3. (五人の仲間が生きていた)〈一〉
『Moon暦726年2月25日(土)』
私の部屋でリリーさんと話しをしてたときに、突然リリーさんが言った。
『ちょっと待って、切り替える』
と、リリーさんの声の響きは驚いていた。
「キャプテン、聞こえますか。十一学年Eクラスのジョナです。十一学年Eクラスのジョナです」
と、突然ジョナの言葉を聞いて、私は頭の中が動転した。
「ジョナ、えっ、ほんとうにジョナなの?」
と、私は驚いてそう叫んだ。
「そうです。私はジョナです。私の話しを先に聞いてください。私たちは五人は生きてます。自爆の連絡が入った瞬間に助け出されました。『ムージュ号』の位置が確認できたからまた連絡が取れると言ってます。通信するにはエネルギーいるそうです。リリーさんの作った時計が役立ちました。私たちは元気に暮らしてます。安心してください」
と、彼女がそう説明したから、
「ほんとうにジョナなの、皆は元気なのね」
と、私はそう言ったが次の言葉が出なかった。
「リリーさんの時計を五個……」
「えっ、時計を五個どうしたの? ジョナ・ジョナ、どうしたの?」
と、私はすぐに話しかけたけど、私たちの会話はここで終わってしまった。
「リリーさんどういうこと、ジョナからだったよ」
と、私は語気を強めてそう言った。
「リリーさん聞いてたの、ジョナからだよ。信じられない。上も受信したの?」
と、少し待って私はそう言ったけど、リリーさんからの反応はながなくて、無言の彼女は初めてだった。
「リリーさんどうしたの?」
と、私がもう一度そう叫ぶと、
『ごめん、聞こえてた。上が傍受してたら連絡があると思う。発信元を探ってるけどだめだな。全然位置が分からない。どうしてだろうか』
と、リリーさんはそう言いながらも、集中して電波の発信元を探っているようだ。
「時計を五個、どうしたと思う?」
『分からない。さっき何分くらい前だったの? ジョナのプライベートナンバーを何気なく押したと言ったでしょう。『115001』を押して電波を発信した以外は考えられない。それがタイミングよくキャッチされたのよ。だからここの位置が把握できたのよ。意味が理解できないけどね。向こうも『ムージュ号』を探してたのでは、一人だけに絞った方がこちらのパワーが出ると思ってさっきからジョナの番号を発信してるけど、だから会話がちょっとおろそかになったよ。ごめんね。分かんないな。方向すらつかめない』
と、彼女はそう説明をしていた。
リリーさんが私の言葉に返事をしないなんて、今までになかったことだった。
『もしマギーが上に行ったらジョナの時計に発信してみてよ。上だと一定の場所に停泊してるからね。ここだと地球の自転と公転で『ムージュ号』の位置が移動してる。キャッチが難しいと思う。十一学年の彼女たちは上の存在を知らないからね』
と、彼女はまた続けざまに話をしていた。
上の世界の存在は十三学年になってからの知識である。
リリーさんは私に説明しているのと同時に、自分の行動を知らせているようだ。
私は意味を理解するのに少々時間がかかった。
彼女たちが生きていればいい。
助けられた理由は後から考えるとして、時計を五個とはどういうことなのだろうか
時計の存在の方が重要である、と私も理解できた。
「……上から何も言ってこなかったらどうするの、艦長だけに知らせておこうか」
と、私は彼女が忙しいだろう思い、しばらくてそう言うと、
『もう一度連絡があってからでもいいのでは、あれだけの話しでは状況がつかめないし説明も難しいと思うよ』
確かにリリーさんの言うとおりだ。
ジョナは助けてもらった、と確かに言った。
あの状態でどうして助けられたの?
エネルギーが必要だと言ってたけど、私にはその意味も理解できない。
でも、彼女たちが生きてることだけは確かだ。
あの声は間違いなくジョナだった。
☆ ★ ☆
「やはり、時間が短かかったですね」
と、彼女はジョナに話しかけていた。
「でも私たちがあなたに助けてもらい、生きてることは理解できたと思います」
と、ジョナはそう言ったけど、それだけでも十分だと彼女自身は思っていた。
「私は地球の方角は知ってるのよ。でもあなたたちが生活してた『ムージュ号』の位置がなかなか確認できないのね。今回はタイミングよくキャッチできたけど、時計の話しが途中で途切れたから……」
と、彼女は時計の存在をいちばんに話してもほしかったのだが、自分の手違いで通信が切れたことは言えなかった。
「私はあなたたちの意識を分析し、あなたたちの言葉を理解して会話が成立していろいろなことが分かりました。だからあなたたちを早く返してあげたいけど、エネルギー不足でもう少し時間が必要なのよ。ここの復興にもエネルギーが必要だし、あなたたちの生命維持装置のこのドームにもエネルギーを使ってるからね。『ムージュ号』の位置確認ばかりに時間とエネルギーを使えないのよ。ごめんなさいね」
と、彼女がそう説明すると、
「分かってます。ほんとうに感謝してます。私たちは五人はここで頑張りますから大丈夫です。キャプテンに私たちのことを知らせることができたことだけで十分です。私たちはキャプテンを信じてます」
と、ジョナは力強く言ったのだ。
ジョナは自分たちが生きていることを伝えられたので、キャプテンとリリーさんが必ず連れ戻してくれると希望が持てたのだ。