4. (五人の仲間が生きていた)〈二〉
『Moon暦726年2月25日(土)』
最初の連絡から十日後に、またジョナから連絡が入り、リリーさんが即座に音声を私の部屋に回してくれた。
「キャプテン、聞こえますか、キャプテン、聞こえますか、ジョナです」
と、今度もジョナの声は二回続いた。
「ジョナ、連絡があってよかった。聞こえてるからね。元気にしてるの?」
「はい、大丈夫です。私たちの時計を五個合わせて五角形を作って部屋に置いてあります。そうすることによって彼女がそちらの電波をキャッチしやすいそうです。私には意味が理解できません」
と、彼女がそう言ったから、この前の話しの続きはこれなのだ、と私は思った。
「分かった。彼女の言う通りにして、時計を外してると言いたいのでしょう? それは了解しました。時計を外すことを許可します」
「ありがとうございます。これで私も安心しました。キャプテンの許可なしで時計を外すことに、皆で不安を感じてました」
「時計が壊れてなくてよかったね。この前の連絡では時計が五個で途切れたから、色々考えて心配してたのよ」
「ありがとうございます。私たちが生きてることだけでも伝えられて、私は精神的に楽になりました。『ムージュ号』に帰れると皆で希望が持てました。私たちは時計を頼りに『ムージュ号』と同じサイクルで生活してます。でも早く帰りたいです」
「リリーさんと私が百%帰れるようにするから心配しないで、皆で協力していつもと同じように規則正しい生活をしてね。運動も忘れないでよ」
と、私はそう言ったけど、それ以外の言葉が思い浮かばず、どういう状況なのか細かいことは理解できないし、でも、私は語気を強めて言ったので、ジョナは必ず理解できたと確信している……彼女は私が選んだマーシャル隊なのだ。
「それから、あれは自爆でどうなりましたか。私は自爆の言葉を聞いて何も考えられなくなりましたが、一瞬のことで恐怖感もなかったです。私は光を感じて分からなくなりましたが、あの光は彼女が私たちを包んでくれた光だったのです。ここでは時間がたくさんあるので、あの状況を何度も皆で話し合いました。皆はキャプテンの判断は正しいと言ってます。アルーファの効果は『あいつ』の口を閉じるのには役立ちますが、それ以上の効果は期待できません。体が大きくなっていくし、アルーファのパワーが切れたらどうなったのか、タイ・タイ機能が切れたらどうなったのか、と皆で想像していろいろな意見が出ました。私たちはあの状態を回避できないと結論づけました。『あいつ』がムージュ号の中を移動して、仲間を捕食して餌にするかもしれない、とも話しが出ましたが、あれはいったい何だったのですか」
と、彼女はそう疑問に思ったのか一気にそう尋ねたかので、
「リリーさんも見てないから判断ができないそうよ。でもジョナが『巨大ミミズ』と言ったでしょう?」
「はい。ミミズは目が見えないから音で判断するのと一瞬閃いたのです。でも口からなのか吐き出された物は壁を溶かしてました。びっくりして恐かったです」
「あれは私たちの間では『巨大ミミズ』と呼んでるのよ。自爆でいなくなったから心配しなくていいからね。『ムージュ号』に必ず戻れるから安心しなさい」
「了解しました。キャプテンの言葉を信じて皆で頑張ります」
と、彼女がそう言ってくれたから、私は少なからずこの前よりは安心した。
★すばらしいチームワークだ。私はその言葉に称賛を贈りたかった。こんな状況においても彼女たちの『時計』を外すことが、こんなにも許されない行為だったとは信じられない。でもこの時計は彼女たちの『命の恩人』だ。この時計のお陰で『ムージュ号』の位置が把握できたし、私もキャプテンを知ることができた。お互いに異星人の存在で、私がかたくなにも親交を嫌っていたから、でも、彼女たちのお陰で接触するタイミングを得たことになる。キャプテン本人とならば友好関係を深めてもいい、と私は本気で思った★
☆ ★ ☆
ジョナの話しと彼女の話しを総合してみると、彼女の住み家にあの『巨大ミミズ』が突然やってきて、ここを破壊しない代わりに、なぜ地球のことを知ってたのか理解できないけど、地球に自分を連れて行けと位置を示したそうで、だから、彼女は自分のパワーを全開して自分の住み家から連れ出すチャンスだと思い、その取引に応じたそうで、そして、たどり着いた場所が『ムージュ号』だったそうだ。
彼女自身も帰りのエネルギーのことはまったく考えてなく、自分の住み家から追い出せればいい、とそれだけ思い、私たちの言葉で表すと平和主義者で争いごとは好まず、彼女たちを送り届けたいけど自分はエネルギー不足で全員を連れ出せないので、そちらから迎えに来てほしいと思ったそうだ。
でも、自分の居場所を知られたくないので、問題解決の糸口が見いだせなくて困っているそうで、それと電波を経由して飛ばしてるので、発信元の方向を突き止めることができないと思うと説明してくれ、リリーさんもこれ以上は突き止めないと約束して時間切れになり、今回は彼女と少し話しができ、とりあえずここまでの内容は理解できたけど、最初の連絡以後は上からは何も言ってこないので、たぶん今回も気づいてないと思う。
二度目の連絡の後にリリーさんと私で彼女に名前をつけ、私の『マ』と感覚や頭脳が研ぎすまれて、素早く的確に行動するシャープの『シャ』を組合わせて、私たちは『マーシャさん』と呼ぶことにしたので、次回連絡があれば彼女に伝えようと思った。