その2
その日の朝まで、高峰彬は都内の大学に通う、いたって平凡な大学二年生だった。
強いてほかの学生との違いをあげるとすれば、それは下宿先が少し風変わりなことだろうか。
学生寮の選考に漏れ、右も左も分からない大都会で自らの住まいを見つけなければならなくなった彬が膨大な物件場を漁って辿り着いたのは、通っている大学から二駅の場所にある小さな喫茶店の二階だった。
店舗の二階部分を改築して、賃貸として貸し出しているのだという。
六畳一間の1Kに、都内では珍しいバス・トイレ別という間取りが魅力的だったのもあるが、何より彬の気を惹いたのは階下の喫茶店でアルバイトをすれば、その分に応じて家賃が少し割り引かれるという条件だった。もちろん、給料は別に出る。
学生生活の間、実家からの仕送りに頼りきることはしたくないと考えていた彬にとって、住む場所と働く場所を同時に得ることができるこの物件は天からの贈り物に見えたのである。
そんなこんなで、その日のうちにその物件、“喫茶ふじ”という個人経営の喫茶店を訪れ、入居申請とバイト採用の面接を受けて、大家兼喫茶店のオーナーから快諾を得ることが出来た彬は、喫茶店で住み込みバイトをしつつ、大学生活をスタートさせたのだった。
大家兼喫茶店のオーナーは、音無辰巳といった。良く手入れされた口ひげが特徴的な、落ち着いた物腰の大人な男性だった。ダンディーという言葉がこれほど似合う人に彬は出会ったことが無い。
祖父から受け継いだという店を守るために、午後六時以降は酒類も提供するバーとして営業したり、一人でやるには手の届かない二階部分を貸し部屋に改築したりと、色々と抜け目のない人物でもある。
ちょっと変わっていることといえば、店の中では従業員だろうとお客さんだろうと、自分のことを“マスター”と呼ばせることだろうか。
喫茶ふじの最大の売りは何といっても、彼がその“マスター”として徹底的にこだわり抜いて作り上げた、静かな大人の空間だ。訪れるお客たちもそれが気に入っているらしく、誰もが店の雰囲気を壊さないようにという、暗黙の了解を守っている。
喫茶ふじには彬以外にもう一人、従業員がいた。
赤羽充希という、彬と同じく住み込みで働いている女性だ。
モデルかと見紛うほどの美貌と抜群のプロポーションに、性格は明るく快活で気立てが良いと非の打ちどころがない彼女は、いうなれば喫茶ふじの看板娘である。
去年、卒業したばかりだという大学で取得した管理栄養士の知識を生かして、給仕だけでなく、新メニューの開発なども任されていた。彼女の監修したランチメニューは、近所の奥様方やサラリーマンたちに絶大な人気を誇っている。
そういうわけで、彬は住む場所にも働く場所にもなんらの不満も持たぬまま、そこそこ刺激的な大学生活の一年目を過ごしたのだが。
彬はそんな喫茶ふじに、一つだけ疑問があった。
店が不定期に休みになるのだ。
まあ、それは個人営業の喫茶店だ。チェーン店のように年中無休とはいかないだろう。だが。月に一、二度、土日を休むだけならばともかく、飲食店ならば書き入れ時だろう長期休暇に合わせて休業するというのは、いささか商売っ気が足りないのではなかろうか。
加えて、そうした日に限って店にも、店の裏側にある大家の居住スペースにも、二階の部屋にも、マスターの辰巳はおろか、充希もいないのである。
いったい、店を休みにして何処へ出掛けているのだろうか。それも二人揃って。
その理由を邪推した彬が、大学二年目の夏休み初日に、多くの大学生が行使するだろう昼過ぎまで寝過ごすという特権を返上してまで、事の真相を突き止めようとしたのが、その日の始まりであった。
時間を現在に戻そう。
