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冥合奇譚 ~月龍の章~  作者: 月島 成生
第四章

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第四話 計略


「――はっ」


 足早に去った二人を、座り込んだ姿勢のまま見送った。

 後ろ姿が完全に視界から消えて――蒼龍はたまらず、口元を押さえる。


 蓮がいつも、月龍の帰りを邸で待つのは知っていた。予定の時刻になっても彼女が来なければ、月龍が探しに来ることも予測済みだった。


 予想外だったのは、月龍の反応だ。


 どうせ身分目当てで近付いたと思っていたのだが、表情を見る限り、本気で惚れこんでいるようにしか見えなかった。

 突然知らされた出自や蒼龍の存在には戸惑い、意味深長な憎悪にも動揺しただけだったのに、蓮の名を呼んだ瞬間に目の色が変わったのだから。


 まさか、というのが正直な感想だった。

 蓮の美貌は認めよう。だがそれは、数年後にはさぞ美しくなるだろうという推測であって、現在は童女にしか見えない。あの現状を、女として愛せる男がいるとは思ってもみなかった。


 面白い誤算だ。計画に華を添えてくれることになろう。


 口の端に溢れた血液を、指先で拭う。

 月龍の拳は、よけようと思えばよけられた。あえて頬に受けたのは、蓮の気を引くためだった。

 一、二発殴られることで、蓮が蒼龍には同情を、月龍には反感を抱くのであれば、安いものだ。


 思惑通りにことが進んでいるのは、幾度も振り向く蓮が浮かべた心配に現れていた。

 大丈夫、と言う代わりに頷いて見せる。蓮も、月龍に気づかれぬほど極小さく、首肯した。

 険悪なまま去った二人が、この後どのような状況に陥るのか。放っておいても、仲が破綻するかもしれない。


 あっさり別人と見抜かれたときには胆も冷えたが、むしろいい方に向かっている。

 自分が舐めた辛酸以上のものが月龍に降りかかるのだと思えば、胸の内から黒い笑いがこみ上げてくるのを抑えられなかった。

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