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ふじ分遣隊  作者: 高嶺の悪魔
第二話 交戦規定(しんらいかんけい)
12/28

その7

27


 参加者全員がセイフティまで戻ってきたところで、十分の休憩を挟んでから第二戦を始めますとスタッフがアナウンスしていた。

 ルールは先程と同じだが、今度は陣地を入れ替えて行うという。

 第一戦の最中に新たな参加者が到着したとのことで、人数調整のため両チームの代表が運営スタッフに呼ばれていた。


 弾の補充を早々に終えた彬は、他の参加者たちの装備を見て回っていた。

 夏休みに働いた分のバイト代が出たら買う予定のメインウェポンを何にするかまだ決めかねており、その参考にするつもりだった。

 どんなエアガンを使っているのかと聞けば、誰もが嬉々として愛銃を見せてくれる。

 やはりというか、人気があるのは彬が辰巳たちから借りているのと同じM4系だ。

 もっともアクセサリーやパーツなどが豊富だからだろうか。誰も彼も自分用にカスタムしているため、元の銃とは外見がすっかり変わっているのも見ていて面白い。

 もちろんそれ以外にもG36やP90といった定番から、日本のものでは旧軍の三八式、自衛隊の最新装備である89式小銃。変わったところではグレネードランチャーを持っている人もいた。

 電動、ガス、エアーといった動力源の違いに加えて、速射カスタムや本物に近い反動を楽しむことのできる機能が付いたものなど。結局、どれも魅力的過ぎて大した参考にはならないのだが、見ているだけでも楽しかった。


28


「それでは、第二ゲームを始めたいと思いまーす! 各チーム、先ほどとは別の陣地に集まってください! なお、休憩中に、新たに三名の方が途中参加しておりまーす! レッドチームに二人、ブルーチームに一人です! よろしくお願いしまーす!」


「少尉殿、今度は簡単にくたばらないでくださいね」


 スタッフに誘導されながら今度は北側の陣地へ集まった彬たちの近くで、同じレッドチーム側のJAF隊員である角田少尉が、丸岡軍曹から念を押されていた。


「うん。大隅中尉からも隊付き下士官の言うことを良く聞けって叱られたよ……初心者に少尉役をやらせるのは、そうやって出来るだけ長くゲームを楽しんでもらいたいからだって」


「今のところは楽しめておりますか」


 少し反省した様子の角田に丸岡が問いかける。


「もうばっちりさ、軍曹……ああ、そういえば、ずっと誰かとこんな会話がしてみたいと思っていたんだ」


 何やら感慨深げに漏らした角田の言葉を聞いて、彬はなるほどと思った。

 彬は軍隊についてそれほど詳しいわけではないが、好きな人はとことん好きなんだろう。

 そして、誰でもそうだが興味のあることを調べてゆくうちに、自分でもやってみたくなる。

 けれど、彼らの趣味である軍隊は興味本位で入れるようなものでもない。だから、同じ趣味を持つ仲間を集めてごっこ遊びをする。そのために集まっているのが、JAFというチームなのだろう。


