第十三話 語らないもの
そして、ナイフを振り下ろそうとしていた語り手は、一瞬の躊躇もなくそれを振り下ろしました。
昔々あるところに、語ることを奪われた語り手がおりました。語ることは語り手のすべてでした。魂でした。命でした。つまり、すべてを、魂を、命を奪ばわれたのでした。
だから、語り手もまた、奪ったのです。すべてを、魂を、命を。
赤く温かい血だまりに一人で立ち尽くしたその人物は、もはや語り手と呼べるようなものではなくなっていました。
「あ……ぁあ」
語り手だった者はその場に崩れ落ちました。言葉にならない音を口から垂れ流しています。
「あああ……ああぁ」
語り手だった者は手に持ったナイフを自ら喉に向けました。語る言葉を真の意味で失った今、無意味な音を垂れ流すだけの喉などもう必要ないと感じたのです。
なので、
End 6『語らないもの』
※
言葉で人は殺せる。
End 6『語らないもの』へようこそ!
分かりやすくバッドエンド直行っぽい選択肢を選ぶと行きつくこのエンド。
初見でここに行きつく方はあまりいないんじゃないかな、と勝手に予想しております。他のエンドの中にはハッピーエンドもございますので、気を落とさずにもう一回巡っていただけると嬉しいです。