彬が無線からの指示に従って、ヒットを受け取った直後からだ。
「ヒットだ。よくやったな、ジュニア」
無線から聞こえてきたのと同じ、心地よい低音の声で彬をそう呼んだのは、茂みから現れたブーニーハットを被った男性だ。服は彬と同じく、迷彩服を着ている。
装備もほとんど彬のものと同じだ。それもそのはずで、彬が現在身に着けている装備は一部を除いて、全て彼から借りたものだった。
「あ、ありがとうございます、マスター」
「ここではマスターじゃない。隊長と呼べ」
褒められたことに、思わずいつも通りの呼び方で返した彬へ、彼は大切なことを教えるような口調で言った。
そう。チャームポイントの口髭こそ、顔に巻いたシュマグというマフラーか、スカーフのような布のせいで見えないが。彼こそ、彬の下宿先でありバイト先でもある喫茶富士のマスター、音無辰巳その人だった。
「あー、すみません。隊長」
辰巳が自分の呼ばれ方について、特にこだわりを持っていることを思い出して、彬はそう訂正した。
店でもそうだ。たとえ初めてやってきたお客さんに対してでも、自分のことはマスターと呼ばせる徹底ぶりなのだ。自然、従業員である彬もすっかりマスターという呼び方が定着していた。
一度、理由を聞いてみたところ、公私を分けるためだという答えが返ってきた。
恐らくだが、学生身分の彬にはまだ分からない、大人の職業流儀なのだろう。
「よし。周囲に敵影は見えないが、引き続き慎重に進むぞ」
「はい」
ヒットされた二人が銃を持った両手を頭の上まで上げたまま、時折「ヒットでーす」「ヒット通りまーす」と口にしながら去ってゆくのを見送った後で、辺りを見回したマスター改め、隊長は、彬を先導するように動き出す。
彬はその動きを真似しながら、あとを追う。その身体はまだ震えていた。
震えの原因は恐怖でも、緊張でもない。
叫び出したいような、笑い出したいような興奮が胸の中で爆発しそうになっているのが原因だ。
ゲームの世界へ迷い込んだような。映画の登場人物になりきっているような、そんな気分。
一言で表すならば、楽しいという感情。
心に収まりきらない楽しさが、彬の全身を震わせているのだった。
「たいちょー」
林の中を少し進んだところで、無線から今度は気抜けするような、間延びした声が聞こえた。彬の前を行く辰巳が右手を顔の横まで持ち上げて、握りこぶしを作る。
ゲーム開始前に教えられた、“止まれ”という意味のハンドサインだ。
その場に片膝を突いた辰巳に、彬も倣う。
「どうした、“モンキー”」
呼びかけに答える辰巳の声が無線を通して聞こえる。
「いや、そのモンキーってコールサインは……んまぁ、今は良いや。前方に小屋がありますよ。外に敵二名を視認。まあ、たぶん、中にも二、三人はいるでしょうね」
「了解した」
辰巳が答えると、無線からガサガサと枝を掻き分けるような音が響く。
「それから、我がレッドチームの戦況ですが。もう、フラッグのすぐ近くまで押し込まれてます。今のところは隊長が教えた通りに防衛線を引いているから、まだしばらくは持つと思いますが」
「分かった。急がないとな。“クマ”、聞いていたな?」
モンキーからの報告を聞き終えた辰巳が、今度は別の人物を呼び出す。
「なあ、隊長。俺のコールサイン、クマじゃなくて、せめてベアーとかにならないか?」
呼びかけに応じたのは野太い男の声だ。
「“レッドクイーン”もそこにいるな?」
「居るけどよぉ……」
文句を一蹴されるどころか無視されたクマの声には諦めたような響きがある。
「よし。それでは」
「あの、隊長。私のコールサインってもっと他に無かったんですか?」
辰巳が何かを言いかけた所で、今度は女性の声が割り込んだ。
