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止まった時計の針  作者: Tiroro
中学一年生編 その1 はじまり
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第8話 ボウリング再び(1)

今年もよろしくお願いいたします。

 ボウリング大会当日、空は快晴です。

 でも、ボウリングって室内スポーツだから関係無いか。


 しばらくすると、悠太郎が家にやって来た。

 なんか背中に大きめのバッグ持ってる……マイボールかな。


「それじゃ、行くか。まずは吉田と合流だな」


 服装はボウリング番組でよく見るような感じ。

 気合いが入ってるというか、相変わらず負けず嫌いだな、この人。


「ボウリングって、もう何年振りだろう」

「え? もしかして、あれから一回もやってないのか?」

「うん」


 うちの両親も、ボウリングが好きってわけじゃないみたいだし、家族で行く機会なんて全然無かった。

 だから、あの時どんな感覚で投げていたのか覚えてない。

 指を三本入れて投げることは覚えてるんだけど……ま、やれば思い出すでしょ、たぶん。


「恵利佳、おはよう」

「おはよう玲美……」


 恵利佳の家の傍の交差点に行くと、彼女は眠そうな顔で待っていた。

 昨日は遅くまでお母さんの内職を手伝っていたんだって。今日のボウリング大丈夫かな?


「恵利佳はボウリング初めて?」

「ええ。うちにはそんな余裕なかったから……」


 理由が切実過ぎる……。

 聞いた私が悪かった……ごめんね、恵利佳。

 でも、今日は恵利佳の分は謙輔のおごりなんだし、めいっぱい楽しもうね。


 待ち合わせ場所に着くと、謙輔と坂本君、江藤君が既に待っていた。

 まさか、また三十分前から来てたのか。


「謙輔さん、今回も三十分前に来てたんだ。楽しみ過ぎたんだろうなあ……」

「やっぱり……」


 困ったように笑う謙輔の子分の一人、江藤晶(えとうあきら)

 私立に行ってしまったのでしばらく会ってなかったけど、髪を少し伸ばして眼鏡も掛けて、すっかり大人びた印象。

 もともと落ち着いた感じではあったんだけど、私達と同じ年齢とは思えないわ。


「伊藤……今回は負けねえぞ」


 そう言った謙輔の手にも、悠太郎と似たようなバッグが握られていた。

 あんた達、遊びに気合い入れ過ぎだろ。


「玲美、お前なんでズボンなんだよ! ミニスカート履いてこいよ!」

「ミニスカートでボウリングなんてしたら、見えちゃうじゃん」

「テレビのプロボウラー見てみろよ。女性ボウラーはみんなミニスカートだぞ」


 言われてみればそうだけど、なんであの人達ミニスカートなんだろう。

 見せたいんだろうか、パンツを。


「私、スカートで来ちゃったんだけど……」


 恵利佳が恥ずかしそうな顔で立っていた。

 ミニじゃないから、大丈夫だと思うよ。 ……たぶん。


「そういえば、明川は親父さんに直接乗せてってもらうんだっけか」

「うん、そう言ってたよ」

「晶、バスはどのくらいで来る?」

「あと二分くらいじゃないかなぁ」


 前の時と違って、バスはすぐ来るっぽいね。


「玲美、俺の隣に座れ」

「え? 私はいいよ」

「レディーファーストってやつだ」

「そっか。じゃあ恵利佳、座っていいよ」


 遠慮する恵利佳を謙輔の隣に座らせ、私達はバスを待っていた。


「お、バスが来ましたよ」

「意外と早かったな」


 さっき、江藤君が二分くらいで来るって言ってたでしょ?

 日曜日だからだろうか。席はガラ空きだ。

 相変わらず後ろの席を陣取る謙輔。私と恵利佳は前の方の席に座った。


***


 ボウリング場に着くと、由美がゲームコーナーの前で待っていた。

 良かった……ちゃんとズボン履いてる。


「早かったね、由美」

「ううん、さっき着いたところだよ」


 由美の視線の先にはプリクラがあった。

 そういえば前に来た時、由美達と一緒に来たいなって思ってたんだ。

 ボウリング終わったら、一緒にプリクラ撮ろうね。


 受付を済ませ、荷物を置いて、シューズを借りに行く。

 この時、悠太郎も謙輔も、マイシューズとやらを持っている事に気付いた。

 どれだけ本気なんだ、この人達……。


 ジュースも買って戻ると、二人とも当たり前のようにバッグからマイボールを取り出した。

 そして、同時に手にグローブのようなものをはめ始める。


「伊藤……やっぱりそう来たか……」

「お前も、ここまで揃えてくるとは思わなかったよ」


 ゲームを始める前から火花散る二人。

 そんな二人は置いておいて、ずっとボールを磨いてる坂本君。

 前回は居なかったんだよね。心なしか嬉しそうだね。


 投げる順番は、謙輔側が、謙輔、坂本君、江藤君の順。悠太郎側が、悠太郎、私、由美、恵利佳の順。


 この順番と席の分け方は、江藤君が気を利かせてくれたらしい。

 恵利佳は完全に初心者だもんね。私も初心者みたいなものだけどさ。


「ただ投げるだけじゃ面白くないよな?」


 まーた、謙輔がアホな事言い出した。

 もう、キスとかはやめてよ。


「優勝者は、負けたやつ一人に何でも命令できる……というのはどうだ?」


 何でも……だと?