「それではゲーム開始五秒前! よん、さん、に、いち、スタート!!」


 拡声器から響き渡るスタッフの大声に、先ほどと同じく弾かれるように陣地から飛び出してゆくプレイヤーたち。


「では、もう一度戦争といきますか」


「ああ。僕らの小隊は今回、西側の道を確保する。敵を排除しつつ、可能な限り多くの味方を敵陣に送り込むんだ。よし、行くぞ!」


 作戦計画を言い終えるなり、先頭を切って走り出す角田。


「だから! アンタが真っ先に突っ込んでいってどうするんですか!!」


 それを怒鳴りながら丸岡が追ってゆく。残る隊員たちは苦笑い半分、微笑ましさ半分といった様子で彼らの後に続いていった。


「ベアー、お前もついて行ってやれ。その銃なら、広い西側の道の方が活躍できるだろうしな」


 彼らのやり取りを聞いていた辰巳が苦笑交じりに剛明へ指示した。


「はいよ」


 同じものを見ていたらしい剛明も笑いの混じった声で応じると、銃を担いで駆けていった。


「俺たちはさっきと同じ東側から行くぞ。北側からなら、あっちの道の方が攻めやすいのは第一ゲームで分かったからな」


「了解」

「はーい」

「狙撃地点にも困らないしね」


 辰巳の言葉にそれぞれ頷いて、彬たちも陣地を飛び出した。


29


 彬たちが到着した時、東の小道は膠着状態に陥りつつあった。


「やっぱり、さっきのゲームでこっちから攻める時はどう動いたらいいか分かっている分、守りが固いですね」


 戦況を教えてくれたのは、先ほどのゲームで会ったPMCの若者だ。


「全員、上手いこと隠れてる。たぶんこっちに来てるのはベテランが多いんだろう。単純に撃ちあいたいなら西のほうが楽しいからな」


 隣にいたSWATがそうPMCの説明を補足してくれた。どうやらすっかり仲良くなったらしい。


「つまり、本気で勝ちに来ている人たちってことだね」


 このフィールドを良く知るSWATの言葉に、亮真がスコープを覗き込みながら言った。

 隠れている場所は分かるが、ヒットが取れそうな相手は一人もいない。


「どうにかして突破したいですね」


 そう言った彬に、辰巳も頷いた。


「そうだな。角田少尉も言っていたが、敵フラッグまで出来るだけ多くの味方を送り込みたいしな」


 先ほどと同様に少人数で敵フラッグまで迫ったとしても、あの手堅い岸辺が組んだ防御陣地に阻まれては時間切れが関の山だ。

 勝ち負けは関係ないにしても、フラッグを取るために全力を尽くさねばゲームとして面白くない。


「まあ、高所有利なのは変わりませんから。全員で押して押して押しまくりますか?」


 PMCがそんな提案をした時だった。


「はいはいはーい! お待たせしましたブルーチームのみなさーん!」


 膠着している戦場に、そんな明るい声が響いた。振り向いた彬が見たのは、チェストリグにありったけのポーチを括りつけたのであろう味方が大きな黒い鉄の塊に見えるものを担いでやってくるところだった。


