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止まった時計の針  作者: Tiroro
中学一年生編 その3 わたしのなつやすみ
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第40話 引っ越してきた子供達

 あつーい……。

 なんか、夏って年ごとに暑くなってない?

 去年ってこんなに暑かったっけ……。


「そろそろエアコン切るよー」

「うーん……」


 リビングで涼みつつ宿題をしていたんだけど、エアコン切っちゃうなら続きはまた夜だね。

 もう少しで夏休みの宿題も終わっちゃいそうだ。

 そういえば、自由研究っていうのもあったな……何を研究するか決めてなかったけど。


「はい、スイカ切ってきたわよ」

「ありがとう、お母さん」


 キンキンに冷えたスイカを食べる。

 これ食べると夏って感じだよね。

 種を取るのがちょっと面倒だけど、他の果物には無い甘さがあって美味しい!

 あれ……? スイカって果物だっけ? 野菜だっけ?


「お母さん、スイカって果物なの?」

「どうしたの、急に……えーっと……そうね……、どっちだっけ?」

「お母さんもわかんないの?」

「待って! うーん……そうだ! カボチャって南の瓜って書くでしょ?」

「そうなの?」

「うん、南の瓜って書いてカボチャ。同じようにスイカも西の瓜って書くから野菜じゃない?」

「そうなんだ。でもお母さん、カボチャって野菜でいいの?」

「え……?」


 この議論は私とお母さんだけでは結論が出そうもなかった。

 お父さんに聞くか、順とか中野君みたいに賢そうな人に聞くか……そうでもしないと解決しそうもない。

 あと、西と南があるなら東と北の瓜があるのかどうかも気になる……。


「考えても仕方ないし、とりあえず食べましょ」

「そうだね」


 スイカは美味しいし、果物でも野菜でも、もうどっちでもいいや。

 一瞬これを自由研究のテーマにしようと思ったけど、難しそうだしやめとこう。


 残ったスイカはラップをして冷蔵庫へ。また夜にでも食べよう。

 扇風機に当たって、お昼のバラエティー番組を見ながらこれからどうしようか考える。

 手に持った広告には『夏祭り』の文字。

 今度の日曜日、近所の神社で毎年恒例のお祭りがあるみたい。


 その時、玄関のチャイムが鳴った。

 誰だろう、こんな時間に。


「玲美、お母さんちょっと洗濯物しまってるから出てきて」

「はーい」


 もしかして、セールスかな?

 お母さんがセールスだったら断ってって言ってたっけ。

 玄関を開けると、そこにはお母さんより少し若いくらい?の女性と、三人の子供達がいた。

 えっと……どちらさまですか?


「はす向かいに越してきた岸間(きしま)と言います」

「あ、ご丁寧にどうも……」


 ああ、引っ越しの挨拶ね。

 手渡されたお菓子を受け取り、私はお母さんを呼んだ。

 

 お母さんと、女性が楽しそうに話し始めた。

 長くなりそうだな……。

 子供達が私をじーっと見ている。

 三人とも兄妹かな?

 イガグリ頭の二人と、おかっぱの女の子。


「僕は浩之(ひろゆき)って言います。こっちは弟の洋平(ようへい)と妹の仁香(きみか)です」

「私は玲美。君達、小学生?」

「はい。僕は小学六年生で、弟は四年生、妹は一年生です」

「マジか!? お兄ちゃんは私と一個しか変わんないのね」

「タメだと思ってました。中学生だったんですね」

「失礼な……」


 お母さん達の方をちらっと見ると、まだまだ話が長くなりそうな雰囲気だ。


「おねえちゃん! 遊んで!」


 仁香ちゃんがそう言って私の腕を引っ張る。

 か……可愛い! 妹が居るってこういう感じなんだね!