 ある意味で、前回よりやばい優勝賞品だ。


「面白い……それで行こうか」


 悠太郎は、グローブをいじりながら言った。

 お互いに不敵な笑みを浮かべる二人。その横で、ひたすらボールを磨き続ける坂本君。


「そんな約束しちゃって大丈夫なの?」


 心配して悠太郎に尋ねると、ニコッと笑ってマイボールを抱えた。


「悠太郎君、がんばってー!」

「伊藤君、しっかりー!」


 由美と恵利佳の声援を受け、片手を上げる悠太郎。


「悠太郎、がんばれー!」

「はずせー!」


 相変わらずの謙輔の罵声を無視し、悠太郎は綺麗なフォームで投げた。

 端の方を転がっていたボールはカーブし、センターへと向かって行く。

 そして、全てのピンが弾け飛んだ。


「「キャー!」」


 私と由美は思わず声を上げていた。

 ガッツポーズで戻ってくる悠太郎。


「今のって凄いの?」


 恵利佳はルールがわからないみたいだった。

 私と由美で説明したら、恵利佳はすぐにルールを覚えてしまった。

 さすが、頭がいい人は違うわ。


「いきなりストライクとは、やるじゃねえか……」

「お前も鍛錬してきたんだろ?」


 ボウリングって、鍛錬とかするものだったっけ。

 たぶん、練習の聞き間違いだよね?


 派手なマイボールを抱え、謙輔はレーンに立った。

 そして、綺麗なフォームで、すっと転がすようにボールを投げる。

 前の時のような力技ではなく、それは明らかに練習を積んできたとわかる投げ方だった。

 悠太郎と同じように弧を描き、全てのピンが弾け飛んだ。


「やったぜ、謙輔さん!」

「さすがです!」

「凄いじゃん、謙輔!」

「みんな上手だねえ」


 思わず私達も拍手していた。

 一回しか見てないけど、謙輔はあの後も一生懸命練習してたんだ。


「思ったよりも、やるな」

「前までの俺と思わない方がいいぞ」


 どうでもいいけど、この凄い二人を見た後に投げる身にもなってほしい。

 どうやって投げるんだっけ?

 ルールは覚えてたけど、投げ方さっぱり忘れちゃったよ。


「由美、どうやって持つんだっけ?」

「あれ? 玲美ってボウリング初めてだった?」

「一回だけやったけど、忘れちゃって……」


 あの空気が出てくるところで手を乾かす事は覚えてたんだけど、どの穴にどの指入れるんだっけ?


「親指をここ、中指と薬指はここね」

「ああ、そうだったね。これでもう大丈夫だよ。ありがとう、由美」


 さて、じゃあ投げましょうか。

 よい……しょっと!


 ボールは真っ直ぐに進み、狙ったところからはちょっと外れちゃったけど、八本倒す事ができた。


「やったね、玲美!」

「ありがとう、由美!」


 次に投げたら、一本だけ倒す事ができた。

 やっぱりボウリングって難しいね。


「よし、次は俺だー!」


 坂本君はボウリング上手いのかな?

 力いっぱい投げられた坂本君のボールは、左端の溝に吸い込まれて行った。


「くそっ……まっすぐ行きさえすれば……」


 次に坂本君の投げたボールも、綺麗にまっすぐ溝へと向かって行った。

 力いっぱい投げていたせいか、溝に落ちてからも揺れていたボールが、わずかに一本だけかすってピンを倒した。


「器用な事するなあ……秀治」


 これには謙輔も苦笑いだ。


「じゃあ、次はわたしだね!」


 ボールを構え、パーカーを着たポニーテールがわさわさと揺れる。


「優勝賞品ってさ……もちろんわたしにも権利はあるんだよね?」


 ちらりとこちらを見た由美の視線が、場の空気を変えた。

 謙輔の投球を見ても顔色を変えなかった悠太郎に、初めて焦りの色が見えた気がする。


「もしかして、明川って……相当やるのか……?」


 謙輔も冷や汗を掻いているようだ。

 親友は、果たしてどんなボールを投げるというのか……。

お読みいただいて、ありがとうございました。

次回へ続きます。

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