表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冥合奇譚 ~月龍の章~  作者: 月島 成生
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/136

第三話 辟易

 月龍と蓮が結ばれた。

 仮に同意の上でも、亮としては腹が立つ。まして、想い人が無理強いで体を奪われたと聞いて、平気なはずがなかった。それこそ月龍を殴ってやりたく思う。


 もっとも、月龍の頑丈な体を殴ったところで、痛手を受けるのは亮の拳の方だろう。また、暴走するきっかけが亮のせいだったこともある。

 怒気を抑えるために、一つ深呼吸をした。


「それで?」

「それで、とは」

「だから。今回はおれにも責任があるから、相談に乗ってやると言っている。蓮はお前に何と言った? こんなことするなんて酷い、とでも泣かれたか」


 だとすると望みは薄いな、諦めろ。

 皮肉の一つくらいは許されるはずだ。意地悪く言い放つ。

 月龍の眉間に刻まれた皺が、さらに深くなった。亮もつられて渋面になる。


「なんだ。本当にそう言われたのか」

「否――今日はまだ、会っていない」

「昨夜はお前の所に泊まったのだろうが。当然、送り届けてきたのだろう?」

「それが、その――逃げてきた」

「逃げた?」


 決まり悪げな呟きに、亮は目を吊り上げる。憤りに気づいたのか、月龍は慌てたように目の前で両手を振った。


「無論、車は手配した。邸へお連れするように命じてあるから、無事に帰られるはずだ」

「莫迦が、そのような問題ではない」


 もはや、溜め息も出ない。怒気も隠さず、まくし立てる。


「考えてもみろ。自分を抱いた男が、一言もなく姿を消している。一人でぽつんと寝かされていたなどと、心細い以上に惨めにもなろうが」


 はっと息を飲んだ月龍の顔が、見る見る蒼白に染まって行く。指摘されて初めて気がついたのか。

 亮は、がしがしと自らの頭をかきむしる。


「ああもう、これだから無骨者は嫌いだ!」

「どうしたらいい、亮」

「どうもこうもない! 今すぐ――は仕事だから無理か。ともかくすぐに、できるだけ早く蓮に会いに行け。夜のことも、置き去りにしたことも謝るのだな。蓮のことだ、率直に気持ちを伝えれば、許してくれる」

「率直になど――亮、お前とは違う。おれには無理だ」

「無理ならば仕方がない。何、大丈夫だ。できなければ蓮に嫌われて、別れることになるだけだ」


 亮が発した突き放す物言いに、月龍の顔が歪む。怒っているように見えるが、そうではない。これが月龍の、泣きそうな顔なのだ。

 つくづく情けない男だと、亮は辟易する。


「今ならばまだ間に合う。だからそのような顔をするな」


 慰めながら、情けないのは自分かと思い直す。なにが悲しくて、惚れた女を奪って行った男からの、恋愛相談に付き合ってやらなければならないのか。

 このような立ち位置を続けざるを得ない自らの身上に、亮はふと同情した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