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止まった時計の針  作者: Tiroro
中学二年生編 本編その1 止まった時計の針
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第81話 そこに居る

風邪が治らぬのです……_(:3 」∠)_

 いよいよ、野外キャンプの班決めが行われることになった。

 瑠璃と沙耶に声を掛け、これで私達三人は決まり。

 男子はどうしようかなと思ってると、小岩井が手を振っていたので今回はまあいいかなと組むことにした。


「お前とこうして同じ班になるのも何年ぶりだ?」

「幼稚園の頃以来じゃない?」


 あとの男子二人は田中君と三鬼君。

 そういえば田中君と同じクラスになるのって随分久しぶりな気がする。


「機は熟したの?」

「ん……何のこと?」


 私のとんちんかんな問いに困り顔の田中君。

 ふと言ってはみたけど、小三の頃のことなんて覚えてるわけ無いよね。

 覚えてる私も私だけど。


「こいつ、三鬼っていうんだ。クラスが同じになったのは初めてだけど、俺とはスイミングスクールで一緒だったんだよ」

「泳ぎは任せてくれ」


 キャンプで泳ぐ機会なんてそうそう無いと思うよ?


「なんだかパッとしないなぁ」

「そんなこと言わないの。よろしくね、男子達!」


 瑠璃は不満そうだけど、他にこれと言って組みたい人もいないし。

 沙耶は特に異論ないみたいだし、とりあえず私達の班はこれでいいね。


 班長は田中君に決まり、副班長は私がやることになってしまった。

 小岩井は班長とかまとめるの苦手だからと逃げやがった。


「野外キャンプ楽しみだねー」


 沙耶はこういうイベント好きそうだもんね。

 中学のキャンプって、やっぱ小学校の頃とは違った感じになるのかな?

 しおりに目を通すと、定番の飯盒炊爨やらキャンプファイヤーやらの行事予定が書いてあった。


 恵利佳も、今回こそは最後までキャンプを楽しめるといいね。

 どうか、その日まで何も起こりませんように。


***


「えっ? 恵利佳学校来てないの?」

「うん。休みの連絡も無かったみたいで、キャンプのしおりを預かってきたから届けようと思って……」


 教室を出ると、由美と謙輔が待っていた。

 せっかく復帰したのに、風邪でもひいちゃったのかな……。

 恵利佳の家はお母さんと二人暮らしだし、学校に連絡してる暇が無かったのかもしれない。


「班はわたしと同じ班にしちゃったけど良かったかな?」

「由美と一緒なら恵利佳も喜ぶと思うよ。私も同じクラスだったら良かったのになー」

「俺もお前達と一緒のクラスが良かったぜ……それにしても、連絡が無いってのが気にはなるな」

「謙輔は何か恵利佳から聞いてる?」

「俺が任されてるのは帰りのボディーガードだけだからなぁ……。俺も吉田が休みってさっき聞いたところだ」


 とりあえず、帰りに三人で恵利佳の家に寄ろうってことになった。

 何も無ければいいけど、時期が時期だけにちょっと嫌な予感がする。

 私の思い過ごしならいいんだけど……。



 そして、下校の時刻になって、私達は恵利佳の家に向かった。


 コーポに着くと、玄関の前に見かけない自転車が停まっている。

 こんな黒い自転車、恵利佳の家で誰か乗ってたっけ?

 謙輔が呼び鈴を鳴らしても、誰も出てこない。


「もしかして、恵利佳を病院に連れてってるのかな?」


 そう思ってしおりをポストに入れようとしたとき、中からドタドタと誰かが歩くような足音が聞こえてきた。


「なんだ、居るんじゃねえか。もう一回鳴らしてみるか」


 謙輔が呼び鈴を押そうと手を掛けると、ガチャっと玄関が開く音がした。

 そこには、無表情で立つ恵利佳のお母さんの姿があった。


「おばさん……恵利佳は?」


 私が声を掛けても恵利佳のお母さんは何も答えてくれない。

 ただ、扉を半開きにしたまま、まるで私達に中を見せないように立っている。


 何かを察した謙輔が、小声で恵利佳のお母さんに問いかけた。


「……居るんだな?」


 ────居る?

 まさか……それって────!


 恵利佳のお母さんが小さく頷く。

 それを見て大声を出しそうになった私の口を謙輔が塞ぎ、そのまま謙輔は恵利佳のお母さんに言葉を続けた。


「……一度出直します。辛いかも知れませんが、それまで耐えてください」


 謙輔は軽く会釈をして、私達を連れてその場を離れた。

 あの自転車は、そういう事だったのか……。


 恵利佳の父がそこに居る。


***

 

「玲美、すまなかった……。明川も、よく耐えてくれた」

「……どうしよう、謙輔! このままじゃ恵利佳もおばさんもめちゃくちゃにされちゃうよ!」

「まさか、こんな事になっていたなんて……恵利佳……何で……」

「とりあえず、二人とも落ち着け。おばさんの状況を見るに、あまり良い状況とは言え無さそうだ。あそこで俺達が騒いでも逆効果だっただろう」


 謙輔の言う通りだ。

 相手は前科持ちの犯罪者……下手に刺激するとどうなるかわからない。


「俺に考えがある。遠回りになって悪いが、二人ともそのまま俺の家に来てくれるか?」

「うん!」「ええ!」




 このまま何も起こらなければ良いと思ってた。

 今度こそ、恵利佳も楽しくキャンプの日を迎えられると思ってた。

 でも、恵利佳を取り巻く運命がそれを許してくれない。


 なぜ神様は、恵利佳にばかりこんな酷い目に遭わせるのか。

 謙輔の家に向かっている間、私は少しだけ神様を恨んだ。 

神様「そんなこと言われても……(´・ω・`)」

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