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52 長身人型女性モンスターです! ※

 今回のパーティーメンバーは全部で六名だ。

 最初から弱気に支援職を志願していた様な僕とは違って、他のみんなは最初からいかにも冒険者らしいアタッカー職を志願していた。

 だからそれなりに武器の扱いには多少の心得があるところは安心だね。

 太鼓腹が邪魔をしてすぐに疲労困憊になるデブリシャスさんを除いてね……


「あそこにコウモリのモンスターがいたぜ!」

「任せろよ、俺の剣で叩き斬ってやるッ」

「そっちだぞ、そっちからももう一羽飛び出してきやがった!!」


 僕もモンスターと遭遇した時には背負子を下してモーニングスターを構え、待ち構えて力一杯の一撃を見舞ってやった。


「いっけええ!」

「セイジさんやるじゃねぇか!」


 スライムの時はまるで手応えが無いと思っていたけれど。

 例えばコウモリの姿をしたモンスターや、人間のあかちゃんが悪い顔をしたようなインプみたいなモンスターが相手だと、何とかダメージが通っているのを感じた。


「ハアハア、それより前。ランタンをかかげて光の当たらない死角を作らない様にしないと」

「今だいたいどれぐらいの時間が経過したんだ?!」

「まだ砂時計は行きがけの半分も落ちきってないぜ、よし荷物を纏めて前進だ!」


 本来はこんなことはあり得ないんだろうけど、モンスターパレスには前にも参加した事があるからどこかに安心感があった。

 パレスの手前にあるいくつかの部屋は、しらみ潰しに突破さえしておけばモンスターに囲まれる事はない。

 でもさすがに奥の階層に進めば、ボスモンスターの配置も含めて模様替えをしているらしく、ここは慎重に進む必要がある。


「前回もミノ教官がボスに扮して待ち構えていたからな」

「へへっ。けどよ、本物のダンジョンと違って入口の説明文は俺たちでも読める文字で書かれているからな」

「まあセイジさんは賢者らしいから、古代文字だって読めちまうから意味ないんだけどなっ。な、セイジさん?」


 アタックの最中にビッツくんに茶化されて、冗談を言い合って笑う余裕もあった。

 でもその余裕があったおかげで、僕らは気付いたこともある。


「……おい待った、見ろよこのワイヤー」

「どうした、みんなその場を動くな!」


 モンスターパレスの階段を先に進もうとしたタイミングで、合同チームに合流した仲間のひとりが警告の言葉を発した時。

 全員があわてて動きを止めて、暗がりの中でランタンを掲げて眼下をまじまじと観察したのだ。

 そこにはブーツの先をちょうど引っかけられる高さにワイヤーが張られていて、きっとこれに足をかければけたたましい音が疑似ダンジョン内部に響き渡るはずだ。

 そのワイヤーは決して運動神経がいいとは言えない僕の足先に存在していたのである。


「ヒッ?!」

「モンスターは音や匂いに釣られて集まってくるというぜボウズ。おい、そのワイヤーを解錠してやれッ」

「キャンプに設置した警報装置の取り扱い。あれってもしかして僕たちが自分の身を守るためだけじゃなくて、罠の解錠をするための勉強の意味が含まれていたのかもね……」


 デブリシャスさんに声を掛けられて。

 よし来たとばかり、ビッツくんや他の仲間にワイヤーの設置されている先を確認してもらいながら僕は生唾を飲み込んだ。


 下手をすれば僕のせいで、不用意にモンスターをかき集めてしまうかもしれない。

 僕たちは支援職の寄せ集めチームだから手強いのを相手にする事はないと聞かせられていたけれど……


「教官たちの考える事だからなあ……」

「だな、あの手この手で僕たちのために歓迎の手段(・・・・・)を講じてくるに違いないぜセイジさん!」


 ピーンと張ったワイヤーを慎重に切断してみせたビッツくんが、何やらよくわからない警報装置の類を手に持ちながら僕のつぶやきに返事をしてくれた。

 するととなりで作業を手伝っていた仲間のひとりが、ランタンに照らされた表情をニッコリ笑顔から引きつったものにみるみる変化させるじゃないか。


「ど、どうしたの?」

「……おい、天井からボタボタはみ出してきているのはスライムじゃねえのかっ」

「このヘンテコな装置を解除すると、上からスライムが浸透してくる仕掛けになってたのかよ?!」


 安堵をしたのもつかの間に、僕たちはあわてて戦闘態勢に突入だ。

 鈍器を持っているのは僕とそしてビッツくんだ。


「チッ俺たちの武器は普通の長剣だ」

「それなら剣の腹を使って打ち付ける様に叩けばいいんじゃないかなっ。僕とビッツくんは鈍器があるから相手する、他のみんなはそんな感じで対処してっ!」

「了解だぜセイジッ」

「わかった坊主」


 みんながすぐさま返事を返した。

 待ってましたとばかり、しゃがみ込んでいた彼女は勢い立ち上がると腰に吊っていた予備の武器である鈍器を引き抜く。

 次々ボタボタと側面や天井からあふれ出してくる緑色の蛍光色をしたスライムめがけて、僕も勢いよくモーニングスターを叩きつけた!


