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<9-5>かくして準備は整った

「遅くなりました。でも完璧です。しかし、本当にこんなんで良かったんですか?いったい何に使うんですかねぇ、こんなもの……」

 鳴門刑事は少しだけ息を切らしながらレジ袋の中を覗きながら疑問と不安と期待の混ざり合ったなんとも言えない表情をしていた。


「ふむ、拝み屋のオッサン、これでいいのか?」

 後藤は鳴門刑事からレジ袋を受け取ると怪訝そうな顔で袋の中身を一つ取り出した。


「おー、それじゃそれ、やっぱ昭和の円谷の仕事は秀逸じゃのぉ」

 そういって下駄の男はレジ袋と後藤が手にしているソフトビニールのおもちゃを受け取った。

「ゴモラにエレキングにベムスターじゃな。そして我らがヒーローウルトラマン、セブン、ジャック」

「ジャックって、そんな名前のウルトラマンいましたっけ?」

「後藤さん、それ『帰ってきたウルトラマン』の本名ですよ。へぇ、それにしても、尾上さん、本当にお詳しいんですね。ボクも大好きなんですよ。DVDとか借りて全部見ちゃいましたよ」

 鳴門刑事は、後藤の視線を気にしながらも、これから起きる事が何なのかワクワクしている感情を抑えきれない様子だった。それを後藤が咳払いで一括した。

「え、えへん!で、拝み屋のオッサン、次は何をすればいい?」


 下駄の男は、イタズラを始めようとする子供のような表情で後藤を上目遣いで見ると、鳴門刑事に向かって次の指示を出した。

「すまんがのぉ、鳴門刑事、この近くに子供が一杯遊んでそうな公園にいって、そうだなぁ5歳くらいの子供で、ウルトラマンのオモチャで遊びたい子供を捜してきてくれんかのぉ。ちゃんとお母さんに許可をもらってくれ、ちょっとした雑誌の取材とか、大学の研究とかなんとか言ってうまく誤魔化すんじゃよ。段取りができたら連絡を、そこにすぐに向かうから」


 鳴門刑事は少しばかり残念そうな顔をした。きっとこれから何かをここで始めるに違いないけど、自分はそれを見ることはできない。でも、まぁ、後藤ではまず母親や子供に信用されないだろうことも十分に理解できたし、大体が、後藤はそういう事が苦手なタイプだ。


「わかりました。多分、西港公園なら、今の時間、遊んでいる子供がたくさんいると思います。段取りできたら連絡します。じゃぁ、あどで!」

 鳴門刑事が勢いよく玄関を飛び出すと、下駄の男は、厳しい表情で後藤に語り始めた。


「このようなことには、なるべく素人は巻き込みたくないんじゃ。もう十分懲りておる。その点お主は、なんというかこう、いい感じに鈍いところがある。それは欠点ではなく、すばらしい長所じゃよ」

「それはどうも、なんだかちっとも褒められた感じはしませんが、まぁ、いいでしょう。わたしもかわいい部下をあまり危険な目にはあわせたくない出すし、それに……」

「子供が苦手か?いや、違うな、母親の方じゃの」

「ちぃ、あんた本当に……まぁ、いいですよ。なんだかわかりませんが急がなきゃまずいんでしょう?で、こんなもんいったい何に使うんです。まさか、子供に遊ばせて終わりじゃないでしょう?」


「いやぁ、その通りじゃ……まぁ、その前にやらなきゃならんことはあるがのぉ」

 下駄の男はまた、意地悪い表情をしながら、それでも目の真剣さは、更に増しているようだった。どうやら、下駄の男の言っていることは嘘や冗談ではないようだが、後藤には皆目検討がつかなかった。


「これを預っておいてくれ、これはまだ使わん」

 そういうと下駄の男は、ウルトラマン、ウルトラセブン、ウルトラマンジャックこと帰ってきたウルトラマンのソフビ三体を後藤に預けた。下駄の男はゴモラ、エレキング、ベムスターの三体の怪獣を袋の中から取り出し、テーブルに並べると、袋に一緒に入っていた筆記具、筆ペンと半紙を取りだし、それを3つにおってきれいに破くとなにやら文字を書き出した。


「まじないのようなものですか、それ?」

「まぁ、間違ってはおらんがのぉ、まぁ、より作業を効率的に行うための儀式のようなものじゃ」

「儀式、ですか?」

「そうじゃ、人間は何か一つのことを始めるにも終えるにも儀式をやったほうが、スパッと頭の中を切り替えることができる。そういう意味じゃ儀式はとても重要なんじゃよ。とくにこっちの領分ではのぉ」


 かくして準備は整った。


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