表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/56

<4-3>ハッキング

「えーと、どれどれ、どんなヤツかのぉ」

 その部屋は書斎と言うにはあまりに雑多としたし、仕事場というにはあまりに整理がされていないようだった。壁には本棚がぎっしりと並び、様々な書籍が縦に横に積まれていた。机は大きく両袖に引き出しがついているが、その引き出しは開きっぱなしで、その上にいろんな書類が山積みにされ、とても引き出しを使うことはできそうもない。机の上には数台のPCが置いてあり、液晶のディスプレイが4面すべて違う画像が表示してある。


 そのPCに向かって一人の男がブツブツといいながらキーを叩いている。

「うん、これでよし」

 男が開いているのは警察のデータベース。男は警察のデータベース侵入している。俗に言うハッキングである。


「どれどれ、ほー、悪じゃのぉー、まぁ、だからといって死ななぁならんことをしたわけでもないかのぉー」

 男が見ていたのは加藤三治、三河剛、山本茂という男のデータだった。

「おー、こやつ、ワシの傘を盗んだ……うーん、少しお灸が足りんかったかのぉ」

 男は山本茂という若い男の写真を見ながらあの雨の日のこと、山本が男の傘を盗んだ日のことを思い出していた。

「何の因果かのぉ、何の応報かのぉ……」


 次に男は警察職員のデータベースを検索し始めた。後藤という名前、江戸川南署で検索条件を絞る。

「ほー、いい面がまえじゃのぉー。後藤忠則巡査部長 うーん、37歳か、わかいのぉー」

 しばらく後藤に関するデータを閲覧すると、画面を落とした。「長居は無用じゃ」


「さて、問題はあの男じゃが、さて、およそは見当がつくが、どうしたものかのぉー」

 男は――下駄の男は再びPCのキーを叩き始める。画面にはいくつかの項目が打ち込まれては、新しい画面が立ち上がる。どうやら次のハッキングを始めたようだ。それから30分ほどが経過し、一つの画面で下駄の男の手が止まった。

「よし、あとは、パスワードをあてるだけじゃのぉー」

 男はパスワードを解析するソフトを立上げ、しばらく画面の動きを待った。


「ふん、まったく、脆いわ」

 あっという間にパスワードが解除され、新たなデータベースが画面上に開いた。

「ワシの名前、返却した時間、その後5分以内の返却データ。延滞なし、それから、あとなんかあったかのぉー」

 いくつかの条件でデータを絞り込み、下駄の男はついに一人の男にたどりついた。

「真壁直行……なんともまぁ、硬そうな名前じゃわい」

 下駄の男は真壁直行に関するデータを閲覧し、住所をメモした。

「最近借りたのは…『シックス・センス』ほぉー、なるほど、なるほど、こいつはまた、少々厄介なことになっておるかも知れんのぉー」

 下駄の男は禿げ上がった頭をなぜながら、しばらく考え事をしていた。

「ワシも、見てみるかのぉ」

 下駄の男はPCの電源の一部を落とし、部屋を出た。どうやら何台かのPCは常時電源を入れているようだった。


「おー、いかん、ワシとした事が!」

 下駄の男はやや歩いてから立ち止まり、歩く方向を変えた。

「あっちの店じゃ、まだ貸し出し中じゃわい」

 男はいつもとはちがうレンタルショップで『シックス・センス』を借りた。いつも下駄の男が通っているレンタル店でそのDVDは貸し出し中であった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