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止まった時計の針  作者: Tiroro
中学二年生編 本編その1 止まった時計の針
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第78話 見知らぬ自転車

 恵利佳も学校に復帰し、一学期も終わりを迎えようとしていた。

 このまま何も無ければいいとは思うけど、あの恵利佳の父が、すんなり諦めてくれたとも思えないんだよなぁ。


「そういえばさ、最近この辺りで他校の男子をよく見かけるんだって」

「それも、長身で結構イケメンなんでしょ? 私、告っちゃおうかな」


 クラスの女子達は、最近現れるという謎のイケメンの話題で盛り上がっていた。

 長身でイケメンって、まさか悠太郎じゃないよね?

 いや、それは無いか。

 そもそも、この学校の女子だったら悠太郎のことは知ってるはずだし。


***


「謙輔も今帰り?」


 帰り際、下駄箱で謙輔達を見かけた。

 坂本と、あのちっちゃい子は新崎君だっけ。

 そういえば、今更だけど坂本と瑠璃って同じ苗字になったんだよね。

 瑠璃のことは瑠璃って呼ぶし、坂本のことは坂本君って呼ぶから混同はしないと思うけど。


「お前達を待ってたんだよ。親父がさ、何かあったらいけないから吉田のボディーガードをしろってさ」

「渡辺君が? でも、家だって同じ方向じゃないのに……」


 恵利佳は何だか申し訳なさそうだ。


「気にすんな。それより、こいつらも付いてきたいって言うから連れてくことになるけどいいか?」

「僕も吉田さんを守るんだー!」

「お前はどっちかというと守られる側だろ」


 坂本の突っ込みに頬を膨らませる新崎君。

 男子なのに可愛いなこいつ……。


「謙輔君が守ってくれるなら安心だね。もし恵里佳のお父さんが現れてもやっつけちゃうでしょ」


 由美もこの提案には賛成らしい。

 たしかに、私達だけだと何かあったとき恵利佳を守り切れないかも知れない。


「じゃあ謙輔、よろしくね」

「おう、任せとけ」


 いきなり六人の大所帯で帰ることにになった私達。

 この感じ、小学校の頃の集団下校を思い出してしまう。


「みんなで帰るのって楽しいね」

「おい、あまりはしゃぐとまた発作が出るぞ」


 新崎君を心配する謙輔。まるで保護者のようだ。


「先に新崎を送ってくけどいいか? すぐそこなんだ」

「あら、結構学校に近いんだね」

「両親が配慮したんだろうな」


 そういえば、新崎君心臓が弱いんだっけ。

 元気いっぱいに見えるけど、こんな小さい体で頑張ってるんだなぁ。


「じゃあ新崎、ここまで護衛ご苦労」

「渡辺君達も護衛頑張ってねー」 


 新崎君と別れ、次は恵利佳の家へと向かう。


「今日はお母さんパートなの」

「そうなの? じゃあ帰っても恵利佳一人になっちゃうね」

「なんならうちに来るか? 帰りは親父に送ってもらえばいいし」


 謙輔の提案で、恵利佳はこれからお母さんが居ないときは謙輔の家に行くということになった。

 最初は断っていたけど、それが一番安全だということで私も由美もそれには賛成だった。

 うちに来てもらっても良かったけど、私も帰ったら塾に行っちゃうからこうするのが一番だったのかもね。


 こうして、大所帯はあっという間に解散。

 由美とも別れ、家に帰った私は塾に行く準備を始めた。


 それにしても、前世の記憶が残っていたら、高校くらいまでは楽できたかもしれないのになぁ。

 でも、世の中そんな都合よくはいかないか。

 今の私には、前世の頃の名前すら記憶に無いんだから。


***


 塾が終わって帰ると、知らない自転車が家に止まっているのが見えた。


 悠太郎……じゃ無いよね?

 そもそも自転車が違うし、あいつが帰ってくるのは夏休み前って言ってた。


 大きさからして男の人の自転車って感じがする。

 お父さんが買ったのかな? まだ真新しい感じがするし。


「ただいまー」

「おかえりー。玲美、あんたにお客さんよ」

「へ? 私に?」


 こんな遅くにお客さんって誰だ?

 ちょっと緊張しながらドアを開けると、そこにはよく見知った顔があった。


「……哲ちゃん!?」

「玲美ちゃん、久しぶり!」


 久しぶりに再会した幼馴染は、ホクホク顔で普通に晩御飯を食べていた。

読んでいただいて、ありがとうございましたm(_ _"m)

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