第六話 語り手と聴き手
語り手は少女の提案に反対しました。
「君の気持ちは嬉しいですが、やっぱりそれは無理です。私の物語は、私が語るべきものだと思いますから。だから…」
「だから…“ごめんね”?」
提案を反対された少女でしたが、そこまで残念には思いませんでした。むしろ、何だかおかしく思い笑ってしまったのでした。
「いいえ、違います」
語り手は即答しました。
「だから、もう一度語ろうと思います。自分の言葉を、自分の物語を、自分の口から、自分の意志で」
少女はまた笑いました。
「本当に…語り手の事情って面倒くさいのね」
素敵な笑顔でした。
昔々あるところに、一人の語り手と一人の聴き手がおりました。
語り手は国から言葉を禁じられ、一度は語ることを諦めました。
聴き手はそれでも語り手の物語を愛していました。
それを知った語り手は、だからこそ、決意したのです。
自分の物語を聴いてくれる人がこの世に一人でもいる限り、その一人に対してだけでも良いから語り続けよう、と。
そして、語り手と聴き手は共に幸せな物語を楽しみながら、二人きりで幸せに暮らしましたとさ。
めでたし、めでたし。
End 1『語り手と聴き手』
※
たった一人の大切な人のために。
End1『語り手と聴き手』へようこそ!
全End中、最も童話っぽい終わり方だと個人的には思っています。
自分で言うのもなんですが、当人たちが幸せそうで何よりです。
他にも様々なEndがありますので、よろしければ巡ってみてくださいね。