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115 洞窟迷宮の最深部を目指そう!

 入口は狭くて中はイボイボの模様、壁に振れれば不思議な粘液が糸を引く……

 僕らの視界にはそんな洞窟の光景が広がっていた。


「足元がぬかるんでいるので、注意するのじゃ」


 盾を構えたシャブリナさんの脇からひょっこり顔を出して、道先案内人のようじょがそんな警告を飛ばす。

 僕らはこの狭い洞窟の中を一列になって調査中だった。

 てぃんくるぽんをかかげるドイヒーさんの後をマッピングする僕、そして最後尾がティクンちゃんだ。


「湿気が多いのは見た通りだが、本当にモンスターの方は大丈夫なんだろうな……」

「大丈夫かというのは、どういうことなのじゃ」

「貴様の開発した怪しい薬の事だ。そいつをアテにしていたのはいいが、気が付けばサラマンダーやミルクワームに囲まれていたというのでは、大問題だからな」

「このおりこうさん天才ようじょが開発した、モンスターの匂いがするお薬を信じないのですか?!」


 シャブリナさんの後を追いながらプンプンと怒って見せるローリガンシャルロッテちゃんだけれども。

 彼女はモンスターの匂いがするそのお薬を使って、この洞窟の先に位置するバジリスクの卵が発見された現場まで出入りしていたそうだ。

 僕の背後ではティクンちゃんが「気持ち悪いですぅ」と言いながら、不用意に壁に触れてネバネバする粘液と悪戦苦闘していた。

 今のところお薬のお陰か、僕らはモンスターと遭遇はしていない。


「あらかたの気持ち悪いモンスターは、ようじょのお薬があるうちに処理しておきませんと。在庫がなくなってからマッピングするとなれば難儀いたしますわ」

「そうだね。でもこの先は特に危険なモンスターはいないんだよね、シャルロッテちゃん?」

「はい、そうです。洞窟のその辺にいた小さなモンスターは、みんな肥えたエリマキトカゲたちの餌にしたのじゃ」


 ようじょの説明によれば、このルートに関しては問題ない様だね。

 その分、今僕らとは別のルートで新たに発見された入口からダンジョンアタック中のみんなに、お薬が行き渡ることになる。

 この洞窟ダンジョンの全容をマッピングするために、僕たちは更なる奥へと進んだんだけれども。


「あのう、かなりの広さがありそうですッ」


 起伏のある細い洞窟を抜けた先に出ると、開口一番にティクンちゃんがそう叫んだ。

 暗がりで確かなことはわからないけれど、見ればこれまでとは違ってひときわ大きな広間の様なスペースがそこには存在しているみたいだ。

 静まり返ったその場所は、僕らが歩くたびにコツコツとブーツの音を反響させる。

 どこか不気味さを感じる雰囲気のわりに、その一方で妙な心地よさを感じたのも事実だった。


「……どうやらモンスターの気配は感じないな」

「うわぁ、高い天井と十分なスペースだね」

「確かにここであれば、トカゲの王様と呼ばれるバジリスクの成獣がねぐらにしていても不思議ではありませんわ。それに不思議と何かに包まれる様な落ち着いた気持になるのは、いったいどういうことですの……?」


 口々にみんなが感想を言い合いながら周辺を見回した。

 すると周辺警戒を解いたシャブリナさんが、盾を肩担ぎにしながら振り返って言葉を口にする。


「よし、まずはバジリスクの卵が安置されていた魔法陣を探すぞ。セイジは記録とマッピンングの準備をしておいてくれ」

「うんわかった。魔法陣の場所はどの辺りかな……?」

「た、たぶん、この先の広いスペースの奥にあるのじゃ」

「ふむ、あっちか? しかし暗くて何も見えない」


 ランタンを持ち上げたシャブリナさんが奥に視線を向けっところ、ようじょが慣れた様子でひょいひょいと奥の方に歩き出す。

 けれど、フロア全体を見渡せるほどランタンの光は奥まで届かなかった。

 この明かりじゃ僕がマッピングするのは少々手間取ってしまうかもしれないね。などと思っていると、


「おーっほっほっほ! ご安心くださいましなセイジさん。ここはわたくしの忠実な使い魔である、てぃんくるぽんがお役に立って見せますわよ。ねえ? ……あいたっ」


 嬉しそうに高笑いしたドイヒーさんだ。

 呆れて僕とティクンちゃんがその様子を見ていると、お約束の様に虹色に輝くナメクジに噛まれているじゃないか。

 反抗期真っ盛りなてぃんくるぽんは、そうしてご主人さまの掌から飛び降りると、大きなフロアの中央で突然ボンヤリと輝きを強めたのだった。


「わあっ。急に洞窟の外へ出たみたいだ」

「見てください! まるで教会堂の礼拝所みたいなつくりになっていますッ」


 手をかざして眩しさに顔をしかめていると、隣でティクンちゃんが興奮気味にそんな言葉を口にした。

 確かに徐々に慣れていく目をすぼめて周辺を観察してみたところ、そこはまるで神殿か寺院の内部みたいな構造をしていたんだ。

 洞窟をくり抜いて彫刻をした様な太い円柱。それに宗教彫刻みたいなものが天井や壁面のあちこちに描かれている。


「これは、いにしえの魔法使いたちが残した古代遺跡なのか?」

「詳しいことはわかりませんけれども、ずいぶんと古い遺跡の様ですわねぇ……」

「壁面の彫刻が苔むしているところを見ると、長らく人間の手は入っていないはずだ。見ろ、あれはバジリスクの壁画ではないか?!」


 シャブリナさんの言葉に釣られる様に天上を見上げると、そこには確かに大きな大きな肥えたエリマキトカゲの姿が描かれていた。

 その隣にの壁画では、バジリスクに比べるととても小さな人間たちが、トカゲの王様を前にひれ伏している。

 卵を守る様に大きな二頭のトカゲの王様が描かれているものもあった。


「これはすごいのですっ」

「……もしかすると、むかしからこの場所はバジリスクの繁殖地だったのかもしれないね」


 ティクンちゃんと僕がポツリとそんな感想を口にした矢先。

 先にいそいそと魔法陣の場所まで進んでいたようじょが振り返って、手を振っている姿が飛び込んでくる。


「何をしているのじゃお前たち! ここが肥えたエリマキトカゲの卵を見つけた、魔法陣の場所なのじゃ」


 このダンジョンの秘密に、いよいよ僕たちはたどり着いたんだ!

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