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<8-4>集まった4人

 呆然と暴漢が逃げ去るのを見送る真壁に、下駄の男は手を差し伸べた。

「心配はいらん、ワシはおぬしの味方じゃよ」

 差し出された手を眺めながら、真壁は何とか自力で起き上がろうと試みたが、どうにもうまくいかない。不本意ではあるが真壁は下駄の男の手を借りることにした。下駄の男の手は、冷たく、しわだらけだったが、恐ろしいほどの生命力に満ち溢れていた。真壁のそれとは比べ物にならない。


「遅くなりました、大丈夫ですか?」

 暴漢二人がバイクで逃げ去った方向から2人の安否を気遣う声がする。息を切らして走ってきた後藤、それに鳴門刑事だ。


「ワシか、ワシなら心配いらんよ。ちと肝を冷やしたがの。あー、こっちも大丈夫だといいたいところじゃが、急がないと取り返しのつかないことになる」

 後藤は警察手帳を真壁に見せた。

「真壁直行さんですね。江戸川南警察署の後藤です」

「同じく鳴門です」

「あなたの身に危険が迫っていることについては、いろいろと事情があるようなんですが、おってそのことはお伺いするとして、まずは身の安全を確保したいのですが……」

 後藤は下駄の男に目をやり、これからどうするつもりなのかを聞こうとした。


「そうじゃな、まずはワシの用を先に済まさせてもらって、全てはそれからじゃなぁ。まずはお主の家まで行こうか。あまり気は進まんじゃろうが」

「わかりました。ご案内します」

 いつもの真壁であれば、理路整然と警察の介入を拒んでいただろう。正直それができればそうしたいと真壁は思ったが、どうにも下駄の男には抗えなかった。


 真壁が歩き出す。後藤の合図で鳴門が真壁の横につく。護衛役だ。後藤はその後ろで下駄の男と並んで歩く。

「まったく、あんた本当に何者なんですか?これは、もうお返ししたほうがいいですかね」

 後藤は胸の内ポケットから下駄の男に渡された携帯を取り出した。

「こんなこともあろうかと……ですか?しっかりあんたの位置情報が表示されてる。おかげで電話が切れても迷うことなくここまで来れましたがね。どれだけの法律を犯しているやら」


「ふん、テクノロジーというものは使って何ぼのもんじゃ。規制だの許可だの法律だのくだらんわい。そういうお主も、単独捜査やら命令無視やら、臨機応変が過ぎると聞いておるぞい」

「まったく、千里眼とか地獄耳とか持ってるんですか?それならきっと、誰が襲ってきたのか、大体検討が着いているとか?」

「ふん、お主も食えん男じゃのぉ、まったく」

「白鷺組はこっちで抑えました。タイミング的にはぎりぎり間に合ったと思ったんですが、どうやら制御が利かなかったってところですかね」

「左巻きのヘビじゃよ」

「左巻きのヘビ……左螺曼蛇サラマンダ!いや、そんなはずは……あれは確か11代目のときに解散してもう、5年近くになるはずです」

「どういうわけかここ半年くらいの間に、再結成されたらしい」

「つまり12代目に誰かなったと?」

「まだ表だっては動いてないようじゃが、自然に結成したというよりは、どうも誰かが後ろでお膳立てをしているらしいのぉ」

「警察でも把握していない動きを、なんであんたが」

「わしか、わしは11代目とはちと面識があってのぉ。奴の話ではもうすでに組織は50人規模まで集まっていて、頭も12代目じゃなく13代目に替わっているそうじゃ」

「つまり12代目はもうなんかでパクられているとか」

「いやぁ、それはどうかのぉ。もしかしたらもうじき合えるかもしれんぞぃ」


 後藤はいぶかしげに下駄の男を見つめたが、それ以上下駄の男はこの話をしそうになかった。後藤は直接はこの暴走族に関わりを持っていない。管轄外だ。暴力団と暴走族やチーマーとは、それほど結びつきが強くはない。場合によっては反目……というより、暴力団のシマにちょっかいを出すようなことがあればただでは済まない。それはそれで住み分けがされているのである。


『もうじき合える』とはどういうことなのか?後藤は一瞬警戒を高めたがすぐにそれをやめた。どうもそういうことではないようだ。いつもとはちがう胸騒ぎがする。下駄の男の予言めいた言葉は気になるが、ここは下駄の男に従うほかないだろう。そして下駄の男の予言は、このあと的中することになる。およそ後藤が想像もつかないような形で……


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