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止まった時計の針  作者: Tiroro
中学一年生編 その3 わたしのなつやすみ
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第42話 水族館デート(2)

 玲美はウミガメが見たいっていうけど、ウミガメってどこで見れるんだ?

 うーん……仕方ない、館内案内図を見てみるか。


「ウミガメはこっちみたいだよ」


 既に案内図を見ていた玲美がそう呟いた。

 しまった……かっこよく案内してやるつもりだったのに、先を越されてしまった。


「……知ってたよ」

「ほんとに?」


 頼むから、そんな絵に描いたようなジト目で見るのはやめてくれ……。


「ウミガメじゃなくても、他にもいろんな生物が見られるみたいだし楽しみだね」

「そうだな。時間はたっぷりあるんだ。ゆっくり見て回ろう」


 そうだ……何もかっこなんてつけなくたっていいじゃないか。

 玲美とはずっと自然体でやってきたんだ。気取る必要なんて全然無いんだ。

 俺としたことが、見た目に釣られてやってくる女子達を嫌っていたはずなのに、いつの間にか女子の前でかっこつける体質が身に着いてしまっていたらしい。


「ねえ、悠太郎は何か見たいものはあるの?」

「俺か? 俺は……そうだな、大きな魚が見たいな」

「サメとか?」

「ああ、サメもいいんだけど、なんていうか、自分よりも大きな魚なら何でもいいから見てみたい。自分の身の丈よりも大きな魚って、なんだかワクワクするだろ?」

「ああ、それわかるかも。だって、背中に乗せてもらえそうだもんね」

「え? あ、ああ……そうだな……乗れるかもな」


 違う……。違うんだよ、玲美。

 俺は別に魚の背中に乗りたいんじゃないんだ。

 それに、魚の背中って背びれが邪魔で乗れないんじゃないか?


「もしかして……ウミガメを見たいのって、背中に乗りたいからか?」

「え? 違うよ」

「そうなのか。じゃあ、なんで?」

「顔が可愛くない? 鳥みたいな顔してるし」

「ああ、言われてみればそうかもな」


 顔が可愛いか。

 良かった……玲美もちゃんと普通の女子と同じように可愛いものが好きなんだな。

 前世の影響とやらで、ちょっと男勝りなところがあるけどその辺は普通の女子と同じようだ。


「あ、あれ見て! カニだよ!」

「おお、足が長いな」

「これだけ大きかったら、カニカマたくさん作れそうだよね!」

「え……ああ、そうかもな……」


 やっぱり言いやがった……。

 美味しそうとは言わなかったけど、似たような事を言って喜ぶ玲美。

 まあ、らしいっちゃらしいけど。今度カニカマでもプレゼントしてみようか。


「あれ? この水槽、何もいないよ」

「ほんとだ。どこかに隠れてるのか?」


 底の方をよく見てみると、何だか違和感がある。

 あ、あの砂に埋もれたところから出してるのって目じゃないか?


「玲美、底の砂をよく見てみるんだ」

「砂……? おお!? こんなところに居たんだ!」


 目をまん丸くして喜ぶ彼女。

 楽しんでくれているようで良かった。

 よし、この調子で俺もデートを楽しむぞ。


「次こそ、私が見つけるからね!」


 違う……別に勝負をしてるわけじゃない。


***


 さすが、水族館。

 今まで見た事もないような生き物がいっぱいだ。


 この生き物なんて、海藻かと思ったら動いてるし。

 えっと……リーフィシードラゴンっていうのか。

 タツノオトシゴみたいだね。


「悠太郎、見て。ペンギンがいるよ」

「お、餌をあげてるところみたいだな」


 ペンギン……本当に立って歩いてるよ。

 よちよち歩きで可愛いね。

 飼育員さんの持ってる餌に食いついてる。


「あの魚、スーパーで売ってるようなやつだ。餌代結構かかりそうだよね」

「うん……まあ、そうだな」


 テレビでペンギンを飼ってる人の特集を見た事あるけど、こうやって見てると育てるのって大変そうだ。

 ああ、でも、鳥類の生き物ってやっぱり可愛いね。

 手をパタパタさせてるよ。


「あっちにトンネルがあるな。上が水槽になってるのか」

「行ってみる?」

「おう」


 悠太郎の後について、トンネルの下に向かう。

 上を見上げると、小魚がたくさん泳いでいるのが見えた。


「綺麗だねぇ」

「海底から上を見上げると、こんな感じなんだろうな」


 まるで海底にいるみたいだね。

 こんな体験までできるなんて、水族館って凄いね。


「あっちに人が集まってるな」

「ほんとだ」


 こっちにも何か凄い生き物がいるのかな?

