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14 訓練学校の実技です!

 午後からの授業は実技の時間が待っている。

 僕たちは練兵場に集まると、木剣を使って素振りや約束稽古の練習に励む事になった。

 素振りをする時、最初は長剣サイズの大きな木剣だった。

 それが今は僕には体的に大きすぎるからと、途中から短剣を持たされてしまった……

 何だか子ども扱いされている様で釈然としないものがあるよ……


「まったく、どうして魔法使いのわたくしまでこんな事をしなくてはなりませんの?!」


 僕の隣では、同じ様に不満の色を顔に浮かべたドイヒーさんがいた。

 力いっぱいブンブンと長い剣を振っている姿は、僕より遥かに様になっているから悔しい。


「それは貴様の様な人間がいるからだろうな」

「何ですって!」

「自覚がないのか? まったく呆れたものだな……」

「どど、どういう意味ですの?」

「初日のダンジョン体験の時から、魔法攻撃を連発して魔力切れを起こしていたのはどこの誰だったかなドイヒー。ん?」

「きいいいっ」


 シャブリナさんの指摘に恨めし気な顔をして、振り抜く木剣に力が入る。

 そんな感じでみんなで数十回の素振りを繰り返したところで、休憩を挟む。

 その時を見計らってゴリラ教官が大声を張り上げた。


「いいか、冒険者は心に武器を持て。支援職であっても余裕があれば戦闘には参加するし、たとえ魔法使いであっても魔法が常に使える状況にあるとは限らない」


 僕もティクンちゃんも支援職の立場だけれど、真剣にその言葉に傾注する。

 回復職のティクンちゃんは普段は魔法の発動体に魔導書みたいなものを持っているけれど、ちゃんと護身用の短剣は身に着けているしね。


「魔法使いの場合は特に魔力切れを起こしている絶体絶命のピンチもあるし、魔法を使うのが不適切な環境というのも考えられる。戦士であっても、様々な武器を使いこなせるにこしたことはない。どの様な状況でも不屈の闘志を持ち、心の武器を折らないことが大事だ!」

「「「わかりました!」」」


 まるでドイヒーさんの心を見透かした様な教官の言葉だ。


「また近接戦闘の技を習得すれば、いざという時に魔法職や回復職、支援職の人間も緊急回避する事が身に付く。やって損のない訓練だという事を忘れない様に。どうだ、冒険者は最高だろ! んっ?!」

「「「やっぱり冒険者は最高だぜ!」」」


 何だかんだで教官はこのセリフを言わせるために、うまく訓練生たちを誘導しているねっ。

 そんなこんなで、不満顔のドイヒーさんもブスリとしたまま黙々と素振りを打ち込んで、ちゃんと約束稽古でも近接戦闘の練習に励んでいた。


「僕もせめて自分の身を守れる程度のスキルは身に付けないとな」

「コクコクっ」

「ティクンちゃんも一緒に頑張ろう。いくよ!」

「あのう、はいっ」


 とりあえず体格の近いティクンちゃんとそう話し合って、約束稽古に取り組んだ。

 あらかじめ決められた約束の攻撃手段を、相手が受けたり避けたりする練習だ。

 素人の僕たちはあまり素早くそれをする事が出来ないけれども、馴れてたひとだともの凄いスピードで攻守を入れ替えながらこなしていく。


「ハアハア、いくよっ」

「ひゃ、駄目です駄目ぇ」


 こんな感じでしばらく相手を変えながら剣の刺し込みや回避の動きを勉強していると。

 ゴリラ教官がシャブリナさんを捕まえて、長剣と盾を使った本格的な戦闘の実演をしてくれる事になった。

 興味津々の僕たち訓練生は、自然と教官とシャブリナさんの前に車座になって集まる。


「あのノッポの姉ちゃんって、女子供ばかりの班のリーダーだったか?」

「何でもブンボン騎士団の所属らしいぜ。すでにモンスターと戦った経験もあるとか」

「すごいなおい。あと胸もすごいぜ……」


 ベテランの教官を前にしても臆する事がないシャブリナさんは、自慢の胸を張ってニヤリとしていた。

 

「シャブリナ訓練生はブンボン騎士団の所属だったな。容赦なく攻撃をしていくがいいか?」

「もちろんだ。わたしは騎士団でも対人戦闘ではそうそう負けた事が無いんでな、教官どの相手でも一歩も引くつもりはないぞ!」

「面白いぜ。教官相手に戦いを挑んだ事を後悔させてやるっ」


 ゴリラ教官はそんな売り言葉に買い言葉を飛ばしながら剣を引き抜く。

 いちおう本物の剣ではなくて訓練用の刃引きだけれど……

 さっきまで僕たちが素振りや約束稽古で使っていた木剣じゃなくて、鉄の長剣だ。


「大丈夫かなシャブリナさん。確かに経験もあるし強いけど、相手は教官だよ?」

「コクコク」

「面白い事になってきましたわね。対人戦闘のスキルならば騎士見習いのシャブリナさんの方が上、経験と筋力ならばゴリラ教官の方が上ですわ」

「フンフン」


 僕たちは班のメンバーと集まってヒソヒソ話をする。

 同じ班のパーティーメンバーだから当然シャブリナさんには勝ってもらいたいけれど、実際のところはどうなるかわからなかった。

 ミノタウロス教官の扮したミノタウロスのボスを相手にしたとき、シャブリナさんは苦戦していた。


「けどあれは、狭い通路での戦闘で思う様に攻守を出来なかったのも原因ですわね」

「……というと?」

「長剣は振り回して使う武器ですので、シャブリナさんは戦いにくそうにしておられましたわ。あれがボス部屋での戦闘だったならば、また違ったかもしれませんわ」

「それ、ドイヒーさんが原因で苦戦したんじゃ……」

「コクコク」

「そ、それはそれ、これはこれですわっ」


 そっぽを向いたドイヒーさん。彼女はちょっぴりむくれた顔で言い訳をした。

 何となくドイヒーさんはシャブリナさんをライバル視しているみたいだ。

 けれどもその口ぶりとは裏腹に、本当はシャブリナさんに勝って欲しいって思ってるんだよね?


「いつもリーダーぶってわたくしたちに指図ばかりしていますから、今日という今日は教官どのに鼻っぱしをへし折られればよろしいんですのよ!」


 素直じゃないドイヒーさんは、フフンと大きく鼻を鳴らす。

 そんな事を言いながら大きく盾を構えたシャブリナさんに眼差しを向けていた。

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