「喰らえ訓練の成果!」

「オレ様の新兵器のパワーを思い知れっ」


 何だ、いけるじゃないかっ!

 後期訓練課程で練習台にしていたスライム叩いて300回訓練の時とは違って、思ったよりこちらも力強くブヨンブヨン弾力のあるスライムにめり込んだ。

 もしかすると色違いによって、スライムのレベルというかクラスが違うのかも知れない。

 無色透明の養殖スライムは色無しだから一見すると弱そうだけれども、もしかすると練習のために耐久値を高めた品種改良されたやつだったのかも?


「おい、何匹か奥の方に逃げ出しているぞ」

「みんな深追いしちゃだめだよ、何かの罠がまたあるかもわからないからっ」

「了解だぜ、背後も気を付けろ。時間は?」

「まだ砂時計の砂がいったん落ちきるぐらだ。時間はあと半分タップリあるぜ!!」


 デブリシャスさんの言葉に僕がみんなへ警告を発した。

 他のメンバーも注意を怠らない様にしつつ、自分たちを落ち着かせながら階段の上へと移動する。

 

 よし、僕も何とか役に立っていることを仲間に証明しているはず。

 本当はシャブリナさんやドイヒーさんたちの前でこんな姿を見せたかったけれど、卒業検定を終えて本物のダンジョンに潜る時には見せられるよね。


 そして次の階層にやって来たところで、ガタゴトとくぐもった音を僕らは耳にした。


「……お、何だ今のは? 奥の部屋の方から何か物音がしてないか」

「金属が床の石畳を叩いた様な音だったな。ここから先ははじめて入るエリアだから慎重にいかねぇと……」

「わかってる。セイジさんどうする」


 この扉の中からだぜ?

 スカウト職のビッツくんが、みんなに先んじてその場所へ進み。

 ゆっくりと周辺警戒をしながら一歩一歩と前に進んだところで、僕らは鉄の扉に閉ざされたひとつの部屋の前にやって来た。


「扉には警告も、何も仕掛けみたいなものはないみたいだね」

「それなら合図で扉を蹴り飛ばして、一緒に雪崩れ込む事にするか」

「そ、そうしようか。身軽なビッツくんとムキムキのお兄さんが最初に突入して部屋の左右に。次のおふたりは並んで部屋の中央に。僕とデブリシャスさんは追いかけて中に突入するという事でいいかな」

「よしわかった。それでいこう」


 短くやり取りをしながら、体力自慢らしいムキムキのお兄さんとビッツくんが合図で鉄の扉に体当たりをした。

 いっせいのでドン!

 そのまま予定通りに僕らは扉の向こうに雪崩れ込んだのだが……


「アッハッハ、よくぞここまで到達する事ができたな貴様たち! だが残念ながら簡単にこの先に進ませるわけにはいかないぞっ。ここを通りたくばセイジを置いて……いや、相応の対価を払ってもらわなくちゃならないな。さあ来い!」


 そこには虎柄のマイクロビキニアーマーを装着した長身人型女性モンスターが、金棒みたいな鈍器を肩かつぎに仁王立ちをしていたのだ。


「げぇ巨人族の女だ。頭から角まで生えてるぜ?!」

「お、臆するなお前たち、どうせ教官か誰かが別の魔法陣から演じてるまがい物のモンスターだっ」

「そういうサービスはおっぱいとおちんぎんだけにしてほしいぜ……デカいゴックン」

「こっちは六人だ、みんな連携して取り囲め!」


 見上げる様に巨大な長身人型女性モンスターこそ、きっとゴリラ教官が警告していた人外鬼畜だけが敵じゃないという意味だ。

 人間タイプのモンスターで自分たちにどこか似ているからと言って、躊躇をすればそれは死を意味する。

 だけれども……


「シャブリナさん、ここで何をしているの?」

「ひ、人違いだセイジ。わたしは長身人型女性モンスターのオーガ族だ!! さあかかってこいっ」


 僕のテントに不法侵入をした罰で、ボス級モンスター役を命じられたらしいシャブリナさんは、ブンと大きな金棒を振り回しつつ、その豊か過ぎる巨大なお胸も振り回した。


挿絵(By みてみん)

おっぱいブルンブルン♪

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