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第八話 民衆の声とは

 そこで少女は、人を呼び集めて再び偉い人の元を訪れました。


 どうやって人を集めたかって?

 少女には友達がたくさんいましたので、

 友達や

 友達の友達や

 友達の友達の友達や

 友達の友達の友達の(以下略)

 ……とにかくたくさんの人にネズミ算式に声をかけたのでした。

 このご時世、特にSNSなんかも発達していますから、それは難しいことではありませんでした。老若男女がそこに集いました。


 そんなわけで、偉い人の家の前にたくさんの人が押し寄せていました。

 いくら偉い人でも無視できない数の人が集まっています。


 偉い人は偉そうな服を着て、高級そうなバルコニーから偉そうに人々を見下ろしました。

 上空には報道ヘリが飛びかっていました。


「貴様ら」

 偉い人は偉そうに何か話し始めましたが、内容は何も聞こえませんでした。

 理由は簡単です。

 人だかりの声の方が圧倒的に大きかったからです

 民衆は思い思いに勝手なことを話していましたが、それでも偉い人の話を遮るのには効果抜群でした。


「聞いてください!」

 代わりに少女はが叫びました。

 肉声では声が小さすぎたので、あらかじめ用意しておいた拡声器を使いました。

「うるさい!黙っていろ!ちびっこが!!」

 そんな少女を見つけた偉い人も高級そうな拡声器を秘書に持ってこさせて応戦します。

「はあ!?うるさいのはそっちだろ!」

「黄金の拡声器なんかに税金使ってんじゃねえぞ!!」

「嬢ちゃん、構うな!しゃべれ!」

「祭りだ!祭り!!野暮なこと言うな!おっさん!!」

「民衆の声を聞かない気なの?!!」

 民衆は各々そんなようなことを叫んでいます

 不服そうな顔でしたが、偉い人は空気を読んで黙ったのでした。


「あ、あの!!」

 少女は緊張しつつも言いました。人だかりはシンと静まって少女の話を聴いています。

「私、語り手の物語が好きだったわ。とても素敵で輝いていた。だから、また“昔々あるところに”“めでたし、めでたし”って話を聞きたいの」


 少女がそう言った瞬間、空気が一気に変わり人だかりはざわつき始めました。

「語り手?あの語り手か?」

「人を不幸にする呪いの話……」

「あれか、ちょっと前にニュースになってたヤツ」

「禁止されてたよな、確か」


 ネタ晴らしをすると、実は人だかりのほとんどは興味本位で集まった人たちでした。

 何やら面白そうなことが起こるぞと参加した人、以前から偉い人に対して鬱憤が溜まっていただけの人、SNSで友達に誘われたから来てみた人、そもそも人づての人づての人づてでかなり尾ひれのついた話を聞いて来た人……そんな人が大多数で、この集まりの本来の目的を知っている人はほとんどいなかったのです。


「あんな奴、二度と語らなきゃいいんだ!」

 民衆の中からふとそんな声がしました。

 それを皮切りに民衆の声が大きくなりました。

「そうよ!不幸な話なんていらないわ!」

「子どもに悪影響を与えるもんなんかいらない!」

「お嬢さん、そんな物語聞いちゃダメだよ!」

「もしかしてあの語り手に誑かされたのか?!」

「こんな幼気な女の子になんてことすんだ!」


 民衆の声が段々大きくなっていきます。

 暴力的な言葉も飛び交います。

 すべて語り手への批判でした。

 騒ぎに困っていた偉い人は今は少女に向かってしてやったりな笑い顔を向けています。


 少女は悲しくなりました。

 たくさんの人を集めれば、みんなで声を合わせれば、

 偉い人に届くと思っていたのに、かえって語り手を貶めてしまう結果になってしまったのですから。


 少女は泣きそうになりました。


 その時、


【選択肢】

 1、空に銃声が響き渡りました。→『第十四話 語るものたち』


 2、少女は目を覚ましました。→『第十五話 少女の夢』


 ※



 友達の友達はみんな友達かもしれないし、そうじゃないかもしれない。


第十四話~第十五話は12/18の21:00以降UP予定です。

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