プロローグ
どうして、こんなことになっているのか。
正直、さっぱり分からない。
「……アリス」
低く名前を呼ばれて、背中がびくりと跳ねた。
「その顔は何だ。まるで、俺が襲うみたいじゃないか」
「い、いえ……その……距離が、近いなと……」
「こうすれば眠れると言ったのはお前だろう」
ベッドの上でぐいぐいと迫られて、逃げ場はもう無い。
ついにベッドの端と、ヴィクター様の身体に挟まれて、身動きが取れなくなった。
(ち、近い……)
ヴィクター様は、甘えるように私にぎゅっと抱き着いた。
甘くて深い香りがふわりと広がった。あの時、一緒に買った香水だ。
「あの、私は抱き枕ではないのですが」
「……落ち着く」
私のささやかな抵抗を無視して、ヴィクター様はさらに強く抱き締めてくる。
彼の胸元にすっぽりと頭がおさまり、脈打つ鼓動が聞こえる。
「お前はどこにも行かないよな」
まるで子どもが不安がるかのような声だった。
私は胸元に収まったまま、ヴィクター様を見上げた。
改めてみても、すごく整ったお顔だなと思う。
黒く艶のある髪が、灯りを受けて静かに揺れている。
すぐ近くにある瞳は、深い赤。宝石のように澄んでいるのに、今はどこか不安を滲ませていて、目が合うと胸がざわついた。
(……こんな表情、初めて見た)
抱き締める腕の力を感じながら、私は視線を逸らした。
「私はどこにも行きませんよ?」
「良かった」
ヴィクター様が、ほっとしたように息を吐いた。
「……お前じゃないと駄目なんだ。アリス」
その言葉に、私の胸が熱くなった。
(思えば、最初は随分な嫌われようだったんだけどなぁ)
「触るな」とか「失せろ」なんて暴言を吐かれていた日々がもやは懐かしく感じるほどだが、私はヴィクター様に随分と気に入られてしまったようで。
「もう少し、このままで」
ヴィクター様が、小さく呟いた。
私は、抵抗することを諦めて彼の腕の中で目を閉じた。
新作はじめました…!
久々の投稿なので、どきどきしています、、、
最後まで執筆済ですので、お星さま★★★★★やブクマで応援のほどよろしくお願いします*⸜♡⸝*




