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冥合奇譚 ~月龍の章~  作者: 月島 成生
第十二章

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第十二話 大好き


「君の気持ちを訊いている」


 問う月龍に、蓮はただ、黙っていた。

 月龍の意図を掴みかねているのか。無言を通すことで、真意を尋ねているのかもしれない。

 身を離し、蓮の肩に両手をかけて反転させた。


「君はおれと別れたい。そうだろう?」

「――――」

「取り繕う必要はない。君が望むなら、別れてあげると言っている。――ただひとつだけ、頼みがある」

「頼み、ですか」


 見つめる月龍を、蓮も見つめ返す。互いに目を見ているはずなのに、視線がかみ合わない。

 感情も見えない、ただ口先だけでおうむ返しに、そう、と頷いて見せた。


「君の笑顔が見たい」


 そっと手を伸ばして、蓮の頬を撫でる。

 打ちつけるのではなく、こうやって触れるのがどれくらいぶりなのか思い出すことさえ難しい。

 元々硬かった蓮の顔が、更に強張った。


「以前のように、笑って大好きだと言ってくれたら――そうしたら、君のその顔と声を一生忘れない」


 その面影を抱いて、生きて行ける。

 否、死ぬかもしれない。蓮の傍に居られぬことに絶望し、更に薬に溺れ、命を落とす可能性はある。

 それでもいい。蓮を解放してあげられたこと、一度は愛された過去を思い出しながら、きっと満足な気分で死んでいける。


「悪い話ではないだろう? たった一度の嘘で、おれと別れられるのだから」


 片膝をついて、蓮を見上げる。

 蓮は、震える呼気を吐き出した。期待のためか不安のためかは、判然としなかった。


「心配しないでくれ。言質を取った、などとは言わない。好きなら別れる必要はないと戯言を言うつもりもない。決して信じたりはしない、自惚れたりもしない――きっと、君を諦める。だから」


 このまま一緒に居て、蓮が幸せになれるとは思えない。

 月龍とてわかっているのだ。蓮のためを思うのならば、別れてやるべきなのだと。

 それでも傍に居たくて、力で引き留めていた。けれどやはり、身を引くべきではないのか。


 蓮が、笑ってくれるようになるのであれば。


 以前は、蓮が「愛している」と言ってくれないのが不満だった。嬋玉姉さま大好き、亮さまも好き、それと同列でしかない、特別になれないことが寂しかった。

 だが今になって思う。まだ幼い蓮にとって、「愛」などという言葉はもっと遠くに感じられていたのではないか。より実感を込めて口にできるから、「大好き」と選んでいたのかもしれない。


 だから今、聞きたかった。

 たとえ心はこもっていなくても、あの幸せだった頃を思い出したかった。

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