 近付いてみると、大きな魚が目の前を横切って行った。


「でかいね!」

「サメだ……こんなに大きかったんだな」

「中にいる小魚達、大丈夫なのかな?」

「そうならないように、ちゃんと餌をあげてるんじゃないのか? それにしても、思ったよりも大きいんだな……百聞は一見に如かずだ」

「エイもいるね。あんなに平ぺったいのにちゃんと生きてるんだね」

「生命の神秘だよな」


 魚達もキラキラ光って綺麗……。

 それにしても、水族館って、なんてゆうかスケールが大きいね。

 まさに海を疑似体験してるって感じがするよ。


***


 思った以上に水族館って楽しいな。

 玲美も楽しんでくれているみたいで良かった。


「これって、ウミウシってやつじゃない?」

「図鑑で見た事はあるけど、実物を見るのは初めてだ」

「今までずっと、ナメクジの大きいのだって思ってたんだけど、こんな綺麗な色をして泳いでるのを見るとなんだか可愛いね」

「なんでこんな色をしてるんだろうな。毒を持ってるってわけでも無さそうだし、そもそもウミウシって何の仲間なんだ?」

「まさか……牛じゃないよね?」

「いや……それはさすがに無いだろう」


 とはいうものの、ウミウシが何の仲間なのかさっぱりだ。

 こういう時、順ならさっと答えられるんだろうな。

 俺も、そういった雑学を少しでも覚えておくべきだったか。


「そろそろウミガメのところかな?」

「ああ、そういえばまだ見てなかったな」


 館内を進むと、広いテラスのような場所に出た。

 水槽を上から眺められる場所みたいだ。


「悠太郎、あれ見て! ウミガメが泳いでる!」

「おお、あれがウミガメか」


 ようやく登場のウミガメ……思った以上に大きいな。

 川とか池で見掛けるカメの大きさの比じゃない。


「見て、手が平たく丸くなってる……ほら、ボートのあの棒みたいじゃない?」

「もしかして、オールの事か?」

「そう、たぶんそれ。あれで泳ぐんだね。もっと近くで顔を見たいなぁ」

「そこの階段を下りて行けば見れるんじゃないかな」


 階段を下りた先は、円筒状の大きな水槽がいっぱいに広がっていた。

 そこからウミガメを見て、目を大きく見開いて喜ぶ玲美。


「ウミガメってさ、優しい顔してるよね……そう思わない?」

「そうだな。卵産む時は涙を流すらしいし、実際優しいんだろうな……」

「いいなぁ、ウミガメ……」


 うっとりと水槽を見つめる玲美。


「あれだけ大きかったら、浦島太郎も背中に乗れるわけだよね」

「あ、ああ……そうだな……」


 やっぱり、乗ってみたいんじゃないか……。

 ともかくこれで、俺が見たかった大きな魚も、玲美が見たかったウミガメも見る事ができたわけだ。


「次は、何を見に行きたい?」

「そうだねぇ……深海魚とかどう?」

「深海魚か……よし、見に行こう」


 次の目的地が決まった。

 今度は、ちゃんと案内図を見て向かおう。

 あんまり種類は多くないみたいだけど、一応深海魚のコーナーもあるみたいだな。


「深海魚って言ったら、変な姿をした魚がよくテレビに出てるよね」

「俺達が普通に見かける魚とは、どこか違う感じだよな」


 進んでいくと、何やら薄暗い感じの場所に出た。

 深海魚って言うくらいだから、光には弱いんだろうか。


「ここに深海魚がいるんだ」

「お、早速変なのがいるぞ」


 そこには、くたびれた感じのカニがいた。


「これが深海のカニかぁ……あんまり美味しそうじゃないね」


 玲美はどうやらカニが好きらしい。食べる方の意味で。

 他の水槽を見ても、深海の生物はどれも変な感じのものばかりだった。

 うん、なかなか面白いな、深海の生き物は。


 こうして、俺と玲美はその後も水族館のいろんな生物を見て回った。

お読みいただいて、ありがとうございました。

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