「第一ゲームでここに来て、今こそコイツの出番だと思ったんですよ! 危ないんで離れてくださいねー!」


 そんなことを言いながら彼が構えたのはグレネードランチャーだ。

 本来はグレネードを遠くまで投擲するための兵器である。

 もちろんサバゲーなので本物ではないが、モスカートと呼ばれるカートリッジからガスの力で多数のBB弾を同時に撃ちだすことが出来る。


「行きます!!」


 そう宣言するなり、ぼすっという独特の発射音とともにぽっかりと空いた大きな銃口から白いガスと大量のBB弾が噴き出した。

 突然、空中に大量のBB弾が放り上げられたのを見て、敵味方双方から歓声が上がる。

 やはりこういう派手なのは男の子なら誰でも好きなのだろう。彬も思わず、おーと声を出していた。


「すっげえ」

「派手だねぇ……」


 彬が目を輝かせている横で、亮真が呆れたように呟く中。放物線を描きながら打ち上げられたBB弾がざあざあと音を立てて敵陣へ降り注ぐ。

 すると、そこら中の物陰から一斉にヒットコールが連続した。


「道が空いた! 今だ、攻めるぞ!」


 冷静にグレネーダーの射撃を眺めていた辰巳が鋭く叫ぶと、周りにいたプレイヤーたちが一斉に動き出す。


「まだまだ行きますよー!」


 一気に注目を集めたグレネーダーが楽しそうに二発目をぶちかました。

 楽しそうではあるが、どことなく自棄になっているように見えなくもない。

 彬は先ほどの休憩中に話を聞いていたので、なんとなくその理由は察することが出来た。

 彼のグレネードランチャーは何と一度に四十発ものBB弾を撃ちだすことが出来るらしい。しかも、それが六連射できるという。

 考えなしに使うとガスと弾代だけで破産しそうだよとぼやいていた。

が、ここは戦場。そんなことを気にしてはいられない。

 景気よく次々とグレネードを発射する彼は、今やこの戦場の主人公だ。

 もちろん狙いなんてまともにつけられないので、敵だけでなく結構な数の味方を巻き込んでいたりするのだが。誰も気にしている者はいない。

 撃たれたプレイヤーも、それから逃げているプレイヤーも、歪な形をしたBB弾の花火が打ちあがる度に歓声を上げ、爆笑しながらヒットコールを叫んでいる。


「誰かアイツを止めろー!!」

「グレネーダーを援護だ! このまま突っ切るぞ!」

「退け退け! 駄目だこれは!」

「GO! GO! GO!!」

「すいませーん、記念のお写真いいですかー?」

「あっ、じゃあちょっとカッコつけて撃ちますね」


 俄然盛り上がってきたゲーム展開に、プレイヤーたちは敵味方関係なくお祭り状態だ。

 なお、この後。彼の活躍を讃える有志達によりグレネーダー基金なるものが立ちあげられたりした。多くの参加者たちからガスと弾代の援助を受け、グレネーダーの彼は終日、グレネードランチャーをぶっ放し続けることができたとか。


「よし、俺たちも押し込むぞ」


 グレネーダーの活躍によって、味方が一気に坂を駆け下りてゆくのを見て、辰巳が言った。


「ホークはそこから援護。ジュニア、ドロシー、着いてこい。あのグレネーダーの射撃に巻き込まれるなよ」


「りょーかい」

「了解です」

「はい、隊長」


 辰巳の指示の下、ふじ分遣隊が攻勢に移ろうとしたその時。

 全員が付けている無線機に、一つの通信が入った。


30


『隊長、こちらベアー。西側の戦況がかなり悪い。結構押し込まれてて、このままだとフラッグ陣地まで突破されるかも。増援に来れないか? ちなみに、角田小隊は指揮官以下全員が敵特火点への総攻撃を敢行し、壮絶な戦死を遂げた』


 剛明が最後に付け加えた情報に、あーあという顔を見合わせる彬と亮真。 


「現在位置は?」


『とりあえず林の中に身を隠してる。西の道を見渡せる場所だ……っと、ちょっと待ってくれ』


 辰巳の質問に答えていた剛明が唐突に言葉を切った。

 少し慌てたのだろうか。無線の操作を誤って、通話ボタンをロックしてしまったらしい。この状態だと、こちら側から声を送ることができない。

 彬たちのイヤホンから、剛明のM249の射撃音が響く。それを追うようにバチバチとBB弾が木々に当たって弾ける音が聞こえた。どうやら、交戦しているらしい。

 彬たちはひとまず、剛明が敵を片付けるのを待った。そうすれば通話をロックしていることにも気づくだろう。

 そう思っていたのだが。何やら、様子がおかしい。


『おいっ! 今のはヒットだろ! 何してんだお前ら……!』


 剛明の怒鳴り声が聞こえ、彬たちは思わず顔を見合わせた。辰巳が怪訝そうな顔でイヤホンを耳へ押し付けている。

 そこへ、今度は剛明の叫び声が届いた。


『いってぇっ! クソ、撃たれた、畜生! ……あっ』


 ようやく通話ボタンをロックしていたことに気付いたらしい。そこで一度、剛明からの通信が切れた。


「おい、ベアー、どうした。何があった?」


 辰巳が冷静な声で無線に問いかけた。


『撃たれた。撃たれたんだが……隊長、どうすればいい?』


 帰ってきたのは途方に暮れたような声だった。

 それに再び、何があったのだろうかと彬たちは顔を見合わせる。

 辰巳もいまいち、状況が把握できていないようだ。難しい顔で無線の通話ボタンに指を掛けたまま動かない。


『……隊長、一度、こっちへ来てくれないか?』


 どうするのだろうと思って彬が見ていると、剛明からそんな通信が入った。

 辰巳は直接応答せず、彬たちに目配せした。チームの全員がそれに頷きを返したのを見て、彼は近くにいたロシア装備の味方プレイヤーに声を掛けた。


「すまん。西側がかなり押し込まれているらしい。助けに行ってくる」


 あのグレネーダーのおかげで、こちらの戦況はかなり優位に進んでいる。少しくらい攻撃の人数が減っても大丈夫だろう。ロシア装備は親指を立てて辰巳に応じた。


「急ぐぞ」


 短く言った辰巳に率いられ、ふじ分遣隊一行は林へと駆けこんだ。


31

 

