プロローグ
「結局さー、運なんだよ、運」
窓から部屋を日が照らす中、その友達はゲーム機を放り投げる。
ゲーム画面には、You lose の二文字。
「本当やってらんな。勝ちが決まったと思ったら急所でこれ。意味わかんな」
そう言って腕を頭の後ろに組み、仰向けになる。
負けるとすぐこれだ。
皆そう、怒りを露にする。
「全くポケモンも運要素なくせばいいのにな」
その言葉は、少し気になった。
「もしだけどさ、『一撃必殺技を必ず三回に一回当てれる』とか『命中90%以下の技は四回に一度必ず避ける』とかできる人がいたら……どうする?」
「はぁ?なんだよそれ」
あきれたような声。
そして現れる重い沈黙。
僕は固唾を飲まずにはいられなかった。
もしこれで、『それ』がばれたら……文句を言われない訳がない。
夕方時の日は早く。
あっという間に日は落ちていく。
「暗くなってきたな、そろそろ帰る。じゃあまた明日学校でな」
そう言ってその場を立ち上がる。
それと同時に、吐き捨てる。
「あとさっきいってたことだけど、そんなん出来るやつチート使ってるに決まってるから敬遠するわ」
予想道理の返答。
当然だ。
そんな、『運要素』を『確定要素』することなんて……出来る方がおかしい。
だから……この事は、誰にもばれないようにしよう。
この『70%以下の技は三回に一回しか外れない現象』は……
僕はそう心に誓った。