表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冥合奇譚 ~月龍の章~  作者: 月島 成生
第五章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/136

第四話 危惧


 亮と月龍は顔を見合わせる。

 衛兵は「公主の従者」が来たと言った。蓮も一緒にいるのであれば、わざわざ従者とは言わないであろう。

 だが従者のみが訪ねてこられるほど、亮の立場は易くない。ならばよほどのことがあったと考えるのが妥当だった。


「入れ」


 外へ向ける亮の声にも、緊張が見える。促され、入ってきた従者は月龍の顔を見るなり、「やはり」と呟いた。


「なにがやはり、だ?」

「実は――」


 話し始めた従者の眉間には、焦燥が滲んでいた。

 証を持たぬ月龍を名乗る男が現れたこと、疑いを持つも出てきた蓮に押し切られてしまったこと――


「何故通した!」


 簡潔に語られた内容は、許しがたいものだった。

 蓮はおそらく、蒼龍を引き入れてしまうに違いない。だからこその「証」だった。

 もし仮に、本当に月龍が証を忘れたのならば、蓮が邸を去るまでは帰ることすら諦める。己の失敗を認め、その日は蓮に会えずとも我慢する。

 それくらいの覚悟はしていたというのに。


「阿呆。こいつの立場で、それほど蓮に強く言えるはずがない。蓮のことだ、かなり強引だったのだろう。こうやって知らせに来ただけでも利口だ」


 従者をかばうのではなく、月龍をたしなめる意図だろう。


「それに、だ。考えてもみろ。もしこいつが無理に立ちはだかったとして、失敗を確信したあの男がどのような行動に出るかわからん。それこそ、最悪の結果になる可能性すらある」


 片眉を上げた呆れの表情に、それ以上はなにも言えなくなる。

 亮の言葉は、いつも正しい。感情は豊かなのに、それとは別に物事を客観視できる。

 だが、正論であるが故に腹立たしいことがあるのも事実だった。


「――帰る」


 今がまさに、そうだった。正しさ故に反論を封じられれば、他に道はない。

 そもそも、立ち止まっている時間はなかった。今蓮は、蒼龍と二人でいる。

 亮が言うように、企みを阻まれ、自棄になった蒼龍が蓮に危害を加える可能性も、皆無ではなかった。

 凌辱の限りを尽くされた、蓮の無残な姿が脳裏に浮かぶ。


「おう。なにかあれば知らせをよこせ」


 かけられた声に返事をする暇も惜しく、月龍は亮の元を後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