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第一話 昔々あるところに、

マルチエンディングものです。各話最後に選択肢がありますので、選択しながら読み進めていってください。

 昔々あるところに、一人の語り手がおりました。


 語り手の話はいつも「昔々あるところに、」で始まり

「めでたし、めでたし」で終わるので

 子どもたちは「いつも同じでつまらない」と言い、

 大人たちは「バカげた妄想」と切り捨てました。


 語り手はそれでも頑なに

「昔々あるところに」で

「めでたし、めでたし」でした。

 語り手が自分の作る物語を愛していたからです。


 しかし、ある日のことでした。

 語り手の住む国の偉い人が、語り手の噂を聞きつけました。

「語り手の物語は、イカレタ妄想話。国民に悪影響を及ぼすに違いない。語り手が“昔々あるところに”“めでたし、めでたし”と語ることを禁じよう」


 これらの言葉が禁止されたその時から、語り手の語りが一変しました。

「今、この時この場所に」

「一人の殺人鬼が笑っていました」

「手には血塗られた包丁を握っていました」

「人々は悲しみに暮れて一生を過ごすでしょう」


 語り手は不幸な物語しか語らなくなりました。

 語り手は不幸な物語しか語れなくなりました。

 語り手の愛した物語を語り手は一切語れなくなってしまったのです。  

 語り手の話はその日から、残酷で残忍で悲惨で凄惨で不幸で無残になったので、

 子どもたちは怯え、大人たちは「不幸がうつる」と怯えました。


 しかし、ある日のことでした。

 語り手の住む国の偉い人が、語り手の噂を聞きつけました。

「語り手の物語は、無慈悲な残酷無情。国民に悪影響を及ぼすに違いない。語り手が残酷で残忍で悲惨で凄惨で不幸で無残な物語を語ることを禁じよう」


 そうして、何も語れなくなった語り手は独りぼっちになってしまいました。

 語り手は悲しくなりました。

 物語が語れないことを恨みました。

 生きがいを失くしたことを憂いました。



 ※



 ところで……

 昔々あるところに、一人の少女がおりました。


 少女はいつも「昔々あるところに」で始まり、「めでたし、めでたし」で終わる語り手の話を熱心に聴いていました。


 何故なら語り手のお話は、常に幸せな物語だったからです。

 周りがどんなに貶そうとも、少女だけは語り手の幸せな物語を愛していたのでした。


 しかし、ある日のことでした。

 少女の住む国の偉い人が語り手の噂を聞きつけました。

「語り手の物語は、イカレタ妄想話。国民に悪影響を及ぼすに違いない。語り手が“昔々あるところに”“めでたし、めでたし”と語ることを禁じよう」


 これらの言葉が禁止されたその時から、語り手の語りが一変しました。

 語り手の話は人の心を抉り、悲しませるような

 または悲痛な叫びのようでした。


 少女は語り手の幸せな物語を聴かなくなりました。

 少女は語り手の幸せな物語を聴けなくなりました。

 少女の愛した物語を語り手が一切語らなくなったからです。


 それでも少女は語り手の物語自体は聴き続けていました。

 その悲痛な叫びを聴いていました。心を痛めながら聴いていました。

 そして語り手にそんな話させているこの国の偉い人を恨んだのでした。


 しかし、ある日のことでした。

 語り手の住む国の偉い人が語り手の噂を聞きつけました

「語り手の物語は、無慈悲な残酷無情。国民に悪影響を及ぼすに違いない。語り手が残酷で残忍で悲惨で凄惨で不幸で無残な物語を語ることを禁じよう」


 少女はすっかり語り手の姿を見なくなりました。物語を聴かなくなりました。

 そこで少女は、



【選択肢】

 1、語り手の元を訪れました。→『第二話 胸の中にあるもの』へ


 2、この国の偉い人の元を訪れました。→『第三話 小さな声の先』へ


 3、爆弾魔の元を訪れました。→『第四話 二人の算段』へ




 ※




 語るために、語り始めよう。


第二話~第三話は、12/15の21:00以降にUP予定です。

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