どうやら、無線の向こう側にいるメンバーは全員が自分のコールサインを気に入っていないようだ。彬は別に、自分の“ジュニア”というコールサインに関して何の文句もないのだが。
「分かった、分かった。さっきからみんな同じことを言ってくるな。……では、このコールサインは今回の作戦中だけのものとする。我慢しろ」
辰巳は暑いのか。被っているブーニーハットをぽんぽんと上下させて、中の空気を入れ替えながら答えた。
この話はこれで終わりだと聞こえた。
誰からの反論も無かったので、一応、みんな納得したらしい。
「それで?」
クマの声が尋ねる。
「前方の小屋を制圧する」
辰巳はそう答えた。
「恐らく、敵の防御チームだろう。迂回する手もあるが、できるだけ後方の危険は排除しておきたい。モンキー、敵の装備は?」
「ええとですねぇ……」
辰巳の質問に、再び無線の向こうからがさがさという音が聞こえた。
「小屋の外にいる二人は、AKとP90を持ってます。小屋の中までは分からないですが、殺気から街道側にある銃眼からちょくちょく銃口が出たり引っ込んだりしてて……G36かな、あれは」
「ふむ」
モンキーからの報告が終わると、隊長は真剣な様子で考え込んだ。
「出入り口はどちら側だ?」
「北側です。街道からは逆の位置ですね」
辰巳たちのやり取りを聞きつつ、彬はこのフィールドの全体図を思い返した。
山の一部を切り開いて作られたこのフィールドは、BB弾が外へ飛び出さないように張られたネットによって、東西に伸びる長方形の形で区切られている。
フィールドのほとんどは彬たちが今いるような雑木林だが、東西三か所ずつ、大小の開けた広場があった。それぞれの広場は道で繋がっているのだが、先ほどからモンキーの言っている街道とは東西にある最も大きな広場を繋ぐ道だ。街道と呼ばれているだけあって他の道よりも幅が広く、大型トラックが楽に通れるほどの大きさがある。
今は西側がブルーチーム、東側がレッドチームに分かれて、お互いの陣地に置かれたフラッグを奪い合う、フラッグ戦と呼ばれるルールで戦っていた。
フラッグは東西のある一番大きな広場の中心に置かれている。つまり、街道を確保出来たチームは圧倒的に有利になるのだ。
もちろん、彬たちが今しているように雑木林の中を突っ切るという手もある。だが、足元には草が生い茂っていては歩くのも走るのも一苦労だ。そもそも、最も移動しやすい道を手放すという選択肢はあり得ない。
の、だが。彬たちが所属するレッドチームは現在、その街道をブルーチームに確保されており危機的状況に陥っているのである。
この状況を打破すべく、隊長こと辰巳が立案したのは、フラッグ直前での攻防に敵が気を取られている間に、少人数が隠密裏に林の中を抜けて敵フラッグを奪うという作戦だった。
その遊撃隊に選ばれたのが、先ほどから辰巳と無線でやり取りをしている三人、そして彬というわけである。
そうはいっても、初心者である彬は作戦の内容をあまり良く理解していないのだが。
とりあえずは、辰巳に着いていくだけで精一杯だった。
「よし」
辰巳が考えを決めたように口を開いたので、彬は慌てて頭の中の地図を消した。
「俺とジュニアはこのまま前進する。クマとレッドクイーンは、俺たちよりも北寄りから小屋へ近づけ。小屋を見通せる位置に着いたら待機。俺が合図をしたら、制圧射撃を加えろ。相手がそちらに気を取られている間に、俺たちが横から強襲して制圧する」
「了解」
短く答えたのはクマだ。
「配置に着いたら連絡しろ。モンキーは引き続き、上から警戒」
「りょーかい」
モンキーが間延びした声で返事を返す。
上から警戒、というのは、木の上からという意味だ。
