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冥合奇譚 ~月龍の章~  作者: 月島 成生
第九章

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第十話 助勢


「――これはまた」


 月龍が訥々と語った「願い」を聞き終えた趙靖が、短く呟く。驚いたような、呆れたような一言だった。

 当然の反応だろう。おそらくはこのような申し出など、まったく想定していなかったはずだ。

 ありえないと批判されるかもしれない。せっかく好感に傾いた趙靖の機嫌を損ねる可能性すらあった。


「なかなかに厳しいことを頼まれてしまったな」


 口元に手を当て、ふむ、と低く唸る。幸いにして怒りを買わずにはすんだらしい。

 軽く伏せた目が、ゆっくりと左右に揺れている。


「それが貴官の気持ちか」


 質問ではなく、確認だった。すでに叩頭していたけれど、さらに身を低くする。

 床に這いつくばる格好になった月龍へと降ってきた言葉は、思いの外穏やかなものだった。


「正直な話をすれば、なにもそこまでする必要はないと思うが――まぁいい。提案自体は気に入った」

「それでは――!」

「尽力しよう。陛下にも、私から話を通しておく」


 力強い一言だった。趙靖は敵に回すには恐ろしく、味方につければこれ以上はない存在だ。

 立場、身分だけではない。その為人故に、周囲からも一目置かれている人物だ。

 その趙靖が後ろ盾として動いてくれる。


 無論、今までも亮の助勢はあった。だがそれは幼馴染の縁故――龍陽の寵などと疑われることも多かった。

 けれど趙靖の場合は違う。妹を溺愛していることは有名であるし、その蓮を奪っていこうとする男は敵視されるはずだ。

 なのにその男のために尽力すると約束してくれた。周知されれば、それだけでも「あの趙靖に認められた」と評価されるだろう。

 そのような打算を抜きにしても、この人の信頼を勝ち得たのならば喜ばしい限りだった。


 ――その中に、兄君に信用されれば蓮も信じてくれるだろう、との期待も含まれていることは、否定できないけれど。


 否、蓮に信じてもらうために提示した「願い」だ。今すぐではなくともいずれは必ず――そう願わずにはいられない。


「ありがとうございます」


 幾度目になるかわからぬほどの深い礼に、趙靖がくすりと笑う。


「まぁ気が変わったら、いつでも申し出てくれて構わない。なんとでもしてやろう」


 言葉を交わすほどに、大胆な性格が見え隠れする好人物だった。

 いつかこの人と蓮、そして亮と、皆で笑い合える日が来るだろうか。


 期待を抱くのは、甘いのかもしれない。

 それでもいつかはきっと、そう願わずにはいられなかった。

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