第九話 エンドローリング
少女は近くのベンチに座りました。
そして、隣に座っている人物に話しかけました。
「良い天気ね」
「そうですね」
少女の隣にいるもの、つまり私は答えました。
まさか話しかけられるとは思っていなかったので、少しびっくりしました。それでも驚きの表情を見せずに私ははぐらかします。
「こんな日は散歩でもすると楽しいかもしれませんね」
「そういう話をしたいんじゃないのよ」
少女は怒ったように言いました。はぐらかしは失敗したようです。
「私は貴女と……貴女っていうのは何だか呼びづらいんだけど、何て呼べば良いのかしら?」
「本来、私はただの地の文です。こうして話しかけられることは前提とされていませんから、その問いに答えるのは難しいですね」
私がそう答えると少女はイライラした様子で言いました。
「じゃあ、ジノブンさん、私はね、“昔々あるところに”“めでたし、めでたし”っていう話がほしいの。何周しても納得できるところにたどり着けないわ」
「おや、貴女を導くのは私ではありませんよ。この文を読んでいる読み手の皆様の選択が貴女を導くのですから」
私に何かを期待するのは筋違いというものです。私はただ、語るだけで何もできないのですから。
「こうしてここに来たのも一つの選択の結果で、貴女の物語の今回の終わりなのです」
「私に選択権はないってわけ?」
「そうです。物語を作るのはいつだって語り手や書き手、物語を完成させるのはいつだって聴き手や読み手なのですから。そして、この物語に関して言えば、それは貴女の役目であると同時に、貴女の役目でないとも言えるのです」
「物語の事情って難しいのね」
私が言ったことを理解したのかしてないのか、少女は首を傾げました。
そして、少女は立ち上がりました。その表情はどこか吹っ切れているように見えました。
「とりあえず、ジノブンさんに何を言っても無駄ってことは分かったわ」
「どこへ行かれるのですか?」
「知らないわ。きっとまた別の終わりに。それか、別の選択肢に行くんでしょ。私にはそれしかないから」
「では、次の選択肢の先にある物語がハッピーエンドであることを切にお祈りしていますね」
私は心を込めてそう言います。少女もまた、私を見つめて真摯に言うのでした。
「私もそう願うわ」
少女は笑顔でした。
End 2『エンドローリング』
※
まだ、幸せな結末を求めている最中。
End 2『エンドローリング』へようこそ!
メタエンディングをやろうと思ったらこうなりました。「地の文が「」を使って話し出す……あれ、それってもう地の文じゃなくなってね?」とか色々考えましたが、もうそこは突っ込まないでください(殴
他にも色々なエンディングがありますので、よろしければ読んでやっていただけると嬉しいです。