「僕達も遊んでほしいです」

「玲美、せっかくだしどこか案内してあげなさい」

「え? うん。どこ行こうね」


 お母さん達は、家の中に入って行った。

 取り残される私と三人の子供達。


「仁香ちゃん、どこか行きたい所ある?」

「遊んでくれるならどこでも!」

「洋平君は?」

「僕はおもちゃが見たい!」

「そっか、おもちゃ屋ね。浩之君は?」

「おもちゃ屋に行っても仕方ないし……そうだ、どこか公園は?」

「公園ね」


 公園ならそんなに離れてないし、仁香ちゃんも遊べるからいいかもね。

 浩之君はお兄ちゃんなだけあって、ちゃんとその辺も考えてるみたい。


「おもちゃ屋がいいよ!」

「それはまた今度でいいだろ」

「やだ! 今日がいい!」


 なんだか兄弟喧嘩を始めてしまった二人のお兄ちゃん。

 その間でオロオロし始める仁香ちゃん。

 兄弟が居ない私には、こういう時どうしたらいいのかわかんない。

 とりあえず、仁香ちゃんの頭を撫でておこう。


「弟は言って聞かせましたので、公園に行きましょう」

「公園でいいです……」


 半泣きの洋平君。

 どうやら兄弟喧嘩はお兄ちゃんの勝利で終わったようだ。


***


 三人兄妹を連れて、河川敷のそばにある公園へ。

 ほとんど遊具が無くなったタコ公園に行くより、こっちの公園の方がいいよね。

 弟君は、なぜか虫取り網と虫カゴを持ってきていた。


「セミ捕まえたいから」


 男の子ってなぜかセミ取りが好きな子多い気がする。

 なんだか、小学生の頃の夏休みを思い出すなぁ。


「結構大きな公園ですね」

「でしょー」

「あ、アブラゼミ!」


 洋平君はセミ取りに夢中なようだ。

 仁香ちゃんは喜んで走り回っている。

 浩之君は鉄棒に興味があるみたいだ。


「僕、鉄棒得意なんです」

「ほう……」


 そう言うと、浩之君は一番高い鉄棒に飛び付き、逆上がりをした。


「どうです? 凄いでしょう!」


 そう言いながら、再びクルッと回り得意げな浩之君。

 うん、たしかにやるね……でもね、逆上がりは私も得意なんだよ!


「え……? 玲美さん?」

「私も逆上がりは得意なんだよ!」


 鉄棒に飛び付き三回転。

 私の方が格上というところを見せてやるわ!


「ふふっ……どうかな?」

「玲美さん……その……。パンツ丸見え……」

「あっ……」


 地面を見て俯いている浩之君。

 今日はスカートだったという事をすっかり忘れていた……。

 とりあえず、あくまで冷静に、何事なかったように鉄棒を降りる私。


「何も見てない……いいね?」

「はい……何も見てないです……」


 よし、これでオーケー。


「シマシマー!」


 大人しくセミだけ見ていればいいものを……洋平君め。


「おねえちゃん! おしっこー!」

「おおぅ!? おトイレ行きましょうね!」


 しゃがみ込んでいた仁香ちゃんを立たせてトイレにダッシュ。

 兄弟がいるって、こんなに大変なんだ。

 悠太郎も、由美も、こんなに大変な思いをしてたんだね。


***


 あー……疲れた。


 家に帰ってきた私は、リビングで完全にグロッキー状態だった。


「お疲れさま。あの子達の相手は大変だったでしょ」

「まあね……でも、いい運動にはなったかな」

「それは良かったわ。お菓子もいいけど、もうすぐ夕ご飯だからほどほどにね」

「はーい」


 岸間さんの持ってきたお菓子、美味しいです。

 ジャムの乗ったクッキーが特に美味しいね。


「そういえば、悠太郎君から電話があったよ。また夜電話するって言ってたけど、あんたから電話してあげたら?」

「悠太郎? うん、もう少し休憩してから電話するよ」


 悠太郎から電話って何だったんだろう。

 たしか、夏休みも部活あるって言ってなかったっけ?

 このクッキーをもう一枚食べたら電話してみようかな。

お読みいただいてありがとうございます。

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