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魔王とお母さんと私  作者: 七支
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そして、再びの日曜日ですよ!


あの顔拓事件の夜、ガラステーブルをお母さんに見せて二人で笑った後ふと気付くと、怒り狂ったメッセージが鏡に浮かんでいた。全身が映るサイズの姿見いっぱいに浮かんだ怒りの文句に乾いた笑いを浮かべつつ斜め読みしていたら、なんと浮かんだ文字がスクロールして続いてて、異世界人というのはケツの穴ちっちぇえんだなあ、とうんざりした。

それでもまあ一通り読むのが義理ってもんかと思って読み進めると、最後の最後に小さい文字でこちらからのコンタクトの方法が書いてあった。


――紙にそちらの言葉で伝達事項を書いて、文字を書いた面を鏡に貼りつければ、こちらで転写して翻訳してやる。


って、私とお母さんがやった方法じゃん! 最初からそう設定しておいてよ! ていうか、してやるってなにさ! させていただく、でしょうが!

うがあ、と叫びそうになったけど、夜に叫んだらご近所迷惑だって怒られるから我慢して隣を伺うと、お母さんは「あらあら」なんてにっこり笑ってルーズリーフに「迷惑ですから二度と来ないで下さい」って書いて貼ろうとしていた。つまりすごく怒ってるんですね、分かります。

でもさ、異世界トリップだよ? 細かいことにこだわって話が進まないどころか話が始まらないのはつまんないよね! 女子高校生のたしなみとして、チートとか逆ハーとかに興味あるんだもん。

「ねえねえお母さんお母さん。外人さんなんだから、こっちの礼儀にうとくても仕方なくない? わざわざ来るって言うんだから、話ぐらい聞いてあげてもいいんじゃない?」

「……でもねえ、年頃の娘の部屋に湧いて出る男を阻止するのは母親の務めじゃない?」

「それ、湧いて出るの意味が違うと思うよ……」

すいませんねえ、彼氏の一人も連れ込めないふがいない娘で! でも、異世界トリップだったらモテ期到来かもしれないじゃん。

「娘の恋愛チャンス潰す母親ってどうかと思うよ~。お母さんだって、娘がモテた方がいいでしょ!」

「お母さん、あんな青い髪の息子は嫌だわ!」

「私もアレはないと思うけどさ、でも、話も聞かずにシャットアウトは無いんじゃない?」

「……まあ、この部屋に湧くんだから、あなたがいいって言うなら反対はしないけど」

でも、男の子が来るんだったら気合い入れて掃除しなさいね、なんてヤブヘビな注意を受けて、それでもなんとかお母さんの許可を取った私は必要事項を書いて鏡に貼り付け、次の日曜の約束を取り付けたのだった。


そして日曜日の午後二時ちょうど、件の畳の前でなんとなく正座して待っていると、目の前の畳が青白く光って魔法陣が浮かび、見覚えのある男が現れた。

うん多分、先週の人だと思う……正直、青い髪とズルズルした格好のインパクトが強くてあんまり顔は覚えてなかったんだけど、睫毛まで青いもん、この人だよね。

「……」

「……」

相手からの挨拶を受けてから何か言おうと思っていたので、ついつい無言で見つめ合ってしまった。何だこの空気。

「お邪魔します、は?」

「なんだと?」

「挨拶して。それから、靴脱いでよ」

「我に命令するか、人の子よ」

なんか、この間も思ったけど、偉そうでやな奴だなあ! もう帰れって言おうか一瞬考えたけど、下でお母さんがお茶の準備してるから我慢する。私が呼ぶって言ったのに、話もせずに追い返したら叱られる気がする。

「ま、とりあえず、ようこそいらっしゃいました」

相手が無礼だからっていうのは自分が無礼を働く理由にはなりません、というお母さんの教えを受けて育っているので不本意ながら頭を下げると、青髪男は満足そうに笑って「案内せよ」と言った。偉そうな態度にむっとしたけど、こっちが下手に出るだけでこんなにご機嫌だなんてチョロそうだからいいか、と思い直して、でも断固として靴を脱ぐように言って、階下のお母さんのところへ案内した。


次は話が動くと思います。

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