防具選びであろう。剣は細身のレイピアである。


 神官をしているグローリーは、中年の男。身長は180センチ、体重100キロ超の巨漢神官だ。神官服の下に鎖帷子を着込み、巨大なメイスを右手で持っている。回復魔法や防御魔法をいくつか使えるらしい。

 そしてエルフ。名前はシャオミ。期待通りの金髪くせ毛の長い髪。耳は長くエメラルドグリーンの大きな目。華奢な体はまさにエルフ。残念ながら胸は細身の体に合ったナインペタン。これは仕方がないだろう。巨乳エルフじゃないとファンタジ―好きにはつまらないだろうが。

 このエルフのシャオミはレンジャーらしく、弓とナイフで武装している。防具は布の服に片胸だけの胸当て。革のブーツがいかにもエルフらしい。


「キラーラビットという名前は聞いたことがあるわよ。山賊オーガヘッドの一団を葬ったとされる小さな勇者だとの話だけど」


 どうやら、このエルフ。私の活躍した話をどこかで聞いたようだ。バーナードはそれを聞いて目を輝かせた。

「どうりで聞いたことがあるはずだ。あなた様が、あの小さき勇者様でしたか!」

「さ、さあ……別人じゃあないでしょうかね」


 私は話をはぐらかしたが、それがかえって真実味を増してしまったようだ。バーナードは思い出したように噂に聞く私の武勇伝を語り始める。


「悪逆非道の山賊を100人葬っただけではなく、ゴブリンの軍団も軽く倒したと聞きます。さらにドラゴンも倒したというドラゴンスレーヤーという噂も……」

(おいおい……どれだけねじ曲がった噂ですか……)


 噂というものは大げさに伝わるものだが、これはあまりにも盛り過ぎである。倒したのは30人ほどの山賊だ。それでも一人で倒したということなら、すごいことではあるが。


「まあ……そういうこともあったような、なかったような……」

「おお、さすがは勇者様」

「その力、是非とも見たいものですな」

「小さき勇者様と一緒に行動すれば、この任務も楽勝。不可侵の山と呼ばれているが、例え、巻き角の魔獣が出ても安心です!」


 そうバーナードたちは目を輝かせて私を褒めた。関心なさそうに弓の手入れをしているエルフのシャオミ以外は尊敬のまなざしで見ている。

 正直、その視線が痛いが今回は私も少しは余裕がある。


 その余裕は戦利品によるものである。

 それは前回の山賊との戦いで敵の魔法使いから奪った魔筆と魔道書。

 あのウィザードから奪った魔筆は南方産のサザビー種と呼ばれる馬の尻尾の毛で作られたというもの。高級品らしく、豆蔵が言うには店で買えるレベルではかなりいいものらしい。

 但しランクは『ハイノーマル』。しかし、この道具のおかげでレベル2の魔法が発動できる。

 しかも奪ったポケットサイズの魔導書には、6種類の魔字が記されていた。

 一つは「壁」。これは見えない透明の壁を発生させる。これで物理攻撃、魔法攻撃を一定時間防げるらしい。使いようによっては有効な魔法だ。

 2つ目は「快眠」。眠りの魔法の上級バージョンだ。これで集団を眠らせることができる。これはあのウィザードが使った奴だ。


 私が使える『眠』より上級。但し、眠りの魔法は人間や亜人間にしか効果がない。魔法抵抗がある者へは、あの山賊のウィザードが私を眠らせなかったことからも分かるように、効果が出ないこともある。今から対峙する巻き角の魔獣には、効果がないと思ったほうがよいだろう。


 3つ目は「氷矢」。氷でできた矢を放つ攻撃魔法。4つ目の「炎矢」はこれの炎バージョンだ。これらは待望の攻撃魔法だ。

 5つ目は「水」という魔法。唱えるとコップ一杯分の水を召喚することができる。水は浄化されたもので飲める。砂漠を旅行するときには便利かなと思う。少なくとも水筒を持参しなくてもいい魔法だ。

 

 そして最後は「倍」。これは攻撃を2倍にする魔法だ。例えば、「炎矢」と書いた魔紙にこの「倍」と書いた魔紙をくっつければ、2倍になるのだ。

 これらの魔法は決して強いわけではないが、魔力が無限の私が使うからそれなりに役に立つだろう。それに冒険者パーティの目標は巻き角の魔獣退治ではなく、桃苔の採取。


 巻き角の魔獣に見つからないでそれをするのが作戦のスタンスだ。彼らも自分たちの実力を知っている。


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