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冥合奇譚 ~月龍の章~  作者: 月島 成生
第十二章

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第八話 暴露


 手首に巻きつけた包布を見つめて、月龍は嘆息する。

 酷いことをした。昨夜のことを思い返し、猛省する。無意味な虐待だったと、朝目覚めたときに初めて自覚したのだから度し難い。

 けれどあのときは、互いの血を飲み合うことで一つになれるのだと思いこんでいた。蓮の血液と共に彼女を体内に取り込む錯覚に陥っていた。

 蓮が月龍のものであるばかりではなく、その逆もまたそうなのだと思うことが幸せだった。その証となる儀式を、蓮も喜んでくれていると。


 ――今朝、蓮の手首の傷を治療するまでは。


 決して深い傷ではなかったけれど、流れ出した血液の影響を受けて顔は蒼白に染まっていた。

 これまでも暴力を振るっていたことは事実だ。そしてとうとう、昨夜は刃物まで持ち出した。

 このままではいずれ、本当に蓮を殺してしまうのではないかとぞっとする。


 おそらく今日も帰ったら、蓮を殴って犯すのだろう。自分の行動が怖くて帰路に就く足取りが重くなるとは、愚かなことだ。


(ショウ)様」


 重い足を引きずりながら、それでも蓮の元へと帰るために足を動かす月龍を引き留めたのは、涼やかな響きだった。

 覚えのある声に、振り向きもしない。


「蓮公主とうまくいっていらっしゃらないの? お顔色が優れませんけれど」


 皮肉にも、足を止めない。

 以前ならば、お前になど関係ない、とくらいは吐き捨てていたかもしれない。だが相手は紫玉――よからぬ女だ。問答だけでも穢れる気がして、目もやらない。


「仕方ありませんわね。私が、あのようなことを申し上げてしまったから」


 眼中になしと態度で語って見せるのに、紫玉の声は余裕の笑みを含んだままだった。

 口にされた、意味深長な言葉がさすがに気にかかる。


「――どういう意味だ」


 罠だと思わないでもなかったけれど、問いかけるのと同時に足は止まる。

 以前、蓮に注意喚起したことがあった。悪意を持って二人を引き裂こうとする人間がいる、と。

 その筆頭として紫玉の名を出していたので、蓮が彼女の言葉を鵜呑みにしたとも思えない。

 それでも、なにかしらの影響を与えた可能性はあった。


「公主はお元気でいらっしゃいますか? もう数か月、お姿をお見かけしておらず心配で」

「蓮になんと言ったのかと訊いている」

「なにも知らないお可哀想な公主に、事実を教えて差し上げただけです」

「事実?」

「ええ。私と邵様の、あの夕刻の出来事を」


 発せられた言葉に、愕然とした。

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