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本に入れる探偵の俺、死者の作品の中で真実を探す  作者: 米。


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3/3

(1-3)隠し事

全員で家に入り集会が開かれた。一体、本の内部でなにをしていたのか。

「で、弟の様子はどうだ?って話になって。前より元気ないよって言ったら、すんなりと教えてくれたよ。」

「そうですか・・・。兄はそんなことを・・・。」

栄介は兄のセリフに涙を浮かべながら感動していた。

「いや、おかしいわ。」

突然女性が立ち上がる。クライアントのお母さんであり、シエラの雇い主、佐恵子さえこさんだ。

「あの子は、そんな良いことは言いません。いつもどこかへほっつき歩いて。家ではパソコンばかり・・・。おまけに、お父さんの遺産をすべて株につぎ込んだんですから・・・。あの子は・・・病気であれだけ苦しんでいた姿を知っていたというのに・・・。」

泣き出してしまう。俺たちはお母さんをなだめた。

そうか・・・祐介が稼いだという株。その軍資金は亡くなった父親にあったのか。

「・・・で、ここまでを整理してどう思う?シエラ。」

「だからシエラじゃないって。ほんとはユリ。それとも、ジェームズって言われたいわけ?おじさん。」

「いや、やめとくよ。」

「そのほうがいいよー。人の名前は大切にね。」

「でも、お前は俺のことおじさん呼びなんだな。」

「あれはおじさんの名前にしては贅沢すぎ。」

「何を。・・・まあいい。俺は今回の件。何か裏がありそうだと考えている。」

「そりゃそうでしょ。」

「そうなんだが。なにか、俺たちの会ったユースケと現実の祐介。つながらないような気がしてな。」

「自分の作品内では性格も美化させてるからじゃないの?」

「いや、著作物というのは・・・その人の考えの奥底までをえぐるような、すべてが書かれているはずなんだ・・・。なにか、変だ。」

「ふーん。変ねえ。私は人の考えとかよくわかんないからピンとこない。」

「確かにそうだな。」

「肯定されるとむかつくな。」


さっきまで泣いていたお母さんがゆっくりと立ち上がる。そして、『異世界伝説~』を眺め、中身をぱらぱらとめくった。

「こんなの、あの子じゃない!こんなの!」

お母さんは作品を破ろうとした!俺たちは止めに入ろうと動き出した。しかし、一番最初に動き出していたのは、意外にも栄介だった。

「やめてください!!!」

彼がそれほどまでに大きな声を張り上げるのは誰にとっても予想外だった。しばし、静寂が訪れた。


「実は、その作品。書いたの、僕なんです。」


それは衝撃の告白だった。

「兄のパソコンに合ったデータと言いましたが嘘です。兄のパソコンのパスワードなんてわかりません。本当は僕のパソコンで書いたものを印刷しただけです。間違えて二枚印刷してしまったのが使われると思ってませんでしたが・・・。

栄介は佐恵子さんを見つめた。佐恵子さんは目を背けた。

「お母さんは兄のことを悪者だと言いました!でも、僕にはそうは思えなかった!近くで見てきた!ずっと近くで見てきた兄は!責任感があって!誰よりも優しい人で!だから・・・書いたんです。僕の思う兄を記したくて・・・。そして、作品の中だけでも、兄に会いたくて・・・。」

栄介は泣いていた。

全員が押し黙った。俺は沈黙を破るように疑問を呈した。

「一つ聞いていいか。なぜ、俺に依頼したんだ。佐恵子さんはお前の作品と知らずに依頼していた。しかし、俺のほうはお前自身が依頼したじゃないか。パスワードが出ないことを知っていたんだろ?」

「・・・僕には。それは兄でした。だから。知っていると思ったんです。でも、結局。兄ではなかった。兄ではなかったんですね。」

「ああ、残念ながら、な。」

壁にかかった家族写真は俺たちをあざ笑うかのように微笑んでいた。夏のビーチに光る四人の表情はこの先の試練を知らないのかと思うと、少し悲しくなる。

「・・・ん?いや、待てよ。」

俺はその写真を手に取った。

「試す価値はあるな・・・。」


「本当にできるんですか!?」

「おじさん一人で出来る!?」

うるさい・・・もう少し静かにしてくれないか・・・。

そう心の中で愚痴をたれつつも、意外と眠りは早く来た。枕なんて写真一枚だというのに。




ざあ、、、ざあ、、、

さざめく波の音に目が覚める。青く染まった地平線にぽつぽつと宝石が浮かんでいた。

「ん、、、頭、じゃりじゃりすんな・・・。砂の上か・・・。もうちょっとまともなところにだな・・・。」

遠くに見えるパラソルビーチには、女性が赤子を抱きかかえている。大柄な男性と小さな子供は陸地で砂遊びだ。肌が太陽を反射している。おそらく先ほどまで、水遊びをしていたのだろう。

俺は気づかれないようにゆっくりと近づいた。

「なあ、もし父ちゃんがいなくなったら、お前がみんなを守るんだぞ。」

「ええ!?お父さんがいなくなるなんて嫌だ!」

「はは、もしもの話だ。」

「・・・うん。守るよ。絶対。」

「ありがとう。それが聞きたかった。」

「お父さんも守ってね!」

「ああ!もちろんだとも!」

この時には、死期を悟っていたのかな。そう思う俺の足元には、風に誘われてやってきた3月15日の新聞がくっついていた。

「ああ。パスワード。わかったぞ。」




目が覚めた俺はパスワードを伝えた。

そして銀行には・・・。父親の残した遺産がそっくりそのままと、追加で100万ほどあった。

「あいつは、親子が離れ離れにならないことだけ考えてたんだよ。遺産はすべて溶かしたと嘘をついてケンカしないように。毎日バイトして、少しづつお金をためて。ずっと。ずっとな。」

「おじさん。家のパソコンのパスワードも同じだったよ。中身は就活のページばかりだった。」

佐恵子さんは泣き出した。

「ばかね。全部相談してくれたら・・・。大学ぐらい行かせてあげたのに。」


ーーーーーーー


「ふう、これで一件落着だね。おじさん。」

「おい、ユリ。いつまでついてくるんだ。もうすぐ家までつくぞ。」

「いいじゃん別に。てかさ。銃弾も具材も気づいてなかったね。」

「ん?何の話・・・。ああ・・・、、、。」

俺のくやしげなため息を漏らす。そうか。銃弾で街を騒がしたのはターゲットを呼び込むため。具材がやたら現実にある物なのはこいつも現実にいる人物だから。具材代を持っていたのは先に潜っていたから・・・。すべてが無駄につながって腹立たしい。

一枚上手だったのか・・・。こいつ。

少女は意地悪な笑みを浮かべる。

「ねえ、コミュ力はあるけど考えはダメダメなおじさん。」

「うるせえ。」

「対して、コミュ力はないけど考えは天っ才な私。」

「自分で言うのかよ。」

「ねえ。私たちが組めばいいコンビになるんじゃないかな?」

「・・・は?寝ぼけてんのか?」

「ううん。本気。」


かくして俺たちの奇妙なコンビが結成したのである。はあ、やだやだ。


見てくれてありがとうございます。更新は気長に待っていただけると幸いです。

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