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止まった時計の針  作者: Tiroro
中学一年生編 その1 はじまり
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第5話 バッドタイミング

 小柳さんに付いて来いと言われてしまった。

 いや、付いて行くわけないでしょ。怖いし。


「明日もテストだから無理」

「はあ!? んなもん、あたしだってそうだろうが!」


 適当に言い訳考えてみたんだけど、駄目っぽい。

 でも、テストの事が気になるのも確かだし、不良の相手なんかしてられないよ。


「忙しいから、帰るよ」

「待てよコラ!」


 とっとと帰って、シュークリームを食べたいんだ私は。

 すると、小柳さんは私の肩を掴んできた。


「お前、あたしをなめてんのか?」


 いい加減、うざったくなってきた。

 なんで、こんな言い方されないといけないんだ。

 悪いのは、こいつじゃないか。


「おい、こっち向けよ!」

「うるせえ! 私に話し掛けんな不良!」

「な……!? てめえ!」


 つい怒鳴っちゃった。

 あれ? 意外と効果あり?


「……あんた、そっちが本性か?」

「違うよ。あんたが帰してくれないから怒っただけ」


 なんか知らないけど、掴んでいた手も離してくれた。

 今のうちに帰ろう。 


「待てよ!」

「待たないよ。テスト勉強もあるし」


 私が歩き出すと、小柳さんも付いてくる。

 このまま警察署まで歩いてやろうか。

 でも、あんまり遅くなるとシュークリームがしなびてしまいそうだ。


「いい加減にしないと警察呼ぶよ?」


 携帯忘れてきたけど。


「チッ……」


 さすがに警察は苦手なんだね。万引きやってるくらいだもんね。

 さ、シュークリーム食べながら勉強しよっと。


***


 翌日の朝。


「ちゃんと勉強できたか?」

「理科は諦めて国語に絞ったよ」


 悠太郎と話しながら歩いていると、校門に小柳さんが立っていた。


「おい、日高」

「話し掛けんな不良」


 私の名前を呼んだ小柳さん。

 名前は名簿でも見たんだろうか。


「お前、小柳だったよな。玲美に何か用か?」

「そいつが、あたしの事をなめてるからさ」

「玲美にちょっかいを出すというなら、俺も黙っていないぞ」


 睨み合う悠太郎と小柳さん。

 こうしてる間にも、時間は刻一刻と過ぎて行く。

 私のテスト勉強は開始五分前が本番なんだから、こんな奴ほっといて、早く教室に行きましょ。


「行こう、悠太郎。時間の無駄だよ」


 悠太郎の袖を引っ張って、私は教室へと向かった。


***


 テストは無事終了した。

 理科? そんなものは知らん。

 記号問題多かったし、どれか当たってるでしょ。


「玲美、今日は久しぶりにみんなで帰ろうよ」

「そうだね」


 由美と悠太郎と話していると、不良がやってきた。


「よう、テスト終わるまで待ってやったぞ」

「誰だっけ、この人……」


 由美、自己紹介の途中で帰ってしまったとはいえ、一応クラスメートである彼女に対して、それはさすがに酷いと思うよ?


「あたしは小柳瑠璃(こやなぎるり)ってんだ。覚えとけ、ブス」

「な……!? なんて失礼な人なの!?」


 ポニーテールが逆立ちそうな勢いで怒る由美。


「玲美にちょっかい出すなら、黙っていないと言っただろ」


 悠太郎が私の前に立った。

 一触即発の二人。


「小柳さん、私に何の用か知らないけど、あの事なら黙っててあげるから、もう関わらないでもらえる?」


 どうせ、万引き見た事の口封じとかなんでしょ?

