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冥合奇譚 ~月龍の章~  作者: 月島 成生
第十一章

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第六話 恐慌


 痛み、苦しみにしか反応しない蓮。

 そしてふと、気になった。


「――亮は、君をどう抱いた?」


 最中に尋ねたことがある。どうせ心を通わせられないのならば、せめて体だけでも「睦み合っている」錯覚に溺れたい。

 望まれていないのだとしても、快楽を分かち合えたらまだしもいいのではないか。

 問いかけに、蓮の身が竦む。


「申し訳ございません」


 謝罪と共に、月龍の腕から逃れようとする。久しぶりに見せた抵抗と怯えだった。


「違う。責めているのではない」


 安心させようと、できるだけ優しげな声を作った。亮ならばきっと、そうする。


「亮のときは感じたのだろう? おれも君に、悦んでもらいたいだけだ。だから教えてくれ。同じようにする」


 耳元に囁きかけても、蓮は身をよじるだけだ。逃げようともがく姿に、不意に思いつく。


「それとも、楊の方がよかったか?」


 楊闢は好色だ。亮以上に女に慣れている。年季の入っている分、房中術には長けているのかもしれない。

 もしそうだというなら、楊闢の真似でもいい。蓮が悦んでくれるなら、矜持もいらない。


 だが月龍が口にした楊闢の名に、蓮は恐慌状態に陥ってしまった。

 いや、ごめんなさい、やめて、助けて――半狂乱で泣き叫ぶ蓮を、結局は力で押さえつけて犯すだけになる。

 これならばまだ、無反応の方がいい。あの薬を飲めば身体的にも満たされるし、幻の中で幸せそうに抱きついてくる蓮を見ることができる。


 ――一層のこと、蓮に薬を飲ませてしまおうかとも考えた。

 あの威力には抵抗できまい。薬を飲ませたあとに抱けば、強制的に快感を味わわせることができる。


 思い留まったのは、薬の強さを身をもって知っているからだった。月龍の屈強な体をもってしても、使い方を誤れば死ぬと言われている。

 蓮の、か細く小さな体を考えれば、たとえ死は免れても異常をきたす可能性が高い気がした。


 蓮を壊すくらいならば、自分が壊れた方がまだいい。


 薬は幸せな夢をもたらしてくれる。柔らかな笑みを浮かべて、幸せそうに腕の中で眠る蓮――目を閉じて浸る幻に、現実に感じる蓮の温もりが重なる。


 なんの解決にもならない。無益なだけではなく、有害だ。

 わかってはいても、もう止められない。現実から逃れて浸る、蜜のように甘い悪夢だけが、月龍の細い神経を繋ぎ止めていた。


 朝まで眠れていればよかったのだけど、夢からも薬からも醒めてしまった。青白いだけではなくやつれた蓮の顔に、虚しさが掻き立てられる。このまま再び眠りに落ちるのは、不可能だった。


 蓮を起こさないようにそっと、体を起こす。枕元の卓に置いた小さな棚――その中の薬へ、再度手を伸ばした。

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