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Sunrise

作者: 聖魔 羅夢

恋愛要素が恐ろしく少ない上、謎おおしです。


まぁ設定上謎にしてるんですけど…。

 …だれか!誰か助けて…!

 青空のような美しい瞳に涙を浮かべながら少女は闇雲に走っていた。

辺りは暗く、何も見えない。

 だけど少女は彼を求めて走り続けるのだった…。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 美しい室内。豪華ではないがベージュを基調とした部屋は無駄なものがなく、スッキリとしている。

しかしそのなかにいる少女の顔色は良いとは言えないぐらい悪かった。


 「…おかーさまがいない日か…」

 こんな日はなかった。ずっとおかあさまは私の側を気持ち悪いぐらい離れてくれなかった。

起きたらおかあさまがいて、私の後をつけるようにして側にいた。

 茶色のお団子頭に、嘘くさい笑み。化粧も施していないシミだらけの顔。

思い出しただけで鳥はだがたつ。


 することがない。困った。

いつもならおかあさまに色々勉強させられている頃なのだけど。

 すると、とたんに思い出したのだ。庭に住んでる男の子を。

庭と言っても家のど真ん中にある、芝生がしかれてあり、男の子の部屋があるだけのスペース。

あぁ、まえ庭に入っておかあさまに怒られたな……

 小さな赤い屋根の犬小屋のような自分の部屋の上に座っていつも何かを考えてる風に上を見上げる男の子。

時々入り込んでくる風が彼の胸元までの髪を揺らす様はとても美しく、悲しそうでもある。

 彼に遊び相手をしてもらおう。そう思い、庭へと続くガラスのドアを開けたのだった。




 「誰」

 ひどく無機質で感情の無い声にそう問われた。考えてみれば彼と話したことは一度もないのである。

「あ…リミィです、あなたは?」

 緊張で声が上ずった。それでも根性で微笑む。

「…ルドルフ」

 そっぽを向かれてしまった。藍がかった黒髪から覗く耳は真っ赤である。

「…良い名前ですね」

…あのおかあさまから貰ったリミィ、なんて名前よりも、ずっとずっと良い名前。

 「…どうした、急に黙りこんで。顔真っ青。」

 ルドルフが顔を覗きこんできた。

真っ白な肌にルビーのような瞳。同じ10歳位に見えるのに少し大人びて見える。

 「…あ、大丈夫… 目、ルビーみたいで綺麗」

キラキラと輝く瞳。自分の瞳はどこにでもいるような空色の瞳。赤くて珍しく、羨ましい。

 「リミィの方が綺麗。柔らかい色合いで美味しそう」

 更にぐっとルドルフが顔を近づけてきた。近い近い。

 至近距離に恥ずかしくなって目を閉じると瞼に暖かく湿ったものが触れた。まさか…


舐めた?


 「ななななにしたにょ!?いま!」

驚いて目を見開くと近くにあるルビーの瞳が微笑んでいた。

「美味しそうだったから、つい」

「…もう」

 顔が熱い。火照った頬に手を当てていると、ルドルフがふふふ、と小さく笑ったのだった。





 二人で暫く談笑していると、急にドドド、とドアを叩く音がした。

そちらに目を向けると、大きく見開いた血走る目を吊り上げ、シミだらけなうえにシワまで増やした顔を恐ろしく歪ませたおかあさまがいた。

 ……怒ってる。

 そのようすは般若よりも恐ろしい、魔物。

反対側のドアから走って逃げる。ルドルフが制止の声を上げるがそれも聴こえず、ただひたすらに走った。




 出たのを後悔した。辺りは昼だというのに真っ暗で、目を開いているのに目を閉じているかのような感覚に陥る。

目を開けているのに閉じている。光を感じようと、目を開こうとするのに真っ暗で何もない。

 後ろからはおかあさま……いや、魔物が走って追いかけてくる足音がする。

「…たすけて!」

たすけて、たすけて、たすけて、たすけて!

 闇雲に走りながらただ、たすけてと叫ぶ。

「たす…け…た…すけ…て」

 声も掠れ、水分は止まらない涙と短い呼吸に奪われていく。

 

 足音は絶えない。むしろ数が増えてる気がする。

と、足元の何かに躓いた。後ろからの足音はより一層大きくなり…だれかの腕に捕まった。

「は…なし…て」

 力なく訴えるも離してくれそうにない。

 すると、横から強い衝撃が来た。

「ばぁさん、これは俺のだ、返せ」

 地の底から響くようなルドルフの声。…ルドルフ?

「………私を、たすけちゃ…駄目…」

 ルドルフが助けてくれたのである。しかし彼を巻き込むわけにはいかない。駄目、と繰り返し呟くがルドルフに唇を塞がれた。

「…少し黙ってて」

 恥ずかしくて言われた通り黙っていると彼は柔らかく微笑んだ後、また冷たい瞳でおかあさまを見据えた。

「…退け。さもなくば…」

 ルドルフはそこで言葉を切って、私の頭に掌を当てた。

何してるのか私には分からなかったがおかあさまはひっと情けなく声をあげた。

「…それだけは!」

 おかあさまはじりじりと後退り、そのまま逃げた。

「…何なの?」

 首をかしげて聞くも、ルドルフはなにも言わない。しかし暫くたってこう言った。

「…つづきがしたい」

 何の?と尋ねる間もなく。

噛みつくようなキスをされたのだった。

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