 彬たちが剛明を発見したのは、西側の道から少し林へ入り込んだところにある小さなバラック小屋を模した障害物の中だった。

 戦いは東西の道に集中しているらしく、林の中は静かなものだ。他のプレイヤーどころか、スタッフの姿も見当たらない。

 しかし、かといって警戒を怠るわけにもいかない。

 彬、亮真が周囲を警戒し、充希がそのバックアップとして控えている傍ら、辰巳は小屋の中で剛明から事情を聞いていた。


「つまり、ゾンビか」


 二、三人が入ったらいっぱいになってしまうような狭い小屋の中から、忌々しそうな辰巳の声が響く。


「ゾンビって、なんですか?」


 何やら怒っているらしいその声に少し驚きつつ、彬は隣の亮真に尋ねた。


「何って……ジュニア、サバゲーのルールについても調べてきたんじゃないのかい?」


 ちょっと呆れた声で訊き返されて、彬は気恥ずかしそうに亮真から目を逸らす。


「ええと、その。ゲーム中での動き方とか、射撃の技術ばっかり調べてて……」


 少しでも辰巳たちに追いつこうと思って、ベテランサバゲーマーのブログや、元自衛官、警察の特殊部隊員が銃の扱い方について解説している動画まで見漁っていた彬だったが、ルールに関しては彼らから教えられたことだけしか知らなかった。

 

「確かに。ジュニアにはレギュレーションに合った道具の使い方なんかは教えたが、こういう違反行為についてはしっかり教えてなかったな」


 小屋から顔を出した辰巳が、そんな彬を弁護するように言った。


「まあ、そもそもこれは教える以前の問題だしねえ」

 

 やれやれと肩を竦める亮真に辰巳は頷く。


「そうだ。それに、そういう発想が出てこないってのは良い事だ」


「隊長の教え方の賜物ですね」


 充希に一言に、辰巳は咳払いをしてから彬に顔を向けた。


「ゾンビってのは要するに、撃たれたのにヒットコールせずにゲームを続行する行為だ」


「え、それじゃあゲームにならないじゃないですか」


 なんでそんなことを、と聞き返した彬に、辰巳は深刻そうな顔で(もっとも見えているのは目元だけだが)頷く。


「そうだ。だからサバゲーマーからは最も嫌われる反則行為だな。あまりにも悪質な場合はゲームに参加できなくなったり、フィールドから追放されることだってある」


 そこまで説明してから、ただし、と辰巳は付け加えた。


「ゾンビってのは誰でもやりかねない行為だ。どんなに慣れたサバゲーマーでも、ゲームに熱中し過ぎて弾が当たったことに気付かないことだってある。それと、ゾンビ行為を発見したからといって当事者同士で解決しようとはしない方が良い。撃っている方からは当たっているように見えて、実は当たっていないということもあるからな」


 そんなお互いの思い違いから、当たった、当たっていないという言い合いになり、最後には喧嘩に発展することもしばしばあると、辰巳は教えた。

 だから、ゾンビ行為を発見したからといってその場で指摘するようなことはしない方が良い。単に被弾に気付いていないだけなら、気付くまで撃てばいいだけだ。

 それでも相手がヒットコールをしないのであれば、その日のゲーム主催者、今日のような定例会であれば運営スタッフに報告して解決してもらうべきである。

 その教えに彬がなるほどと頷いたのを見てから、辰巳は小屋の中にいる剛明へ向き直った。


「ベアー、確認するが、確かに当たっていたんだな? 相手が被弾に気付いていない可能性は?」


「アイツらは障害物も何もないところをまっすぐ突っ込んできたんだぞ。弾が身体に当たって跳ね返るのも見えた。それに、撃たれたのに気付かないだって? 俺のミニミのフルオート喰らって?」


