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95 ブンボン冒険者団体連盟です!

 ブンボン冒険者団体連盟は繁華街の中心地、広場の近くにあった。

 本部施設はまるで宮殿の様な大きさで、見上げる四階建ての白亜の建物からは今も冒険者たちがたくさん出入りしている。


「ここが冒険者団体連盟の本部なのっ」

「ティクンちゃんがいなかったら、僕はたぶん迷子になっていたや。よく場所を知っていたね?」

「そのう、わたしは下町の育ちだから……」


 僕はクラスを代表して卒業検定の演習に向けて、ダンジョン攻略の申請にやって来た。

 卒業検定を受けるクラスが冒険者ギルドに見立てられて行動する目的は、僕たち訓練生が冒険者ギルドというものを深く知るためだった。

 訓練学校じゃ冒険者の基礎技能は勉強してきた。

 その総仕上げが、冒険者ギルドというものがどういう風に運営されているか学ぶ事なんだね。


 最初はシャブリナさんが案内と代筆を申し出てくれたけれど、別の役目がある彼女に代わって案内してくれたのはティクンちゃんだ。


「それに、この近くの教会堂で回復職の修行をしていたから。この辺りは土地勘もあるのっ」

「そっかあ、そうだったんだ。じゃあ今度、お店を回る時は案内してもらおうかな?」

「コクコク、任せて下さいっ」


 睨めっこしていた地図を腰のポーチに仕舞い込みながら、さっそく僕らは入口から中を覗き込む。

 雰囲気は訓練学校の受付にも似ていたけれど、それよりずいぶんと広くて大きな印象だ。

 いくつもある受付にはゾロゾロと様々な格好をした冒険者たちが並んでいて、とても雑多な印象だった。


「ええと、ダンジョン攻略の申請はどこでやるのかな……」

「セイジくん、あっちが新規攻略の申請受付って書かれていますッ」

「ありがとうティクンちゃん。最近読み書きの練習はしているんだけど、まだまだわからない文字ばかりなんだ」

「フンフン。わたし、すぐに読み書きが覚えられる特別な方法を知っているの。セイジくんも、それをすれば読み書きの勉強が捗ると思いますっ」

「そんな方法があるんだね、後で教えてもらおうかな?」

「コクコク。わかりましたッ」


 ティクンちゃんとそんな会話をしながらも、行き交ういかつい冒険者さんたちを避けながら「新規攻略の申請受付」と書かれたらしいカウンターに向かった。

 今でも前人未到の新しいダンジョンは、大小関係なく発見されている。

 でもさすがに連日それが続くわけじゃないし、攻略申請のためにやってくるギルドも今はいないみたいだ。

 そのままカウンター前までやって来ると、優しい感じのお姉さんに僕は質問するんだ。


「ブンボン冒険者団体連盟へようこそ。本日はどういったご用件で?」

「ええと、僕たちは冒険者訓練学校から来ました。卒業検定の演習のために、新規ダンジョンの攻略申請の説明を受けたいんですけど……」

「ああ、少年は学校の訓練生なのね。それなら、ちょっと待ってね」


 優しい感じのお姉さんは僕に対してニッコリ微笑むと立ち上がり、カウンターの奥にある事務所らしい場所に小走りで走っていった。

 訓練生向けに何かの資料を取りに行ったのかな?


「柔らかい態度のひとでよかったや」

「……フンフン。胸がぺったんこだったので、親近感を覚えますッ」


 僕らの隣に並んでいる列では、受付の厳めしい顔をしたおじさんが、ぶっきら棒な態度で冒険者のひとたちをあしらっている。

 あんな調子だと僕は緊張してしまい、きっとロクな質問をする事ができなかったはずだ。

 なんて安堵を覚えながらティクンちゃんと顔を見合わせて苦笑をしていると。


 事務所からノソリと顔を出したのは、ヒョウみたいな顔をしたおじさんだ。

 見上げる様な毛むくじゃらの巨漢でしかもヒョウ面、けれども眼元と唇がどういうわけか艶っぽい。

 お化粧をしている?!

 それが腕組みをしながらギロリと僕らを睨みつけたんだ……


「ふうん、坊やが冒険者訓練学校から来たというのは本当なの?」

「は、はい。僕はセイジ訓練生で、こっちがティクン訓練生ですっ」

「……コ、コクコク」


 巨漢な見た目に反して声は黄色くで高い。とても違和感だ……

 そんなヒョウおじさんに、完全にティクンちゃんはビクンビクンと背中をしならせて恐怖している。

 いつもみたいに僕の背中に逃げ込みたいんだけれど、怖くてそてすらもままならないみたいだ。

 ジョビジョバしちゃわないかなっ。


「そうなの。それでゴリちゃんはどうしているのかしら?」

「お、お昼休みだったかな。ゴリラ教官、デザートのバナナを食べている時は元気にしていましたけど」

「フンフンッ」

「……あの子、おやつのバナナを食べる時間はある癖に、わたしんところには顔を出す時間も無いって言うの?! いっぺんブチかましてやろうかしら!!!」


 突然、野太い声に変質したヒョウおじさんが、バチンとカウンターを叩いて怒り出すじゃないか。

 みんなの注目が僕らに集まるし、たまらずビクンと飛び上がったティクンちゃんは、その場で背筋を痙攣させている。

 これは不味いと僕が焦るよりも速く、


「ヒッ、あっ…………!」

「「「?!」」」


 衆目が集まる中。

 モジモジ少女のお股にある泉から、美少女聖水が湧き出す瞬間を僕は目撃してしまった。


「……見ないで、そんな眼でわたしを見ないでえっ!!」

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