雑木林の中でも特に背の高い木に登って、上からフィールド全体を見下ろしているのである。
モンキーが銃を担いだまま、ひょいひょいと木を登ってゆく光景が、未だに彬の頭には焼き付いている。本人は納得していないようだが、モンキーというコールサインは実に分かり易いと思った。
「では。ジュニア、行くぞ」
ちなみに、彬のコールサインがジュニアなのは、新入りだからという理由だった。
「はい、隊長」
気を引き締め直して、彬は隊長に続く。
“隊長”は、まさに隊長であった。
「あれだな。モンキーが言っていた小屋は」
茂みの影に隠れながら、隊長が呟いた。それに彬も草の影からひょいと頭を出して、向こう側を窺った。
街道と呼ばれている道から少し離れた林の中に、ベニヤ板で作られた簡素な小屋が建っている。高さは二メートルほど。横五メートル、奥行き三メートルほどだろうか。思っていたよりも大きいなと辰巳が呟く。
「クマ、レッドクイーン。配置に着いたか?」
西側から小屋に接近しつつ、隊長が無線に呼びかけた。
クマが「おう」と小さく返事をするのが聞こえた。
彬はその間、小屋を観察していた。
入り口に男が二人、やる気なさげに立っている。銃を片手でぶらぶらとさせながら、大きな声で会話していた。
話の内容は大体、「俺も前線に行きてー!」だとか「良いよな、勝ち組は。なんで俺チョキだしたんだろ」というものだった。どうやらじゃんけんに負けたせいでこんな場所にいるらしい。見えている二人の他に、もう二人分の声が聞こえた。
「全部で四人いるみたいです」
小屋から目を離して報告した彬に、辰巳はこくりと頷いた。
「ジュニア、これは邪魔になる。ここに置いて行こう」
彼はそういうと、持っていたスナイパーライフルを近くの木に立てかけた。代わりに、背中に負っていたアサルトライフルへと持ち替える。
今度は一発ずつ装填する必要のない、電動式だ。
彬の準備が整ったところで、辰巳は無線に通話ボタンへ手を伸ばした。
「クマ、始めろ」
辰巳が無線へ静かに呟いた途端だった。
バラララララララララララララっ、という豪快な音とともに、小屋へBB弾の雨が降り注いだ。
やる気なさそうに立っていた二人が驚いて飛び上がった。
バチバチとBB弾がベニヤ板にぶつかって弾ける無数の音が、少し離れた場所にいる彬たちの耳まで聞こえる。あっという間に、外にいた二人がヒットを叫ぶ。
「二人やられたぞ!」
「いつの間にこんなところまで……?」
「いいだろ、そんなことはどうでも! あっちだ! あっちから撃ってきてる! なぁ、このM60って誰のだ? 使っていいかな?」
「ヒロが重いからって置いてったんだ。ご自由にって言ってたぜ! よし、こっちも弾幕張って応戦だ!」
小屋の中から、騒がしいやり取りが聞こえてくる。もうこのゲームでは打ち合う機会が無いと思っていたのだろう。その声は驚きつつも、楽しそうだ。
そんな中、彬と辰巳は静かに小屋の壁へ取りついた。彼らの場所は小屋が盾になっていて、クマの銃撃は届かない。
「せっかく持ってきたんだから、使ってみるか」
そう言って辰巳が腰に巻いてある弾帯の物入れから穴だらけの筒を取り出した。
手榴弾だ。ピンを抜いてからしばらくすると、内部のガスが解放されて表面にびっしり空いた穴からBB弾が飛び出すという代物である。
狭い室内に投げ込めば、避けるのは難しいだろう。
「いいか、ジュニア。サバゲ―でグレネードを使う時は、相手の足元に転がすように投げろ。どんなフィールドでも、直接ぶつけたり、腰よりも高い位置に放るのは禁止されている。覚えておくように」
辰巳の教えに、こくこくと頷く彬。
ゴーグル越しにみえる辰巳の目は、仕事の際に時折見せるものと同じくらい真剣だ。