 噛みつくように言い返した剛明に、辰巳はむっつりと黙り込んだ。

 確かに、剛明の銃で撃たれて気付かないというのは可能性としてかなり低い。

 その上、剛明の射撃の腕は確かだ。相手に弾が当たったのを確認したら、それ以上攻撃を加えないように射撃を止める技術もある。どうやら、今回はその気遣いが仇にあったようだった。

 話によると、相手は二人組だったという。物陰に隠れもせずに歩いてきたところを正面から銃撃して、ヒットを確認したので射撃を中止した。しかし、その途端に二人組が突っ込んできて、至近からBB弾を撃ち込まれたということだった。

 撃たれたのは顔面だ。彼らは明らかにわざと、顔を狙ってきたという。

 幸いにも目と口元はしっかりと防護しているため大事には至っていないが、弾の当たった頬と額がひりひりと痛むそうだ。


「どうする、隊長?」


 話を聞き終えたところで、黙り込んでいる辰巳に亮真が訊いた。

 腹立たしそうな彼の声に、辰巳は静かに顔を上げると答えた。


「……たとえ、相手が反則行為をしていたとしても。ヒットはヒットだ。セイフティに戻れ、ベアー」


「やっぱそうだよな」


 辰巳の言葉に、分かっていたけどよと剛明はがっくり肩を落とす。

 

「だが、その前に。相手の特徴を教えろ。本来ならヒットした者から情報を聞き出すのはルール離反だが、ゾンビ相手だ。そのくらいは大目に見てもいいだろう」


「スタッフに報告しなくていいの、隊長?」


 訊いたのは亮真だった。

 確かに彼の言う通りではある。解決はゲームの主催者に任せるべきだと今、彬に教えたばかりなのだから。

 しかし、辰巳はそれに小さく首を振って応じた。


「まだその二人が悪質な違反者だと決まったわけじゃない。さっきは目撃者がベアー一人だけだったから、魔が差したということも十分あり得る。俺たち四人が見ている前でなら、ヒットを認めるかもしれない」


「どうだろねえ……もし仮に隊長の言う通りだとしても、人が見てないからヒットコールしないような奴らなんてろくでもないと思うけど」


 亮真は不満げだ。

 それでも、辰巳はまず確かめるべきだと思っていた。

 違反者についてこっそり教えれば、スタッフは目立たないように対処してくれるだろう。

 しかし、いくら隠しても誰かは感づくかもしれない。

 辰巳は東側の道での戦いを思い出した。派手に暴れるグレネーダー。それを援護する味方プレイヤーたち。BB弾の雨から笑い転げて逃げ惑う敵チーム。


「せっかくみんな楽しんでいるんだ。そこへ変な茶々を入れて、雰囲気を悪くしたくないし、させたくもない」


 せっかくの休日。今日のゲームを楽しみにしてきたプレイヤーは多いだろう。

 店側だって、せっかく大入りになった定例会だ。参加者には出来るだけ楽しんでもらいたいと考えているはず。

 もしも、剛明を襲った二人組がそんな彼らの前でゾンビ行為などしでかしたら。最悪、今日のゲームは台無しになってしまうかもしれない。

 それだけは、何としても防ぎたかった。


「ベアーの仇は俺たちで討つ。そのゾンビどもがヒットを認めるまで弾をぶち込んでやる。それでも駄目なら……まあ、仕方ない」


「……分かったよ。隊長がそういうのなら」


 ゴーグル越しに見える辰巳の真剣な眼差しに亮真は肩を竦めて納得した。


「二人も、それでいいか?」


 辰巳が確認するように彬たちへ顔を向ける。


「はい」


 彬は気を引き締めてM4を構えなおしながら応じた。その横にいる充希が辰巳へ異議を唱えるはずがない。彼女は背筋を正しながら、もちろんですと目を輝かせていた。


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