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54 廃坑ダンジョンに向かいます!

 後期訓練課程を無事に修了した僕たちだ。

 そうして、いよいよ本物のダンジョンを使った冒険者訓練の総仕上げ、実習訓練へと突入する事になった。


「うわあ、すごい数の馬車が練兵場に並んでいるね!」


 ところ狭しと整列した荷馬車の中に、次々とキャンプ道具が運び込まれていく。

 僕らも自分たちの寄宿舎から日用品をまとめて、あてがわれたその内のひとつに手際よく放り込んだ。


「実際のダンジョンにしばらく入って訓練するからな。セイジ、貴様も忘れ物が無い様にしっかり確認しておくんだぞっ」

「下着と服と冒険者道具の一式、それから非常食とおちんぎん袋もOKだね」

「よし、では乗り込むとしようか。馬車の荷台には段差があるから手伝ってやろうか?」

「いいよ、このぐらい冒険者ならひとりでできるからっ」

「アッハッハ」


 まるで母親の様に世話を焼いてくれるシャブリナさんに、ちょっとだけからかわれながらも馬車に乗り込んだ。

 シャブリナさんは段差のある荷台なんか何の問題も無いという風に、片手を付いて華麗に飛び乗る。

 僕もそれぐらい簡単にできる様になりたいけれど、残念ながら少し無様だったかもしれない。

 ティクンちゃんも必死で乗り込もうとしていたけれど、自分ひとりでは無理だったらしく、僕とシャブリナさんで引き上げてあげた。


「おーっほっほっほ! 野蛮なシャブリナさんとは違いまして、わたくしは文明の利器を遣いますわっ」


 一方のドイヒーさんはどこかから踏み台を持ってきて、優雅に荷台へ乗り込んだ。

 最初から踏み台があるなら教えてよ?!


 こうして十数台の馬車列に乗り込んだ冒険者見習いの僕たちは、ミノ教官の乗った馬に先導されてブンボンの街を離れる事になった。


「今回はどんなダンジョンに向かうのかな?」

「わたくしたちはインギンさのギルド《ビーストエンド》とダンジョン攻略を経験していたけれど、訓練学校のみんなははじめての経験ばかりですわ。さすがに初心者を連れて危険度の高いダンジョンに向かう事はないと思いますけれども……」


 ゴトゴトと荷馬車に揺られながら、黒くて大きくて禍々しい杖を抱きしめてドイヒーさんが思案した。

 すると他人の噂話が大好きなティクンちゃんが、おずおずと上目遣いで僕たちにこう語りかけるのだ。


「そのう。教官たちの立ち話では、現在《さざめく雄鶏》というギルドが攻略中の廃坑ダンジョンだと耳にしましたっ」

「ほう、《さざめく雄鶏》と言えば巷でも知れた屈指のギルドではないか」

「シャブリナさん、あなたそのギルドの事を存じておりますの?」


 どうやらシャブリナさんはそのギルド名にピンとくるものがあったらしい。

 記憶を辿る様な仕草をしながら、馬車の揺れに合わせて大きな爆乳を小刻みに揺らしつつこう説明してくれた。


「わたしが騎士団の任務で治安維持に当たっている時に、巡回立ち寄り先の酒場でよく見かけたことがある」

「酒場でよく見かけるという事は、よほど景気がよろしいのですわね」

「まあそういう事になるな。どこかの迷宮を踏破した後には必ず祝勝会をやっていたし、ついでにこちらも有名な《黄昏の筋肉》と鉢合わせをすると、よく口論から騒ぎを起こしていたものだ」


 名の知れた冒険者と言うのは概して荒くれ者揃いで、またそうでなければ危険なダンジョンに挑むのを躊躇ってしまう。

 まともな神経の人間は、危なっかしい迷宮に入ろうなんて思わないからね。


「けど、やり手のギルドが攻略中のダンジョンをよく貸し出してくださいましたわねえ? インギンさんの話ですと、普通は所有者からダンジョン攻略の独占権を期限付きで購入すると申しておりましたし」

「あの。《さざめく雄鶏》のギルドマスターは、元ゴリラ教官の同僚だと聞きましたっ」


 不思議そうにしていたドイヒーさんの疑問には、ティクンちゃんが応えてくれた。

 馬車が揺れるたびにビクンビクンと体を小刻みに揺らしているから、もしかしたらおトイレを我慢しているのかも知れない。


「そのう、わたしたちが実際に使うのは、攻略がある程度進んでマッピングがだいたいわかっている辺りだそうですっ」

「それなら納得だな。インギンさんが後期訓練課程の特別教官をやっていた時みたいに、むかしのよしみでダンジョンを間借りできたのかも知れないしね」


 モジモジしながらティクンちゃんが言い添えてくれたので、僕らはなるほどと頷いて見せた。


「ふむ。古代の廃坑がダンジョン化したタイプの迷宮という事は、明確に階層わけされた様なタイプではないんだろうな」

「授業では説明を受けた事がありましたけれど、わたくしたちが実際に眼にした事が無いタイプのダンジョンという事ですわね」

「様々なタイプを訓練学校の間に経験させておきたいという事だろう。ふむ、廃坑タイプか……楽しみだな!」


 ドイヒーさんやシャブリナさんは、まだ見ぬ廃坑ダンジョンに気分を良くしていた。

 僕らは恐らく、メイン攻略ルート以外の鉱山の側道にいるモンスターやギミックを処理する事になるのかな?

 そんな事を思案していると、隣に座っていたシャブリナさんが揺れるお胸を僕の顔に押し付ける様に、肩に腕を回してきたんだ。


「景気の良いギルドという事は、おちんぎんもタップリ出してくれるはずだ」

「ふももも、くるひいよヒャブリナはんっ」

「何だセイジ、待望のおちんぎんだぞ! 貴様も嬉しいか、わたしも嬉しいぞ。アッハッハ!」


 そんな事されたら、おちんぎん以外のところが苦しいってば!

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