あくまで、サバゲーは楽しむために戦う。相手を傷つけるためではない。
何よりも最初に教えられたことだった。
「よし、俺が外に出て……」
中から、そんな会話が聞こえた。その声の主が小屋から出てくるよりも前に、辰巳は手榴弾を中へと転がし入れる。
「ん?」
不思議そうな声。一瞬の静寂。そして、パパパっとBB弾の弾ける音。
「うおおおおおおおおお!? グレネード!? ヒットーーーー!!」
実に豪快なヒットコールとともに小屋から飛び出してきたのは一人だけだった。
砂漠迷彩を着ている彼は驚いたように、そこにいた辰巳と彬を見つめる。
驚きと、称賛の入り混じった目だ。しかし残念だが、すでに戦死した彼はフィールド内で周りにヒットしたことを知らせる以外の言葉を口にすることはできない。
「一人残ったか。明らかな跳弾の場合はセーフが今回のレギュレーションだからな……おい、ジュニア! 離れろ!」
辰巳が独り言を言っている間に、小屋を覗き込もうとした彬の首根っこを掴んで引っ張った。
「うわぁっ!」
そのまま尻もちをついた彬は、思わず悲鳴を上げた。
引っ張られたからではない。先ほどまで自分の頭があった空間を、フルオートで打ち出されたBB弾が飛びぬけていったからだ。
「気を付けろ。制圧の確認ができていない場所をむやみやたらに覗き込むな。顔面セーフなんて甘っちょろいレギュレーションはない。何のための重装備だと思ってるんだ」
安全確保は自己責任だぞと、辰巳が叱るように言う。
「は、はい。すみませんでした」
彬は冷汗をかきつつ詫びてから、辰巳に礼を言った。
もう少しで終わってしまうところだったと思っている。
「よし、分かったらこいつを持っていてくれないか」
立ち上がった彬に、辰巳は自分のアサルトライフルを押し付けた。そして、腰に吊っているホルスターから一丁のハンドガンを抜く。
丹念に磨き上げられたその銃を、辰巳は両手で握ると顔の前まで持ち上げた。
何かに祈りを捧げているようなポーズだった。
「夏は、ガスガンの季節だ」
そう小さく呟いて、彼は突然、小屋の中へ突入した。
「隊長!?」
あまりにも突然の行動に、彬が叫ぶ。
こんな場所で一人にしないで欲しかった。
小屋へ突入した辰巳は、一直線に残っていた敵へ向かった。敵は思っていた通り、奥まった場所でベニヤの机を立てにして、グレネードのばら撒いた弾を防いだらしい。
敵が驚きの声を上げながら、突っ込んできた辰巳に向けて発砲する。が、少し遅かった。移動する標的に弾を当てるのは思っているよりも難しい。焦っているとなればなおさらだ。
フルオートで打ち出されたBB弾が虚しく空を切る中、辰巳は相手の足元めがけて、類を踏みに行く野球の走者よろしく足から滑り込んだ。
「フリーズ」
唖然として自分を見下ろしているその彼に、辰巳は銃口を突きつけた。
如何にソフトエアガンといえど、至近距離から撃たれればそれなりに痛い。撃つ方だって別に相手を傷つけたいわけでは無いので、確実にヒットが取れる状況になった時、相手に降伏を勧告する際に使う言葉だ。
それを聞いた相手は、ゆっくりと両手を肩の上まで持ちあげた。
「隊長!」
辰巳が小屋を出ると、彬がほっとした顔で彼を呼んだ。
「制圧完了だ」
辰巳は事も無げに応じる。
その後ろから、少しだけ悔しそうな顔をした男が小屋から出てきた。「ヒットじゃないけど、ヒットでーす」と言いながら去ってゆく彼を見送りながら、辰巳は結局一度も撃たなかったハンドガンをホルスターへ戻すと、無線へ呼びかけた。
「全員、小屋に集合。モンキーもそろそろ下りてこい」
辰巳の呼びかけに、イヤホンからは三者三様の応答があった。