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本に入れる探偵の俺、死者の作品の中で真実を探す  作者: 米。


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(1ー1)投資家の遺産

「本当に頼みますよ!」

「ああわかってる。任せてくれ。今回のために5日間睡眠をとらなかった。ちょっとやそっとじゃ起きないはずだ。大体20時間は保証できる。本はどこだ。」

「これです。・・・。本ではなくて、パソコン内の文章を印刷したものですが。」

「いや、問題ない。へえ、『異世界伝説。現実で最強だった俺は異世界でも無双します』とは。たいそうなタイトルですね。」

「まあ、はい・・・。あれ、ここにもう一部ありませんでしたか?」

「知りませんよ。」

「あれ、そうですか・・・。」

「とにかく・・・。ここに兄の財産の在りかが眠ってるんですよね?」

「おそらくは。」

木製の部屋に疑惑がきしむ。壁にはシリアスな状況とは裏腹に家族の笑っている写真が見えた。

「本当に大丈夫なんでしょうね!?」

「ええ。信じてください。私の能力なら。それとも、能力の説明をもう一度お聞きですか?」

「・・・いえ。いいです。お願いします。」

「わかりました。では失礼します。」

俺はクライアントの兄が書いた作品、『異世界伝説~』を枕に置いた。

「それではお気をつけて。」

「ああ。」

5日も眠っていなかった俺は一瞬で意識を途切れさせるのに成功した。ポケットにある護身用の銃に安心感を感じながら。


ーーーーーーー


がやがやと騒がしい声がする。そうだ。あの珍妙なタイトルの世界に迷い込んだんだった。

鉛のような体を起こすと、日本とは全く別の世界が広がっていた。

「なんでこんなところで目覚めるかね。もっと静かなとこで目覚めたかったよ。作者に文句言ってやろうか。いや、いないのか。」

今回の依頼は大富豪の投資家である田中祐介が死亡したことから始まった。彼に遺言書などは何もなく、銀行の四桁もわからない。当然遺族総出で四桁を探し、見つけた方が財産を継げる奪い合いとなった。で。作品の中に入り込める俺の出番だ。

俺が作品に入れたのは5歳の時だった。「本や漫画を枕にして寝るとその作品の夢がみれる」って話を聞いたのがきっかけだ。そして、目が覚めたら夢じゃなくて本当に本の中に入れちまった。まあ、そういう能力を持ってたってことだな。俺はそれに気づいて、本の中に入って真実を見つける探偵業を始めたのさ。

とにかく、今は情報収集だ。

「おおい、ちょっといいか。」

「どうしました?」

「ここらへんで田中祐介っていう人物を知らないか?」

「ユースケ?ユースケと言いましたか!?」

「え、ええ。」

気弱そうな男性はその名前を聞いた瞬間目の色を変え、飛びかかってきた。

「実は私、一度彼に助けてもらったことがあって・・・。本当に優しくて勇敢で、素敵な人なんです。」

「はあ、そうですか。やけに慕っているんですね。まるで信者みたいに。」

「ええ、そうなんです。彼のとりこになってしまったんですよ。」

俺の皮肉は彼の耳に一切入らなかった。くそ、どんだけ自分を美化していやがる。現実のお前はまともな予想はせず、運だけでトレードを成功させただけの奴じゃないか。

しかし、厄介なのは金庫の番号、一番の情報筋であるユースケが気軽に会えないほど位が上ということだ。

「情報ありがとう。ちなみにユースケはどこにいる?」

「え?知らないよ。でも山のどこかにでもいるんじゃないかな。のんびり過ごすのが好きって言ってたし。」

「チッ、スローライフか・・・。」

「え?どうしたの?」

「いや、こっちの話だ。なんでもない。」

まずった。さらに厄介だ。てっきり、タイトルからどこかのでかい家に住んでるだろうから、王様とかに話を聞けば見つかると思っていたが、そうじゃないらしい。スローライフ系はどこに居住しているかわからない。家を転々として旅をしている、なんて可能性すら出てきた。

「じゃあ、ほかに面識のある人物は知っているか?」

「?ああ、それならここ、アレット王国の王女様と一緒に冒険してるから王室に話を聞いたらどうかな。」

「ありがとう。じゃあな!」

「うん!気を付けて!」

やっぱり王に話を聞くのはベストだな。異世界系を書いているやつなら脳死で王に話を聞きに行ってもいいかもしれない。

【13時をお知らせします】

街に放送が流れた。俺がこっちの世界に落ちたのは12時。俺の睡眠最大時間は20時間。残り19ってとこだな。それまでに穏便に聞き出せりゃいいが・・・。銀行の四桁なんて、拒絶するにきまってるな。作戦で、奴を倒すしかないか。そのためにおびき出しをだな・・・。ここは現実世界じゃない。なら何をしたってかまわないさ。例えば、こいつを使ったりな・・・。

あれ?

右ポケット左ポケット口の中・・・。ない。

周囲を見回す。曲がり角の先に走り去る影がかすかに見えた。俺は全速力で追いかける。

煉瓦の壁を右手に押し、角の先を見ると・・・。銃を構えていた。小さな少女が。

「おい、それはおじょうちゃんの遊び道具じゃない。早く返しな。」

「へーみたことない・・・。なにこれ?」

「だから、早く返しなさい!」

ダン!!!ぐしゃ。

「うっわ、うっさ。なにこれ。」

少女が訳も分からずに打った球は、商店街の商品である木の実にぶつかった。

「おい!ちょっといいかな?」

店員さんが俺たちに向かって走ってくる。

「まずい!ひとまず逃げるぞ!」

俺たちは建物と建物の間を走り回り、なんとか追跡を撒こうとする。

「へー。映画みたいで楽しいじゃん。」

「言ってる場合じゃねえだろ!」

「ねえ、この道具でさ。店員さん威嚇しちゃダメ?」

「ダメに決まってる。いいか!それは簡単に人の命を奪える道具だ!たやすく扱うんじゃない!」

ダンダン!少女は店員の足元をねらって打ちまくっている。

「人の話聞いてるのかー!」

「聞いてるよ。だから当てないように狙っているの。」

ダン!

店員の耳元に球が通り過ぎる。産毛はかっさらったが、本体は無事なようだ。

「お前・・・何者だ?」

「聞いて驚くなよー。私はねー。通りすがりのー。国家転覆組織の団員、シエラ!」

「は?」

「だから武器の扱い上手いの。この国、アレット王国の王様の黒い話とか。ユースケも。黒い話たくさんあるんだよ。おじさんも、国家転覆。するでしょ?」

「いや、ちょっと・・・。」

「あ!出口!」

建物の間から差し込む光に吸い寄せられ、俺たちは駆け出した。

・・・下が奈落と知らずに。

「「え?」」

「「あーーーーー!!!」」

バサッバサッ・・・何やら羽のような音が聞こえる・・・?

「大丈夫だったかい?」

ん・・・?俺は、まだこの世界の中か?目を開けるとそこには、依頼の時に一度見た顔があった。田中祐介だ。

大きなドラゴンの上に座る姿は宣材写真よりも輝いて見えた。・・・多少顔は現実より美化されていたが。

【14時をお知らせします】

(残り時間18時間)

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