 雑誌もちゃんと戻してたし、今回は見てなかった事にしてあげるよ。

 その代わり、もう万引きとかしないでよね。


 小柳さんを無視して、私達は帰る事にした。


***


「なあ渡辺、テストの出来はどうだった?」

「まあ、普通じゃないか? 良くも悪くも無いって感じだよ」


 琢也と謙輔は、テストの話題で盛り上がっていた。

 謙輔ってなにげに、頭も結構良いんだよね。


「そういえば謙輔、江藤君も森山さんも私立行っちゃったけど、謙輔は公立で良かったの?」

「俺的にはどっちでも良かったんだけど、俺まで私立に行っちゃったら、坂本が可哀想かなって思ってさ」


 そういうことだったんだ。

 謙輔ってこういうところあるよね。さりげない気遣いっていうか、友達想いっていうか。


 でもその坂本君、絶賛小岩井に浮気中。

 今日も、小岩井と一緒に帰る約束しちゃってたみたい。

 いつの間に仲良くなってたんだろうね。河村さん繋がりかな?


「テストの事はもういいよ。それよりさ、もうすぐ校外学習じゃない?」


 由美は校外学習が気になって仕方ないらしい。

 遠足とか好きだもんね、由美は。


「渡辺君達も同じクラスだったら良かったなー……」

「まあ、俺もそうは思うけどさ。クラス離れちゃったのは仕方ないし、こうやってまた集まったりもできるんだから、それで良しとしようぜ。そうだ、今度の日曜、みんなでボウリングにでも行かないか?」


 日曜日か……私はいいけど、みんなはどうなのかな?


「わたしは行けるよ! みんなとボウリング行くのって初めてだし、楽しそう!」


 そういえば由美は、小学生の時のボウリング大会に参加してなかったもんね。

 ボウリングが初めてという事は無いみたいだけど、由美ってどのくらいのスコア出すのかな?


「俺も大丈夫だ。久しぶりにマイボールを出すか」

「前回の俺と同じだと思うなよ。今度こそ、伊藤に勝つ!」


 謙輔は、相変わらず悠太郎に対して対抗意識を燃やしているようだ。

 たしか、前の時は延長戦やっても負けたんだったな。


「俺はちょっとその日は……悪ぃな」


 琢也は用事があるんだって。朱音とデートかな?

 彼女、私立行っちゃったもんね。そりゃあ、会える時に会っておきたいよ。


「うちは……そんなにお金に余裕が無いから……」

「ああ、大丈夫だ。吉田の分は俺が出すよ」

「そんな……悪いわ」

「気にすんな。親父に言えば吉田の分くらい喜んで出すさ」


 謙輔のお父さん、恵利佳のお母さんと何やら親密な関係になりつつあるみたいだし、恵利佳の事も可愛がってくれている。

 もし、二人が再婚したら、恵利佳は謙輔の義理の妹って事になるのかな?


「校外学習の前に、楽しみができちゃった!」


 嬉しそうな由美。

 でもボウリングって久しぶりだな……どうやって投げるんだっけ?


「楽しそうなところ悪いね」


 不良の小柳さんがあらわれた。

 終わったと思ってたのに、まだ何か用があるの?


「このまま引き下がったんじゃ、あたしにもメンツってもんがあるんだ。日高、一緒に来てもらうよ」

「なんだこいつ?」


 謙輔が体を斜めにしながら前に出た。

 ちょっとガラ悪いっスよ、謙輔さん。


「玲美に悪さしようってんなら、俺が相手になってやるが?」

「ふん、良い子ちゃん達の集まりにしちゃ骨がありそうじゃないか……なら、あんた達も一緒に来な!」


 とりあえず、由美と恵利佳は帰そう。危ないから。

 それにしても、小柳さんなんというバッドタイミングで出てきてしまったんだ。


「大人しく引き下がっておけばいいものを……小柳、お前終わったぞ」


 悠太郎はそう言って、呆れた顔で小柳さんを見ている。

 そして、謙輔は心なしか生き生きとした顔をしている。

 琢也はやれやれと言った感じの表情だ。


 彼らは、私の仲間の中でも選りすぐりの三人。

 そこらの不良なんかに負けるわけがない。


 いい加減しつこかったし、そろそろ彼女に引導を渡してもらおう。

 これで明日からは、平和な中学生活を送れるかな?

お読みいただきまして、ありがとうございました。

私もシュークリームが食べたいです。

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