プロローグ
「疲れた…」
僕はそう呟く。
授業ももうなくて後は帰るだけのはずだった。
しかし、帰れなかった。
なぜなら、
「せっき。なに惚けている。さっさと終わらせてくれないか」
と、上から声がする。
僕は、その声の主の方向を見て言った。
「流鏑馬先生。なんで僕がこんなことやってんですか?」
と、原因に原因を聞く。
すると、僕に流鏑馬先生と言われた女性は、分からないのか?というような顔で、
「私がやるのがめんどくさいからに決まってるじゃないか」
と、当たり前の様に言う。
「はぁ…なんでこんな人が先生になれるんだろ…」
と、呟くと、
「それは世界が平和だから──なんちて。てか失礼だな!」
と、つまらないノリツッコミをしていた。
「あれ?まだいたのせっき」
ふと、廊下の方から声がする。
僕がそちらの方を向くと、少し茶色がかった、ショートカットの女子がいた。
「疾風こそ、なんでいるの?疾風、部活無所属だよね?」
疾風と言われた女子は、疲れた仕草をしながら、
「委員会の仕事が長引いてさ。今帰るとこ」
と言っていた。
「へー。じゃあね」
と、素っ気なく返す。
「なんだよー。せっかく手伝ってやろうと思ったのにさ」
と、廊下からドアを通って教室に入る。
「いいよ、疾風がやると余計遅くなるから」
と、僕は断るが、
「遠慮しなくていいって!ほら、何やってんの?」
と、疾風は僕の目の前にある、書類を覗き込むと、
「ん?何これ。茜っち!日本語じゃないよ!」
と、流鏑馬先生に怒り始めた。
茜っちというのは、疾風が勝手につけた名前で、先生の名前が流鏑馬茜という名前だかららしい。
「いや、日本語だから。お前が勉強してないだけだろ」
と、流鏑馬先生に言われ、隣で唸っている。
「月灯ちゃん!何やってんの?」
再び、廊下から声がする。
そこには、かなり、背の小さい、女の子と言われてもおかしくないような女子がいた。
「おおっ、こはる!迎えに来てくれたの?」
と、疾風は言うが、
「迎えに来てくれたの、じゃないよー!待ってたんだよ〜!」
と、こはると呼ばれた女子は少し憤慨した様子で言ったが、全く気迫はない。
「ごめんごめん。テヘッ?」
と、疾風は全く反省してる雰囲気はない。
「もういいよ〜…月灯ちゃんったら。もー」
と、その女子はまだ頬を膨らませている。
「ほらほら怒んなって、後でクレープ奢ってやるから!」
と、疾風は言うが、
「ううっ…今、ダイエット中なの…」
「えっ…マジか…こはる、今でも可愛いぞ?だから食ってもだいじょぶだろ」
と、疾風が言うと、
「そっ、そうかなぁ?」
と、揺れていた。なんて弱い決意だろう。
「じゃあ…食べよっかな!」
「よし!決まり!あ、せっき、つうわけだから頑張れ!」
と言って、行ってしまった。
「疾風、嵐のように過ぎ去ってったし…。普通、有り得ないよ」
そう、普通有り得ない。
僕が疾風月灯の事を好きだなんて。
……To be continued